華ノ名「桜」
世は末に。
何処へ何処へ。
参る桜は意を狩る狐。
舞えど舞えど暁起きも見えませぬ。
「何処だ!早く見つけろ!」
「ですが警部!奴がもう・・・あんなところまで!」
京師に集う有象無象の群衆は千歳の時をも男気の泣く散り急ぐ命。
鈴の音響かせその乙女。
「常闇を知らんとするものよ、御霊を狩らせて頂きたく存じます」
絢爛の華は揺蕩い遍く。紅き桜は玉響の時を経て咲き誇る。
「春夏秋冬・・・名は有桜。この世に遣わされた申し子の一人だ」
聞く耳を持たぬ群衆は、乙女に容赦なく襲いかかる。
「捕まえろ!!」
「逃すな!!」
乙女は溜息を一つ。腰に括り付けた一振の細直刃を群衆に向け構える。
「命は惜しくも投げ出すものではない。過ぎ去りし時を悔やむで無いぞ」