1-18 ② VS兵士×1
剣を避けて後ろに飛び退いたレイの顔に
うっすら赤い切り傷がついた。
「レイ!」
「下がって! 大したことないから」
傷を指で上からなぞり、
改めて状況の厳しさを理解した。
「へへへ。こいつぁ、幸先がいいぜ。
隊長どのですら逃がした犯罪者を
俺が捕まえれば出世は間違いねえ。
もしかして俺の成り上がり物語始まっちゃう?」
≪戦闘開始≫
目の前で妄想にふける兵士を観察して
分かったことがある。
(こいつ……弱い)
握り方も構え方も甘く、
剣を握った素人としか思えない。
もし素手同士なら一方的に倒す自信がある。
ただ、武器の有無が二人の優劣を逆転し、
差を大きく引き放す。
(これじゃ迂闊に近づけない)
攻撃範囲と威力の差。
熟練者なら分からないが、
特別強くはないレイにこの差を
越えることは出来なかった。
相手もそれを分かって、
いちいち格好をつけながら剣を振り回してくる。
「勝ち目はないぞ、降伏しろコソ泥め。
この俺が成敗してやる!」
無駄の多い動きで避け続けられているが
実際に打つ手はなく、時間の問題だった。
(逃げたいけど、そうしたらノラがやられる。
いやまぁ、元凶なんだからどうなってもいいんだけど。
大ケガでもしたらさすがに寝覚めが悪いし)
結局、付かず離れずの間合いで
剣をかわすしかない。
「剣さえあれば……」
とうとう壁際まで追い詰められぼやく。
「ふふん、負け惜しみは止めろ。
降伏する気が無いなら望み通り成敗してやる!」
剣を高く振りかぶる兵士は
捕まえることなど忘れて絶命の一撃をかける。
「ーーーーっ!」
ノラが何か言ったが
聞き取れなかった。
防ぎようのない死を覚悟し、
目を閉じた。
体に重い衝撃が走る。
雑魚だが男の強い力がレイを押しつぶす。
ただ、それだけだった。
斬られた痛みがない。
おそるおそる目を開けると
両手に持った何かで兵士の攻撃を防いでいた。
「何だと!?」
止めの一撃を防がれて、兵士は戸惑う。
レイ自身も戸惑った。先程までなかったはずの
物が今、手元にある。
鈍い光沢を放つ剣、らしきものが。
理由は分からないが確信した。
「さて。さんざんやってくれたわね。
色々溜まったうさ諸ともあんたにぶつけてやる」
「ひいっ」
無力と思っていた相手が急に強気になって
兵士は腰を抜かす。
レイは力のない剣を弾きあげ、構えを取る。
「≪スキル 二連斬!≫」
渾身の力で二度みまわれる剣が
兵士を叩きつけ壁まで吹き飛ばす。
「かはっ」
強く背中を打った兵士は
肺の中の空気を全て吐き出した。
「俺の英雄伝が」
事切れた兵士が首を落とし、
勝負は一瞬のウチに付いたのだった。
≪戦闘終了≫
報酬 1050G 聖剣エクスカリバー(小道具)
ストレス・鬱憤の解消




