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また逢えるその日まで  作者: 柴田盟
22/23

迷魂へのサプライズ

   


「鈴は奈々瀬ちゃんのせいにして過ごしていた。鈴は甘えていたんだ」


 鈴はしゃがみ込んで、涙を流して、涙を拭っている。


「鈴ちゃん。甘える事が悪い事じゃないよ。そうやって甘える相手がいることは幸せなことだよ。でも甘える相手に対して素直になる事が大切だとわたしゃ思うけれどね」


 ここで分かった。


 迷魂として鈴が現れたのは、ただ単純に鈴は奈々瀬の事が好きだと言う事を伝えたかったのだ。

 奈々瀬に対して恨んでいたと言っていたが、それは大好きな事の裏返しだったんだ。

 迷魂が伝えたい事は難しい事じゃない。

 私達が単にややこしくして難しくしていただけだったんだ。


 サタ子おばあちゃんが私に伝えたかった事、カノンちゃんが琴美に伝えたかった事、そして鈴が奈々瀬に伝えたかった事。

 それぞれ事情は合ったが、すべてひっくるめて言いたい事は一人じゃない事と、未来に立ち向かう強さ。

 簡単に言ってしまえば、愛と勇気だったんだね。

 迷魂はまさに正義の味方であり、この世界で言う、アン○ンマンみたいなヒーローだったんだね。


 うずくまって泣いている鈴に奈々瀬はそっと手を差し伸べて、


「鈴」


 すると鈴はすかさず奈々瀬に抱きついて、無邪気な子供のように泣いた。


 これで終わったんだな。


 迷魂が私達に伝えたい事を果たしたので、その役目は終わった。


 

 一番大切なあなたに伝えたい事。


 作詞  盟  作曲  奈々瀬  編曲  カラフル


「同じ時代に生まれて君と出会った奇跡に心から感謝している。


 大好きなあなたへ愛と勇気を・・・


 大嫌いなあなたへ愛と勇気を・・・


 一人で涙を流さないで。


 その時は大好きな私を呼んで・・・


 そして大嫌いな私の胸で泣いても良いよ・・・


 私は同じ時代に生まれて出会って、友に過ごしてきたあなたにしか涙は見せられない。


 君も同じ事を言って泣いて、そして笑ってくれたね。


 そして、いずれ別れる時が来ても、夢を描く合間に君のことを思いだすよ。


 同じ一つしかない大空の下で、君はどんな夢を描いているの?


 同じ一つしかない夜空の下で、君はどんな夢を見ているの?


 でも何となく分かる不思議。


 だって僕も同じ幸せな夢を描いている。


 大切なあなたとお互いに知り合った大切な事だから・・・」




 ******   ******   ******   *****

 *********   ******   ******   **




 残り五日間、私達三人は迷魂に大切な事を教えられた。そして私は思ったんだ。今度は私達三人が迷魂に大切な何かをしてあげたいと。

 でも後残り五日間と言うわずかな時間しかない。

 でも伝えたい。

 でも何を。


 そんな事を思いながら一日が過ぎていく。


 ベットの上で仰向けになりながら、今日の事を振り返る。


 鈴と奈々瀬が改めて和解して、あの後、カラフル一同素敵に一日に染めることが出来た。

 何が素敵かと言うと、それは迷魂と以前と同じように、生活していた事がだ。

 明日になれば迷魂との生活は後四日に迫る。

 このまま四日間普通に過ごして入れば、そんなに深く考えずに、私達カラフルは素敵な思い出が普通に作れるんじゃないかと。

 でもそれだけでは何か物足りない気がして、私は迷魂に本当の幸せの在処を示してくれたように、私も迷魂に何かをしてあげたい。

 多分迷魂の三人に言うと、『そんな事は気にしないで良いよ』と口をそろえて言う事が目に見えている。

 これは私が勝手に考えている事だ。

 残り五日間、迷魂の三人にサプライズを差し上げたい。

 そう思って、歌を送ろうかと思って、紙と鉛筆を用意して、何だろう。描き出すと自分で言うのも何だが、素敵なフレーズが次から次へと出てきて、ペンが止まらない。


 一時間くらいが経過して、詩を書く手が止まり、ちょっと一息入れようと、一階の居間に向かい、冷蔵庫を開けて、コップに牛乳を入れて飲んで少し気分転換が出来た。


 そこで私は考えさせられる。

 ただ詩を書いて、それを歌にして送るのは何か芸がない気がして、どうしようかと。


 だから私が一人でサプライズをしている事を、奈々瀬か琴美に相談した方が良いんじゃないかと思って、時計を見て、まだ二十時を回ったところだったので、早速部屋に戻り、奈々瀬のスマホに連絡を入れた。


