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1-19 脱出

ノラはレイの攻撃を受けた兵士に近づき、

容態を診た。

「大丈夫。気を失っているだけだ」

「そう。というかこれ何?」

戦闘中に渡されたそれは

やけに凝った意匠をした剣……

のように見えるが

()がなく金属の重みもなかった。

代わりに変に光ったりぬめぬめしたり

する箇所があった。

「それは聖剣エクスカリバー、

を模した小道具用の木剣だ。

旅の途中、捨てられてたそれを

我が補修してみた」

「このぬるぬるは?」

「我のヨダレだ」

「汚っ!」

思わず捨てた木剣はノラに拾われ、

口の中にしまわれていった。

「それはスキルなの? 見たことないけど」

「そうだ。我の数少ない自慢の一つだ」

剣をしまった手で領主の前でみせたように

燃えた松明を口から取り出した。

隠し扉の奥の道を照らし二人は出口を目指した。

「旅を続けるにも何かと道具が必要でな。

最初のうちは最低限の荷物だけ背負っていたが

体力の限界が早くてな。そこへ旅芸人が

口から鳩を出したのを見て思い付いたのがこれだ。

いやぁ盲点だった。持つのが重いなら腹の中に

入れてしまえば良いとは。目から鱗が落ちたわ」

「それ違う。あんたが見たのは手品。

そんなめちゃくちゃなこと生活の豆知識レベルで

出来てたまるか」

すごいと思いかけていたが

当の本人が的外れなことを言うものだから

レイはもやもやした物を頭に作ってしまう。

「いやいや、それほどでも。こんなもの戦闘では

あまり役に立てんしな。≪二連斬≫だったか?

ああいう実践的なスキルの方がずっと有能だ。

そんなものまで使えるとは、

やはりレイはスゴいな。

我の目に狂いはなかった」

目を輝かせてノラが本心から誉めてくれていることは

分かっていたがレイは顔を暗くする。

「……≪二連斬≫はね。剣術を一ヶ月間教われば

誰でも習得できる超初心者向けのスキルなのよ。

あんなのが出来たところで何の自慢にもならないわ」

「そうか。ふむ、なるほど。

出来ることがあっても驕らない。

レイは謙虚な人間なのだな」

いまいち理解してくれてないらしく

ノラはまた的はずれなことを言う。

「くだらないこと言ってないで

早く逃げましょ」

「おお、そうだな。っと、着いた」

かすかな水音が立ち、

逃走にちょうどいい小舟が一艘、岸に停まっていた。

「よし。すぐに舟を出そう。楷を探してくるので

縄を外して待っていてくれるか」

「その前にノラ。あれはどうするの?」

「あれ?」

ノラが持っていた松明を借りて

水路の奥を見せる。

屋敷から外の川に続く水路を

鉄格子が阻んでいる。

だが、どうしても通れないわけではない。

端に扉が設けてあり、舟ごと通れるようになっている。

カギさえかかっていなければ。

「ただの南京錠ではないか」

「あの扉が閉まってたら出られないんじゃない?」

「ははは、そんなものわーっ! しまったぁっ!」

狭い隠し通路にノラの声が響く。

「すまん、完全に失念していた。

どうしよう。手詰まりだ」

頭を抱えてしゃがむあたり、

本当に困っているらしいが、

レイにとってはそうでなかった。

「はじめから期待してなかったしね」

ため息交じりにつぶやいて、

ノラと目線を合わせようとしゃがんだ。

「ねえ。私に恩を感じてるなら

多少の無理は聞いてくれるのよね?」

「へ?」

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