1-2 恩返し
レイに叩かれて気絶した犬たちは
少し様子を見ると勢いよく飛びあがった。
犬たちはもう子どもを追いかけることを諦めたのか
文字通り尻尾を巻いて逃げていく。
その後ろを見てレイはやっと一息をつくことが出来た。
「あの元気なら大した傷も残ってないでしょ」
内心では強く叩きすぎたかと焦っていたが、
そうでもなかったと分かりレイは子どもの方に向き直った。
「ほら、さっさとお母さんか
お父さんのところに帰りなさい」
これ以上の面倒事に巻き込まれないよう、
手で追い払う素振りをつけて言ってやったが、
子どもは構わずこっちにやって来た。
「ありがとう。一度ならず二度も助けてもらった。
この恩は忘れん」
「いや、良いって。大したことしてないし」
「そんなことはない。我にとってお主は命の恩人だ。
お礼をせねば我の面目に関わる」
「面目って子どもが何言ってんの?
別に要らないから。面目も潰れないから早く帰りな?」
「そうだ! 飯を奢ろう! 腹一杯食わせてやる。何が食べたい?」
「こいつ聞いてねえな。
この強引に食事に誘う手腕、新手のナンパかな?」
「飯はダメか。腹、空いてないとか?」
「……空いてないし」
と言った直後、腹から締められたような音が鳴り、
レイは顔を真っ赤にした。