1-21 随伴
箱に嵌まって動けない兵士の両手足を縛って
さらに拘束を強くし、
助けを呼ばれないよう縄を噛ませる。
「終わった?」
外壁下の草かげからノラが
ひょっこり顔を出して聞いてきた。
兵士を詰めた箱ごとさっきまで
ノラが隠れていた草かげに動かし、
引きずった跡は砂をかけて隠した。
「色々あったが何はともあれ
屋敷から脱出出来たな。
それで、これからどうする?」
「どうするってどういう意味?」
これからのことを自分に聞いてくるノラに
嫌なものを感じる。
「もしかしてまだついてくる気?」
「うむ。お主のことが気に入った。
もう少し見ていたいのでついていくつもりだ」
「えぇ……」
自分のことで手一杯なのに問題しか起こしてこない子供の面倒まで
見させられそうでげんなりとする。
当の本人はそんな気持ちもわからず能天気に
「役に立つぞ?」と目をキラキラさせていた。
「……ここから谷を一つ越えた先の村までは連れてってあげる」
「え? もう少し見たい――」
「そこまでね!」
強い口調で話を打ち切り、
置いていくように歩き出す。
そのあとを口惜しそうな顔をしたノラがかけていく。
こうして、二人は町を捨て兵士から逃げることになったのだった。




