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1-13 推測

被害に遭った領主の屋敷は

この町を東西に縦断する川に面して建っている。

「その川っていうのが今朝、あんたが流された川のことね。

噂だとその川を使ってよく秘密の取引をしているらしいし、

盗難騒ぎがあって警戒が強くなった屋敷でも、

それを使えば逃げられる、かもしれないと思ったわけ」

「なるほど」

「決定的だったのは、やっぱりあれね。定食屋でだしたアレ」

「何かおかしかったか?」

「おかしいってあんた」

体を震わせて耐えてきた堪忍袋の緒も切れ、牢屋中に響くほど怒鳴ってしまう。

「食事の代金に宝石を置いてく奴がどこにいる!」

「えぇっ!? ダメなのか?」

兵士たちに名乗り出る前に代金として置いて行ったものは

大粒の赤い宝石に小さな宝石を散らせたペンダントだった。

素人目に見ても誕生日に親から買ってもらった安物のプレゼントではなく、

上流貴族にのみつけることを許された超高級品だと分かる逸品だった。

「あんなのあんたが出したら絶対盗んだものだって分かるでしょ!

しかも、なんで盗難騒ぎに遭ったって話をしたところに出すかなぁ!」

子どもは度肝を抜かれたように口を開け、レイを見つめていた。

「名前も書いてなかったのに、それだけであれが我のものではなかったと分かったのか。

お主、さては天才だな?」

「バカにしてる? ねぇ、バカにしてる?

常識的に考えてあんたみたいなのが持ってたらおかしいでしょ!」

とんちんかんなことを言われただけでも腹が立つのに

子どもは心底驚いて舌を巻いていて余計にイライラが重なった。

「常識と言われてもそれは『人間の』常識であろう?

むしろそれが一番、我には理解できんのだが」

「まるで自分が人間じゃないって言ってるみたいね?」

「そうだが?」

「は?」

嫌味で言った言葉を肯定されて、つい間の抜けた声が出る。

子どもはほつれたフードを取り、赤黒い頭を晒す。

「我の名はノラ。50年ほど前まで魔王だったものだ」

もちもちした頭に乗った一対のヤギの角が

レイの目をくぎ付けにしたのだった。

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