これからもずっと
「ほら奈々瀬」
肩を貸して歩くように促す。
とりあえず、先ほど買った花を鈴の墓前に添えた。
「教えてよ盟、私はどうしたらいいのよ」
地面にはいつくばり、叫ぶ奈々瀬。
これじゃあもうお墓参りどころじゃなくなった。
「君達は?」
中年の男性に声をかけられて、顔を見ると見覚えのある顔だった。
「誰だよおっさん」
奈々瀬が失言する。
「やめろ奈々瀬」
「どちら様・・・」
思い出したと同時に沸々と怒りがこみ上げてきた。
「あなたは太田?」
奈々瀬は太田と反応して、その男性をじっと見つめて、即座に殴りかかった。
「てめえは太田かあ」
「落ち着け奈々瀬」
奈々瀬を羽交い締めして、とにかく奈々瀬の気持ちは痛いほど分かるが暴力はいけないと思って必死に止めた。
「太田てめえ><*?*?*`P>」
もはや酒に酔っていて呂律が回っておらず、まさに支離滅裂な事を言っていてもはやその言葉の意味さえ分からない。。
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太田は偶然私達とはち合わせるとは思っていなかったみたいだ。それは私達も同じだ。
でも太田は私と奈々瀬と琴美、そして体罰でその命を失わせた鈴の事を良く覚えていると言う事で、どこか落ち着ける、山の麓の喫茶店に入り、話し合う事になった。
「相沢さんや君たちの事をいくら謝っても償えないと私は思っている。
でもこの場を借りて君たちに謝っておきたい」
わざわざ席から立ち上がり、深々と頭を下げる太田。
実際に私達はその太田の謝罪を直接鈴に太田が言う事は不可能だが、私たちを通じて、本人に伝える事が出来る。
「おい。太田。てめえ見てえな先公がいるからな、私達生徒が夢を見られなくなるのが分かっているのかよ」
奈々瀬の酔っぱらった勢いに乗った罵声は太田の心を打ち抜いたかのように、思い切りダメージを与えた。
その証拠に太田は身を縮めて思い切り目をつむっている。
「本当に申し訳ない」
「鈴を・・鈴を返せ」
奈々瀬は泣きじゃくる。そう言って、店員を呼び、
「お姉さん酒盛ってきて」
と注文したところは私は制して、
「何でもないです。お冷やをいただけるとありがたいのですが」
「何するんだよ。盟、これが飲まずにいられないのに」
丁度その時、私たちぐらいの年頃の店員さんが、お水を持ってきて、私はすぐにそれを手に取り、奈々瀬の頭からぶっかけてやった。
「何するんだよ盟」
「少しは酔いが醒めたんじゃない?」
「だったらてめえも敵だよ」
「奈々瀬、悪いのは太田先生の体罰が原因かもしれないけど、鈴はお前に怒りを露わにしているのが分からないのかよ」
奈々瀬は黙る。
思えば鈴が自殺した原因は鈴が提出するはずだった理科のノートを奈々瀬が隠して大田の体罰を食らうはめになったからだ。
太田先生も同じ席にいる事だし丁度良いと思って、真実を太田先生も含めて奈々瀬に伝える。
「お前が軽い気持ちで、太田先生の体罰を鈴に促したのはお前なんだよ。お前があの時、提出するはずだった理科のノートをお前が隠していなければ、あんな事態にはならなかったんだよ」
奈々瀬に真実をはっきりと伝える。
同席している太田の反応を見たが、その事に、目を閉じて黙っていて、はっきりとその心情を読みとる事は出来なかったが、奈々瀬のせいにしている様子はいっさい見られなかった。
さらに私は勢いに乗って奈々瀬に大声で訴える。
「鈴に本当に謝る気があるなら、直接本人に言えよ。確かに鈴はお前や私や琴美の事を恨んでいたよ。それに鈴はただ幸せな日々を私達と過ごしたかったみたいだよ。それにいずれ結婚して、子供なんか作って幸せな家庭を持ちたかったとも言っていた。
今の鈴はその事をいっさい言わないが、心の奥底にはそう言った心情が隠されているかもしれない。
だから奈々瀬、謝るなら、酒の力を借りないで誠意を持って謝れよ」
しばしの沈黙。私はハッと気がついた時には、周りのお客に注目され迷惑な奴だと思われている。
でも私は気にしなかった。
そこで奈々瀬に伝えたい事はちゃんと伝えられたので、この店に長居しても仕方がないと思って、店を出る支度をしようとしたところ、太田先生がその口を開いた。
「君達の話を聞いて分かったんだけど、まるで相沢さんが生きている話のように聞こえたんだが、相沢さんは生きているのかい?」
