また逢えるその日まで!
私が目覚めると、私は奈々瀬のベットの上で眠り、琴美は床で眠っている。私達が眠っている間に、奈々瀬が毛布を掛けてくれたみたいで何か胸がほっこりとした。
奈々瀬が部屋に居ない事に、もしかしたら下で何かしているのだろうか?
それよりも、私はカーテンを開けて、勝手に窓を開け、お日様と風を五感で感じて今日も一日張り切っていこうって意気込む。
時計を見ると、午前六時を回ったところだ。
とにかく朝起きて、お日様と心地よい風に五感をさらした私は夢に立ち向かう熱がわき起こっている。
その熱を冷まさないうちに私は持ってきたギターをアンプにはつなげないが、練習する。
もっとギターがうまくなって夢へ本気で立ち向かいたい。
「・・・んん?」
ギターの音がちょっと響いたか?琴美が目覚める。
「ゴメンうるさかったかな?」
「いや別に」
寝ぼけ眼をこすって、立ち上がり、琴美も同じように太陽の光と風を五感で感じて、窓から身を乗り出している。
「こうしてお日様と風に当たっていると、何か一日やるぞーって気になるんだよね」
琴美も同じか。
私と琴美はいつものイメトレをする。
イメトレはいつも三人でやっているが、あいにく奈々瀬はこの部屋にいないので、私と琴美の二人だけで行う。
私のエレキギターの音源をベースに琴美はバッチを手にして、目の前にドラムがある事をイメージして叩く素振りをする。
こうして二人で練習して、朝から私は熱い感じがする。
「こらー」
と大声を上げたのが奈々瀬で私と琴美はびっくりして、イメトレを中断した。
「どうしたんだよ奈々瀬。今良いところなのに」
「さっきから呼んだよ。それに私があんた達の食事を用意している間に私を仲間外れにしてイメトレなんて」
ちょっとご立腹のようだ。
「奈々瀬ちゃんも一緒にやろうよ」
琴美が誘う。
「その前に朝ご飯作っちゃったから、それを始末してくれないかな。そうしないと片づかないから」
と言う事で私達は一階の台所に行き、奈々瀬の手料理をご馳走になる。
メニューはサラダパスタにオムレツにコンソメスープであり、すごく健康的なメニューですごくおいしそうで、私と琴美は奈々瀬にお礼を言って食べた。
食してみてそれはもう絶品で、私も料理をするが、これは女子力では圧倒的に奈々瀬に負けていると思ってちょっと悔しかったりする。
まあいつか機会があれば、奈々瀬にもうちに招待して、私の手料理を振る舞って上げたいとも思った。
でも奈々瀬には勉強でも女子力でも圧倒的に差をつけられていて、勝ち目がない事にコンプレックスを抱いてしまう。
朝食が終わって、奈々瀬も私と琴美が朝やっていたイメトレに参加させて、私達カラフルのバンドのスキルがまたアップしたようだ。
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お店に出勤して、昨日は迷魂の三人に送るサプライズを考えたが、今日三人で話し合って出た結論は、別にそんなサプライズなんて難しそうな事は考えないで、気楽にいつも通り、迷魂と私たちのバンドであるカラフルとしてこの店で活動していれば良いんじゃないかって。
だからいつものようにサタ子おばあちゃんが来て、カノンちゃんが来て、そして鈴が来て、それでみんなと残りの四日間を楽しめれば良いんじゃないかって。
でもやっぱりサプライズはしたいと思って、このお店内でしかカラフルは活動できないが、今をこの時この時を必死に取り組んでいければ良いんじゃないかと私は思った。
迷魂の三人に出会えた偶然に私達三人は本気で感謝している。
その思いを今をその時その時を必死に生きて行く事が迷魂として現れた三人に対するサプライズ何じゃないかと思った。
さっきも言ったけれども、別にサプライズなんて難しい事は考えないで、私たちは私たちなりに生きていけば良いんだ。
でもこの世の中に生まれてきた以上、出会いの数だけ別れがあるように、迷魂の三人とは約束通り四日後にお別れを余儀なくされてしまう。
それは本当に寂しいけれども、悲しい事じゃない。いや悲しいことかもしれないけれども、残酷な事じゃない。
これから私たちは迷魂の三人と別れて、どんな未来を切り開いていくのか?それはもちろん私達自身で切り開いて行くものだと分かっている。
でも私の心の中にいつまでも迷魂の三人とよろしくやっていきたいと思っている気持ちがあるが、それは許されない事だと私は思う。
常識的に考えて死んだ人間と出会うことは決してないし、許されない事だと私は思っている。
当時幼かった私にサタ子おばあちゃんの訃報はとても残酷な真実を突きつけられたかのように、慟哭した。
大切な人が亡くなる悲しみを初めて知ったのだ。
それにカノンちゃんの死を琴美が知った時も、私が大切なサタ子おばあちゃんを亡くした時のように、慟哭して絶望の闇に苛まれた。
