1-15 教訓
「我は人間のことをあまりにも知らなさすぎたと
この姿になってから気づいた。
故に元の姿に戻る方法を探しながら、
常識とか心意気とか人間のあれこれを学んでいるのだよ。
おかげでほら、今も無事平穏に生き延びられている」
「ほぉん」
現在の状況を忘れるノラに
気のない返事で返してしまう。
「そんな我が自分なりに解釈し
一番納得できた人間どもの言葉が
『目には目を。歯には歯を』だ。
つまり、受けたものと同等の物を返上しろという
自己犠牲と責任の強さを教示する言葉なのだな。
うむ、素晴らしい」
「なんか間違えてない!?」
「という訳でさしあたりお主への恩を返しきれていないので、
誤解を解くことから始めよう」
「もう。放っておいて欲しいんだけど」
そこはかとない嫌な予感を感じさせる意気込みだった。
「捕らえてすぐ仕置きをせず牢に置いたということは
何かしら思惑があるということ。
ならば少なくとも話す場を設けてくるはず。
そこで領主殿のご機嫌を取り、罪を軽くしてもらおう」
「……不安だ」
無意識に頭が痛くなりそうな気持ちを
口に出していた。
「心配するな。力は失えど、五十年生きたと言ったであろう?
これでも処世術を磨いてきたつもりだ。
だてに長生きしたわけではないところを見せてやろう」
「この無礼者をぶち殺ひぇ」
「あれ?」
面会開始から数分で交渉は失敗し、
死刑を宣告された。
「あちゃぁ」
予想出来ていた展開にため息しか出てこなかった。




