幻想組曲
前回のあらすじ。
オーナーから連絡が入り、迷魂に関して聞いたが、オーナーは「迷魂は大事な・・・」大事な何なのかそこで通話が切れてしまった。
三人で話し合ったところ、「迷魂は大事な・・・」何なのか?色々な憶測が思い浮かんだが、何が大事な事なのかはっきり分からず、数日ぐらいもやもやとした日々を送った。
その一週間後オーナーの言った事は気にとめずに、迷魂である鈴はどんどんと上達を重ねて、そして私たちの演奏に付いてこれるぐらいまでに至った。
その演奏を録画してネットに載せようかと、考えたが、迷魂をネットに載せても大丈夫かと私たち三人の中で賛否が別れて、あれだけ一生懸命に練習したんだから載せようと言うことで決まった。
そして私はまた思いに耽り、私達三人がバンドを組んだ時の事を思い出していた。
楽器店に行き、私は琴美にベースを進めたが、何となく琴美はドラムが良いと言い出したので、安い中古のドラムを買ったのだった。
「奈々瀬もバンド組もうよ。絶対に楽しいから」
「しつこいわねパスって言っているじゃん」
素っ気ない感じで突っぱねる。
「奈々瀬ちゃんも組もうよ」
琴美が奈々瀬に抱きつきながら誘う。
「しつこいって言っているでしょ。私はやらない。あんた達二人でやっていなさいよ」
その一週間後に、スタジオを借りて、ギターの私とドラムの琴美でブルー○ーツのトレイント○インを二人で合わせた。
私達が演奏している姿を奈々瀬は正面でパイプイスに座って足を組んで見物していた。
「どう奈々瀬」
「何で私がこんなところまでつきあわされなきゃならないのよ」
ちょっぴりご立腹の奈々瀬。
「まあ良いじゃない奈々瀬ちゃん」
と琴美。
「まあ、感想は素人にしては上出来だと思うけど、やっぱりベースが必要ね」
「それは奈々瀬の役目何じゃない」
「何で勝手に決めつけるよ。私はやるとは言っていないじゃない」
「奈々瀬、この腐った世の中に音楽で代弁してやろうよ。そして私たちを蔑ろにしてきた連中に一泡吹かせてやろうよ」
「あんた達二人でやりなさいよ」
奈々瀬は立ち上がりそのまま帰ってしまった。
つれない奴だな。
その一週間後の週末にまたスタジオを借りて私と琴美で練習することになった。
とりあえず奈々瀬も呼んだけど、あいつ来るかな?と琴美で話し合っていた。
スタジオに入ると、美しいピアノの旋律が奏でられていて、最初私たちが予約したのに先約でもあるのかと思って、見てみると、奈々瀬がスタジオに置いてあるキーボードを可憐な手つきで奏でていたのだった。
私と琴美はその旋律と姿に心奪われ呆然と見取れてしまったのだった。
まるでスタジオが奈々瀬のキーボードの旋律によって、広大な海のど真ん中にたち、その周りにイルカが空を飛ぶように海面から跳ね、空には虹が架かり、まるでラッセンの絵の中に入ってしまったような感覚に私はとらわれた。
奈々瀬は自分の演奏に酔いしれて、完全に自分の世界を作り上げ、その中に入り込んでいる感じだ。
現に私と琴美も巻き込まれている。
奈々瀬が奏でるキーボードの旋律をいつまでも聞いて酔いしれていたいと思っていたら、奈々瀬が私と琴美が近くで見ていることに気が付いて、音は止まり、幻想的な雰囲気が一変して、何の変哲もない楽器の置かれた部屋に戻った感じだった。
「何よ。いるなら声をかけなさいよ」
奈々瀬は顔が真っ赤だ。
私と琴美は思わず、そんな奈々瀬に拍手を送った。
「奈々瀬、すばらしい演奏だったよ。ぜひ、うちらのバンドに参加してよ」
奈々瀬は何を思ったのか目を閉じて、開いて、そしてにっこりと笑って、
「二人とも準備しなさいよ。キーボードはベースの代わりの音源を出し、なおかつ私の腕でさらなる曲を奏でられるわ」
悔しいがあれだけの演奏を見せられて、そこは自負しても良いと素直に思った。
それで私たちは三人になり、奈々瀬が加わったことによって胸がワクワクして、しばらく眠れない日が続いたんだっけ。