私もカノンちゃんの死はとても悲しいことだし、出来れば、蘇って来てくださいと叶わぬ願いを毎日した。
それは琴美も同じ事をしていたかもしれない。いやしていた。
私以上に。私以上にそれを懇願していたに違いない。
そして私達の仲間だった鈴。
彼女が太田先生の暴力でパニック状態に陥り、窓から転落して、その尊い命を散らした。
あの時ほんの少しの勇気があれば、鈴の自殺をくい止める事が出来たんじゃないかと、あの後何度も思った。
そして数年経過した今、私たちは出会い、思いも寄らぬ残酷な真実を知り、まさかあれが奈々瀬の陰謀だとは思わなかった。
でも奈々瀬はだらしがない鈴に少し懲らしめる程度の気持ちで太田先生をけしかけてやったのだが、まさか命を散らすとは思わなかったのだ。
それに鈴が私と親しくしていたのも原因だったとも言っていた。
様々な奈々瀬の動機が鈴を死に至らしめた。
きっと奈々瀬もその思いを一人で抱えて苦しんでいたのだろう。
こんな事、親友である私や琴美にも相談する事も出来ずに一人で苦しんでいたのだ。
そしてこうして再び鈴と出会い、私や琴美、そして奈々瀬は様々な後ろめたい気持ちに苛んだ。
特に奈々瀬は鈴に対して後ろめたい気持ちに苛まれるのに耐えられなくなって、私達を巻き込んでしまった。
さらにその事でも悩み、苦しみ、鈴が奈々瀬に出した真っ黒な真実は奈々瀬を憎む気持ちであり、奈々瀬の心は壊れそうな程の衝撃を与えられた。
だがその真っ黒に染められた憎しみを取り除いてみると、サタ子おばあちゃんの言った通り、鈴はただ奈々瀬をいつまでもこれからも大好きでいたいさわやかな真実に染まっていた。
人は何のために生きて、何のために死ぬのだろう。
生まれて来ることも必然であるように、死ぬこともまた必然。
人は意味もなく生まれ、そして意味もなく消えていくのか?
そのような考えも合るかもしれないが、少なくとも私はそうは思わない。
生きる事に必ず意味がある。
これからも私は生きていくだろう。
その中で夢を叶えるためには悲しみや争いを避けては通れないと思う。
特に私のような大きな夢を持つ者にとっては。
迷魂と別れて私達は新たなるスタートを切らなくてはいけない。
迷魂との別れは私には不安に感じている。
でもその別れは必然であり、それを乗り越えなくては、新たなるスタートは踏み出せない。
誰もが生きていれば、必ず終わりが来て、始まりが必ずやってくる。
だから私は約束する。強く生きる事を諦めないと。
その約束を果たすためには奈々瀬や琴美、それにこれから先の未来で私達を待っている人の力も必ず必要になってくる。
この先何が起こるのか?不安な気持ちもあるが、逆にワクワクするような高揚した気持ちもある。
それらのすべての気持ちと、仲間の思いを抱きしめて私は行かなくてはいけない。
でも本当にこの先は何も見えないが、私は信じ続ける。
仮に未来に裏切られ、夢も希望も仲間も亡くしてしまったらと思うと強く生きる力を維持する約束が果たす自信がなくなってしまうかもしれない。
でも私は生きる。
仮にすべて闇に包まれても、一人でも探しに行く。
人間は一人では生きられない。一人で生きようとする思いはまさに悪魔のささやきと言っても過言じゃないだろう。
体も心も満身創痍であって、一人になり、悪魔に心捕らわれそうになっても、私は探しに行く。
一人じゃない世界へ。
誰かのために生きる強さを私は持ってみせる。
誰かの為って、それは本当に誰でもいい。
耳の不自由な人の耳になったり、目の不自由な人の目になって上げたり足の不自由な人、その他にも様々に生き方は存在する。
だから私は決して一人に何かならない。そうしなければ強く生きる約束を果たす事が出来ないからだ。
私は歌い続ける。
声がなくなっても、手話でもジェスチャーでも歌う。
手も足もなくなったら、ペンを口にくわえて、紙で書いて、思いを伝える。
口も塞がれたら、目で相手に伝え歌う。
それさえも出来なくなり、たとえ朽ち果てて、廃人同然な人間となっても、それでも祈り続ける。
それさえも出来なくなったら、おしまいかもしれないけれども、私が伝えてきた思いは誰かの心に宿り、生きる強さを感じて歩んでくれると信じている。
そしてサタ子おばあちゃんとカノンちゃんと鈴同様に迷魂になって死んでも私は永遠の幸せを歌い続ける。
それは私の為であり、その思いはきっと誰かの胸に届く事を信じている。
そして時は過ぎて迷魂の三人と別れて、私と琴美と奈々瀬は三人だけになり、一つの夢を共有して新たなスタートラインに立ち、素敵な未来を私たちで描き奏で続ける。
私達、カラフルは約束する。
強く生きる事を決して諦めないと。
だから、それまでサタ子おばあちゃんにカノンちゃん、そして鈴・・・・・・・また逢えるその日まで・・・・。




