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1-26 激昂

ノラの必死な嘆願に隊長は言葉を失った。

レイを掴む手を放し、ノラと目線を合わせた。

目線を外さないノラに優しく微笑み、

肩を叩くような動きで手をかざした。

『灯せ、ファイアボム』

「「!?」」

摂氏百度を超える火の玉が眼前で爆発し、

ノラを遠く吹き飛ばした。

「黙って聞いてりゃ長々と下らねえ話をしやがって。

お前のそれは若さゆえの無謀ってやつだ」

隊長は呆れながら、何度も魔法を発動する。

初撃と違い、詠唱をしない魔法は本来の半分以下の効果しか発揮されない。

それでもやけどを作るほどの威力はあり、

執拗にノラを焼き続けるが怒ってはなさそうだった。

「若いって良いなぁ。いつだってそれに守られてる。

責任能力が足りないから減刑するとか、伸びしろがあるから期待できるとか、

免罪符みてえにかざして好き勝手しやがる。

どいつもこいつも現実を見てないバカばっかりだ。

何が一番大事かって言ったら実力、実績、経歴、これだろ。

そんなことも分からねえ奴らがいるから

世の中クソ生意気なガキだらけなんだよな。

あ、ボケてそんなガキを甘やかす耄碌(もうろく)ジジイもいっぱいか。

本当に(ろく)なやつがいねえな。ゴミばっかりだ」

隊長の目にノラは映っていなかった。

遠い目で過去を思い出して世の中を憂う片手間に、

ノラは焼かれていた。

「……そんな泣き言、聞きたくもないわ」

「は?」

焼けこげる地面の上ですすをかぶるノラが立ち上がる。

「お前、何で立てる? いくら軽めだからって

あれだけ魔法を食らってたら普通死ぬぞ」

隊長もこれにはさすがに驚いて冷や汗をかいた。

着ていたぼろ布は焼かれ、下の肌にいくつもやけどの痕がある。

いや、あった。時間を早送りしているような、

傷が一瞬で回復し痕も残さず消えてしまった。

「落ちぶれても魔王。体力と体の丈夫さには多少の自信がある。

それより何だ今の言葉は」

ノラの言葉から敬語が消え、

二本の足で体を起こし隊長に競り合った。

「現実を見てないバカばかり? 世の中碌な奴がいない?

だからなんだ。そんな事を言っても誰が助けてくれるんだ?

録なやつがいないなら、

なおさら自分でどうにかするしかないだろう。

だというのに何でもかんでも他人のせいにして。

文句を言う前に自分で動かんか!」

「お前に俺の何が分かる!

俺は今まで頑張ってきたんだよ。

寝る間も惜しんで働いて、

偉い奴らに媚を売って、ずっっっと苦労してきたんだ。

なのに! 頭の悪い上の連中が自分の息子だからって理由で

俺がやっとたどり着けた地位を奪われた。

今まで積み上げてきたキャリアが全部無くなったんだよ。

これは俺のせいか!」

「少なくとも我らには何の関係もないわ!」

ノラは隊長を指を突き付け、反論する。

「お前のためにはっきり教えてやる。

そういうところがお前のダメなところだぞ。

どれほど苦労してきたかは知らんし、

お前がどれだけ素晴らしい人間なのかもまだ知らない。

だが、昨日今日のお前とお前が見下すレイと比べてみろ。

我のせいで追われているのに当たらず、

何とか逃げようとするレイと

過去の不当な扱いを引きずって

酒と他人への暴力でうさを晴らすしか出来ないお前、

能力以前にどちらを仲間に引き入れたいか一目瞭然だろ!

お前こそ、現実を見ろ!」

「ッッ!」

隊長の顔が醜く歪む。

何かを言おうと口を動かすが、

ただ全身から脂汗を流すだけだった。

「ぶっ殺してやる」

怒りに震える手を剣にかけ、大きく振りかぶる。

魔法ではダメだ。コレは自分の手でズタズタにしなければ

きっと自分の何かが壊れてしまう。

自分の中にいる鬼が隊長の心を駆り立てる。

「反論できなくて実力行使か。構わん。

そうやって目を反らさないと生きられないなら、

いくらでも受け止めてやる。

ただしこれだけは覚えておけ」

逃げられない剣を前にしてもノラは一歩も退かない。

「レイはずっと現実と戦ってきた。

社会に負けたって、なりたいものになれなくったって、

レイはそれでもちゃんと行きようと頑張ってきたんだ!

お前ごときがレイをばかにするなど100年早いわっ!」

ノラの叫びに隊長の何かが外れ、

狂気をまとった剣が振り下ろされた。

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