「もしもし奈々瀬」


「あっ盟、どうしたのこんな時間に」


「こんな時間って言う程、遅くはないと思うけれども」


「それよりも用件は?」


 私は奈々瀬に迷魂の三人にサプライズを送ろうと言う提案を打ち明けた。

 すると奈々瀬は、


「奇遇ね。実を言うと私も同じ事を考えていたよ」


 奈々瀬の意見を聞いて、何かすごくテンションが上がって、


「マジで、さすがは同士、私達は心が通じ合っているって言うか、もう運命共同体だね」


 と調子に乗って言ってしまった事にしまったと思った。

 きっと奈々瀬にまた何か嫌な事を言われると覚悟して、奈々瀬の反応を待ちかまえると。


「本当におめでたい頭をしているんだね。あんたと心が通じ合っているとか、運命共同体なんて冗談じゃない。

 あんたは一人で舞台の上で腰を振りながらフラフープでも回していれば良いのよ」


 うわっ、さすがに奈々瀬の悪態はこたえるわ。

『舞台の上でフラフープを回していろ』ってどこからそんな嫌な表現が出てくるのか不思議でしようがない。

 まあそれはそれで良いとして、私はとにかく話を戻すために一つ咳払いを一つして、


「まあとにかく、私今さっきまで、サプライズの為に詩をたくさん書いていたんだ。でも詩を書いてただそれを歌にして、伝えるだけじゃ芸がない気がして、私と同じ事を考えていた奈々瀬に相談してみようと思ったんだけど」


「言われてみればそうね。私もただ今さっきまで、ピアノの鍵盤の前で曲を考えてみたけれど、それはあんたの言うとおりかもしれないね」


「でしょ。ただ歌にして、その歌のプロモにして最後を飾ろうなんて今思いついたけれども、何かプロモは以前私達でやったしね。何か言いアイディアはない?」


「じゃあ、琴美も混ぜて、今日は私の家で話し合うのはどう?」




 ******   ******   ******   *****

 *********   ******   ******   **



 琴美に連絡して実を言うと琴美も私と奈々瀬と同じ事を考えていたみたいだ。

 またつい琴美に『運命共同体』とか『心が通じ合っている』とか調子に乗って言ってしまったが、琴美は奈々瀬と違って、声色を黄色く染めて、嬉しそうに「本当だよ」と言ってくれて、素直な琴美の爪の垢を奈々瀬に一リットルぐらいの水に薄めて飲ませてやりたいと思ったりもした。