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休日、私と琴美は奈々瀬の家に集まり、奈々瀬がパソコンを操作する傍ら私と琴美は見ていた。
「良い感じに仕上がっているじゃん」
「カノンもかわいく撮れている」
「まあ、上出来だね」
とりあえずネットにアップして、一段落がついて、お昼を回ったところだった。
「二人とも、せっかくだからお昼うちで食べて行きなさいよ」
「お言葉に甘える事にするよ」
「琴美ちゃんのうちでごちそうになるなんて初めてだね」
「まあ、大したものは出せないけど、二人ともパスタで良い?」
まあ、遠慮する理由はなく、私と琴美は奈々瀬の家でごちそうになる事になった。
奈々瀬のうちは両親は共働きで、今はいない。
そう言えば私と琴美は奈々瀬とは長いつきあいだが、両親の顔を一度も見たことがないし、あまり話も聞いた事もなかった。
まあ、それよりも奈々瀬の手料理が楽しみだった。
料理は良くすると聞いたが、お店以外でこうして奈々瀬のうちで奈々瀬の手料理を食べるのは初めてだ。
私と琴美は居間のテーブルに座って待っていた。
「奈々瀬ちゃんの手料理うち初めてだよ」
琴美も楽しみにしている。
まあ私も楽しみにしてはいるが、おいしかったらどうしよう何て思っていた。
もしおいしかったら万能な奈々瀬に嫉妬に狂いそうで、ちょっと怖くも感じていた。
「お待たせ」
奈々瀬がお盆に手料理を載せて持ってきた。
奈々瀬の言う通り、パスタであり、カルボナーラだ。
ヤバい良い香りがして、まじでおいしそう。
「さあ、召し上がって」
私は息を飲みフォークを手に取り、おもむろにカルボナーラパスタをすくい上げ、食した。
すごい濃厚で、私はこんなパスタ食べた事がない。
本当においしくて、いくらでも食べていたいくらいな感じだ。
私と琴美が食している姿を頬杖をつきながら見つめて、
「どう?」
と聞いてくる。
「すごくおいしい」
琴美のストレートな感想。
「悔しいけどおいしいよ」
「何が悔しいの?」
「いや別に、私にはこんな手料理作れなくて、いいな~と思って」
思わず本音が漏れてしまい、少しうろたえてしまった。
「ふーん」
お昼も食べ終わり、時間が余ってしまい、帰るには早すぎる感じがして、奈々瀬の部屋でマンガを読みながらくつろがせてもらった。
まあ、本人はゆっくりしていってねって言っていたし。
琴美の方を見てみると、アップした動画を繰り返し見て、楽しんでいる感じだ。
奈々瀬は机に座り、スマホのアプリで耳にイヤホンをつけて音楽を聴いている。
こうして三人でだらだら過ごすのも、たまには良いかもしれない。
一時間が過ぎて。十四時になり、琴美も動画を見るのも飽きてきたのか?奈々瀬に断ってテレビをつけた。
私もマンガにも飽きてきて、テレビに注目して、琴美がチャンネルを回していたが、ろくな番組はやっていなかったので、奈々瀬の方を見ると、飽きずに音楽を聴いていたので、
「奈々瀬、何を聴いているの?」
「クラシックよ」
「私はあまりクラシックは聴かないから、詳しくは分からないかな?」
「あんたも聴いてみたら」
奈々瀬は私にイヤホンの片方を差し出して、私は受け取り、耳に付けて聴いてみた。
「これ、聴いたことある」
「モーツァルトのトルコ行進曲よ」
「へー」
「覚えておきなさいよ」
何て言われてしゃくにさわったが、まあともかく奈々瀬の隣に座って、音楽鑑賞を奈々瀬とした。
トルコ行進曲のほかにも色々と聴いていて、誰が誰だか分からないが聴いたことのある曲ばかりだった。
『これ誰の曲?』と奈々瀬に聞きたいところだが、また無能呼ばわりされてしゃくにさわるから黙ってクラシックを聴いていた。
このクラシックを聴いていると奈々瀬のキーボードの音源と似ている感じがする。
きっと子供の頃からピアノでクラシック音楽を弾いていて、それに影響されて、演奏する時にクラシックの幻想的な音源を奏でられていたのだろう。
このクラシックほとんど聴いた事のある曲ばかりだが、本当に幻想的な世界に引きずり込まれるように聴いていると、空を飛んでいるような高揚感にさらされる。
