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1-10 犯罪

「お前ら。そろそろ止めとけ」

若い男たちと入った中年の男の一声で

暴れまわる二人はすぐにおとなしくなった。

「ちょっとやり過ぎちった。悪ぃ悪ぃ。

部下に代わってこの俺が謝ってやる。

悪かったな。あ~そうだ。

飯食ったよ、いくら?」

「いえ、お代は結構ーー」

「あっそう! 悪いねぇ、

なんか奢って貰っちゃって。

奢りついでに酒二本貰ってくけど良いよな。

おい、取ってこい」

「「うぃーっす」」

店長の言葉も聞かず男たちは

自分の家のように物色していく。

だが、そんな彼らに文句を言うこともできず

暗い顔で店長は俯いていた。

そんな店長に近づき中年の男が

嫌みな笑顔で顔を覗きこむ。

「いやまぁ、それにしても

よく店なんか出せるよなぁ」

「すっすいません! これからは

もっと勉強させてもらいますんで!」

「あれ? もしかして『人様によくもこんな食わせられるな』

って言われたと思ってる? ははは。違うぜ。

そんなの人の自由じゃねえか」

男は笑いながら店長を叩く。

その度に店長の肩が小さく震える。

「俺が言いてえのはよくこんな場末の、

おっと立派じゃない店で生計が

立てられるよなぁ、ってこと」

「それはお客さんに贔屓にしてもらってーー」

「いやいやいやいや。そんなわけあるかよ。

俺には分かってるぜ。お前、『副業』してんだろ?」

「『副業』?」

よく分からない話に店長は顔をあげた。

怯えきった顔を見て満足した男は立ちあがり、

若い男が持ってきた酒瓶を開け、飲みながら語る。

「昨晩。我らが領主様の屋敷に事件が起きた!

部屋いっぱいにあった金銀財宝が消えてしまった!」

「財宝?」

レイは芝居がかった男にひっかかりを感じた。

「あれは幻かそれともただの氷細工で霞と消えたか!

いいや。日中は確かにあった。冷たくもないし、

どれ一つとっても素晴らしい逸品だ。

宝を磨きに行った兵士はそう証言する!

ならなぜ消えた? そうだ。誰かに盗まれたんだ!」

子芝居が終わったらしい。

男は胸を大きく開いたまま立ち止まる。

「お前だろ?」

ギョロリと独立して動いた目が店長を捉えた。

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