 早速私達は今日は奈々瀬の家でお泊まりと言う事で夜分遅く、お邪魔する事になった。


 時計は午後二十二時を示している。


「いらっしゃい盟」


 玄関で私を迎える奈々瀬。スリッパを用意してくれた。


「お邪魔します」


 とスリッパを履いて中に入っていく。


「琴美はもう来ているから、今私が考えた曲を聞かせていたところ」


「そうなんだ」


 部屋に入ると、琴美がヘッドホンをつけて、奈々瀬が作った曲を聴いている所みたいだ。


「コーヒー入れてくるから待っていて」


 と奈々瀬は部屋を出た。


 コーヒーを入れてくると言う事は、つまり今日は寝ないつもりで、迷魂にサプライズを考えるつもりだな。

 やって上げようじゃないかと意気込む私であった。


 琴美が私に気がつくと、ヘッドホンを外して、


「あっ、盟ちゃん。来ていたんだ」


「うん」


「やっぱり奈々瀬ちゃんも盟ちゃんもすごいね」


「えっ?そうなのか?」


 と疑問に返事をする。


「そうだよ。カラフルの曲はほとんど盟ちゃんと奈々瀬ちゃんが作っているからね。うちはいつも指示されたとおり、ドラムをたたいているだけだからね」


 とちょっと琴美自身何もないと言うような感じで言って、ちょっと落ち込んでいる様子だ。


「どうしてだよ。ドラムを正確に叩く琴美もすごいと思うよ」


「実を言うとさ、うちカノンの為にうちなりに詩と曲を作ってきたんだけどさ」


 と照れくさそうに言う琴美。


「えっ?そうなの?詩が出来たなら見せてよ。それと琴美の作った曲も私聴いてみたい」


「恥ずかしいよ」


「どうして恥ずかしがるんだよ。琴美が作った曲をいつか大勢の人の前で披露することになるかもしれないんだぞ」


 すると琴美はジャンバーのポケットにつっこみ、何かを取り出そうとした。

 だが琴美はその手を止めて、「やっぱり恥ずかしいよ。絶対に盟ちゃんと奈々瀬ちゃんは笑うよ」


「そんな事ないよ。とりあえず見せて見ろよ」


「やっぱりダメ」


 うわーじれったい琴美にちょっと苛立って、私は琴美にジャンバーのポケットに入っていると思われる琴美の詩と曲を取り出すために飛びかかった。


「盟ちゃん。何をするの?」


「良いから見せてよ。琴美の歌詞と曲」


「ダメダメダメ・・・・」


 と連呼して、琴美が作った歌詞と曲が入っているジャンバーのポケットを強く抑えている。


 私は強引にもそのポケットに突っ込んで、是非とも琴美が作った歌詞と曲を聴きたいあまり、その手をどける。


「観念しろ。琴美」


「いやいやいや」


 そこで奈々瀬がコーヒーを持って戻ってきた。


「あんた達何をやっているの?」


「琴美が歌詞と曲を作ってきたんだって。でも恥ずかしいからって見せたがらないんだよ」


「まったく盟は・・・もう夜遅いし近所迷惑になるから、はしゃがないでくれるかな」


 と注意され、私はちょっと自分がしていた事に恥ずかしくなって、琴美から離れて、正座して、身が縮まるほど恐縮してしまう。


 琴美はジャンバーのポケットを抑えて、見られなかった事にホッとしている様子だ。


「琴美、見せてくれたって良いじゃないか」


 上目遣いで琴美の目を見て、見せろと懇願する。


「だって恥ずかしいもん」


 そこで奈々瀬が、


「琴美、気持ちは分かるけれども、私達の夢はそこで正座している猿のような神経の図太さがなくては叶えられないよ」


「奈々瀬、それどういう意味よ」


「何言っているのほめて上げているんじゃない。あんたみたいな人間じゃないと、私達の夢は叶えられないって。以前もそういったじゃない」


 誉めているって言うけれども、奈々瀬が言うと皮肉にしか聞こえてこない。


「とにかく琴美、このちび猿のような神経の図太い人間になって、夢を叶えようよ」


「奈々瀬えええ」


 奈々瀬の悪口に私の堪忍袋の緒は切れて、奈々瀬に飛びかかろうとしたところ琴美が、


「分かったよ。盟ちゃんみたいな神経の図太いのを見習って、私も迷魂のカノンをはじめ、サタ子おばあちゃんや鈴ちゃんの為に作ってきた曲と詩を見せるよ」


 悪気のない琴美の発言に私はかなり傷ついた。

 私ってそんなに神経が図太いのかな?

 でも奈々瀬と琴美の言ったことは確かに皮肉に聞こえるが、本当にそれは誉め言葉なのだろうと受け取り、私は立ち上がって、うずくまってジャンバーのポケットを抑えている琴美に見せてと言わんばかりに手を差し出した。


 すると琴美は、素直にポケットからノートの切れ端と、曲が入っているだろうカセットテープを私に差し出した。



 

 描き出したら止まらない日常。


 作詞  琴美  作曲  琴美  編曲  カラフル


「月と太陽が役目を交代して、輝かしい太陽光をリズムに踊り出す日常。


 心のパレットにそれぞれの仲間の思いを詰めて、僕達は描くんだ。


 僕の思いと大切な人達の思いを混ぜると、心ほころび、笑顔が生まれるんだ。


 そんな日常を大切な君と送りたい。


 でも君と僕のとはお別れをしなくてはいけないんだね。


 だから僕と君と僕たちを囲む仲間達を、心のパレットに詰め込み、虹色よりも鮮やかで素敵な思いでを描こうよ。


 そして太陽と月が交代して、夜になった時、甘い夢を心待ちにしながら、その日描いた日常が飛び出して、素敵な明日への道しるべになるんだね。


 お別れは寂しいけれども、悲しい事じゃないと、心のパレットでみんなの思いを詰め込んで、筆をかざせば、自然と笑顔が生まれるんだ。


 そう永遠に・・・」



 今日は奈々瀬の家で琴美が作った素敵な歌をカラフルとして歌い、この琴美が作った素敵な歌の歌詞のようにみんなの思いを心のパレットに詰め込んで筆をかざせば、素敵な日常を描けるんだって・・・本当に琴美はすごい才能を持っている。

 私も奈々瀬も負けていられないな。

 友達って時にはライバルになる時もあるだと勉強になった。


 ・・・後四日。


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