幻想組曲
作詞 盟 作曲 奈々瀬 編曲 カラフル
クラシックを聴いて歌詞が思いつき、私と奈々瀬と琴美で一曲出来た。
今日は奈々瀬の部屋であいにく私と琴美は楽器がないので、奈々瀬のピアノの音源をベースにイメトレライブでお送りしたいと思います。
奈々瀬の幻想的なピアノの音源を元に私はエアギターで歌い、琴美もエアドラム。
とにかく曲名である幻想組曲と言う事でイメージして、ここは奈々瀬の部屋だが、私たちは夢よりもシュールな場所を想像して最大限のインスピレーションを活かして、私たちは演奏する。
まるで私達は森に囲まれた湖の畔で、歌い、奏で、踊っているようで、心が高揚してしまう気持ちに駆られる。
素敵な歌を作るのに、心を躍らせなければ、とびきりの歌は生み出すことは出来ないと私達は思っている。
今回の歌の元は私の鼻歌をベースに奈々瀬が作曲して私が歌詞を加えた。ただそれだけでこれだけの心躍るような歌が生まれる。
そう、私たちの未来もこうして素敵にすることだって可能なのだ。
だから私には奈々瀬がいる。
だから私には琴美がいる。
そして迷魂のみんな。
・・・・・・・・・。
「・・・盟、帰ってこい」
奈々瀬の声に気が付いてもう歌い終わっていた。
「イメトレにあれだけテンションあげる何てね」
「いや、音楽は最高だよ。まるで奈々瀬の部屋が、森に囲まれた湖畔をイメージして歌ちゃったよ」
「頭おかしいんじゃないの?」
鼻で笑う奈々瀬。
「盟ちゃん。すごい想像力だね。うちもそこまで想像は出来ないよ」
と同じく琴美も笑う。
「二人とも私の事をバカにしているの?」
すると奈々瀬が人を小馬鹿にするような目つきで私を見つめて、
「バカにしているよ」
きっぱりと言って、さすがの私も堪忍袋の緒は切れて、
「締めてやる」
と飛びかかったところ、琴美に羽交い締めされて、
「ちょっと盟ちゃん。・・・奈々瀬ちゃんも言い過ぎだよ」
「フフっ」と奈々瀬は穏やかに笑って、「でもバカじゃないきゃ、人の心を魅了するパフォーマンスは出来ないかもね」
言われてみれば一理あると思って怒りが治まり、
「・・・奈々瀬」
「とにかく、即興で作った幻想組曲をまとめちゃいましょう」
今日は奈々瀬の家で私達のカラフルの演奏シーンをネットにアップして、お昼をごちそうになり、その後だらだらして、奈々瀬が聴いていたクラシックを聴いて、一曲歌を作り、そして奈々瀬の言う通り『バカじゃなきゃ音楽はやってられない』と勉強になった。
笑ったり怒ったりと、感情の起伏が激しい毎日だけど、それが楽しいのかもしれない。
家族が夕食を嗜む中、私は一人で部屋にこもりながら、カロリーメイトをかじりながら、今日アップした動画を見ていた。
我ながら良い出来だと思う。
奈々瀬の格好をもっと奇抜にしたいとか、私ものりに乗ってもっと音にシンクロさせるべきとか、良いところ直したいところと、一人でチェックしていた。
こうして一人になると、迷魂との別れというネガティブな事を考えがちだった。
いつかはその日が来るのだろう。
私たち三人と迷魂の三人は、今まさに人生の旅を共にしている仲なのだろう。
でもいずれその一つの旅が終わり私たちは別れてしまう。
それは必然的にやってくる事は神様じゃない私でも分かる。
旅が終わった後、私達、いや私はどうなるのだろう。
そう思うと不安になってくる。
私は両頬を軽く叩いて、とにかく先のことを杞憂していないで今を思う存分楽しもうと自分に言い聞かせ、電気を消して布団に入り眠りについた。
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朝起きて、私は目覚めて、起き上がり、パソコンがスクリーンセーバーがかかっていて、電源を消し忘れてしまった。
消すついでに、私たちのアップした動画を再生件数を確認するために、サーバーを確認すると、私は驚いて叫びたい気持ちを押し殺して、両手に手を当てて押さえた。
一晩過ぎただけなのに、再生回数がとんでもない事になっている。