1-12 獄中
何の音も聞こえないほど外界から隔離された空間を
小さな松明の光だけが照らしていた。
「さて、どうしたものか」
鉄格子で仕切られた檻の中、子どもは腕を組んで座っていた。
「それは独り言? それとも私に話しかけてるの?」
「独り言だ。困ったことが起きると、つい言ってしまうのだ」
「へーそう」
「とりあえず状況を整理しよう。」
子どもは店から連れ出された後のことを思い返していく。
「まず、ここは領主の屋敷の地下牢だ。
昼飯を食って一時間も経っておらんから今はまだ昼過ぎのはず。
店で会った三人の男たちは我らをここに放り込むとどこかへ行った。
今、ここに見張りはいない。だが、当然牢を破るほどの技量はないし
外の者に出してもらわねば出られん。ということであっているな?」
「それも独り言? それとも私に話しかけてるの?」
「話しかけている。せっかくなので確認してもらいたくてな」
子どもは右に座る隣人、レイに話しかけた。
「というか、なぜここにいる?」
「あんたのせいでしょ!」
「我が? なぜ?」
子どもは身に覚えがなくきょとんとした目でレイを見ていた。
「あんたが自白したせいで、一緒に食べてた私も
仲間って思われたからじゃない」
「なに? 一緒に飯を食うだけで仲間になるのか。
ふふ、なんだか得した気分だ」
「あのさ、人に迷惑かけてるの分かってる?
恩を返したいって言ったのよね。仇で返したいんだっけ?」
何故か得意げにほほ笑む子どもにレイは頭の血管がはぶち切れそうになる。
「あれ? 今、さらっと『自白した』と言ったが
我が盗んだと信じてくれておるのか?」
「うぅん。まぁ、ね。知ってる情報を私なりに整理して、
適当に物語を作ってみたら、そういう事もありえなくないかなって」
レイは歯切れ悪くそう答えた。