そこでちょっとしまったと思った。
生きてはいないが、色々と複雑な事情もあるし、だったら太田に本人にちゃんと謝らせておいた方が良いと思って、私たちが勤める店に連れて行った方が良いと思ったが、何かまずい気がして、やめておいた。
だから私は太田先生に。
「先生の思いはちゃんと鈴に伝えて置きますから、どうか気になさらないでください」
そこで奈々瀬が、
「じゃあ太田にもちゃんと鈴に謝罪させようよ・・・」
と何か面倒くさい事になりそうになるので、奈々瀬のわき腹を思い切り肘鉄で食らわせて黙らせた。
「相沢さんは生きているのかい?」
と太田先生は真摯な瞳で私に訴えて来たので、その目を見るとちゃんと鈴に誠意を持って謝罪する気持ちが見て取れたので、
「生きてはいないんですよ」
「いやでも何か会話を聞いているとまるで生きているように聞こえて」
「とにかく、気にしないでください。私達がおかしな連中だとは、太田先生が私達の担任をしていた時、良くご存じじゃないですか?」
太田先生は何か訳がわからないと言った感じで、黙っていたが、もう流しておく。
店を出て、太田先生はおごると言っていたが、何かそれは嫌だったので、自分たちの支払いは自分達でした。
奈々瀬のせいでちゃんと鈴のお墓参りが出来なかったので、私はちゃんと墓前の前で手を合わせて冥福を祈りたかったので、戻る事にした。
それに対しては太田先生も同じ気持ちなので、それと私達と謝罪も含めて少し話がしたいので、鈴の墓前まで行動を共にすることにした。
奈々瀬は酒が大分抜けてきたみたいなので、何か頭痛を感じているので、私が持参していた、天然水を奈々瀬に突きつけ、飲ませた。
「ちょっとは酔いが醒めたか?」
「・・・」
黙っているところを見ると少しは酔いが醒めて、酔っぱらった勢いで自分がやった事を反省している感じだ。
でも太田先生に対しては威圧的な視線をしばしば向けている。
太田先生もうろたえた感じで、萎縮しているようだが、「気にしないでください」と言っておく。
太田先生の話を聞いて、太田先生は今でも教師を続けているみたいだ。
学校は町の郊外にあり、生徒が少なく、一年生から六年生まで同じクラスにまとめられて、太田先生はそこの学校の唯一教える側の先生として勤務しているみたいだ。
一人一人学年が違うので一人一人教えるのは大変だが、やりがいがあると言っている。
話の途中で奈々瀬が「また暴力とか振るっているんじゃないでしょうね」って言っていたが、太田先生は首をゆっくりと振って、否定したが、奈々瀬は「どうだか?」何て疑ってかかってきたが、太田先生の話に興味があり聞くことにする。
クラス内でのいじめも教師による体罰もないと断言していた太田先生。
まあ、それが事実かどうか何て私にも奈々瀬にもどうでも良いことだが、私個人としては何かほっとしたりもしている。
もしいじめがあり、体罰もあるクラスにしていたら、鈴が報われない気がしたからだと私自身は思った事だった。
私達が通っていた学校とは違い一人一人の生徒の成長を促す仕事にやりがいを感じているみたいだ。
それに鈴に暴力を振るってしまったのは鈴がだらしない生徒であり、少しでもしっかりとしてほしい事にあのような体罰を加えてしまったのだ。
最後の最後だから鈴に本気でしっかりとして欲しいと思いそうせざるを得なかった。
でもあのようになるとは夢にも思っていなかったのだ。
太田先生は鈴が自殺するまでは、普通に体罰を行ってきたが、今までに自殺する生徒はいなかったのだ。
太田は体罰を加えた後、その生徒に対して、遠くで様子をうかがい、暴力で心が滅入っていたら、どこかでフォローして見守るやり方で生徒達に接してきた。
確かに太田先生の体罰の後、さりげないどこかで優しくされた事があった記憶がある。
そして太田先生は生徒に忌み嫌われても、生徒の成長をおもんぱかる先生だったんだ。
太田先生の話を聞いて、私は鈴があのような自殺に至ってしまったのは本当に残念だし、今更悔やんだって、人間として生きた鈴は戻ってこない。
だから太田先生は生徒をおもんぱかる本当の先生何じゃないかと思った。
奈々瀬は何を思ったか分からないが黙って話を聞いている所を見ると、もしかしたら、奈々瀬も同じ事を考えたのかもしれない。
自分は嫌われても良い。生徒の為なら時には鬼になり仏となる。
正直、優しさだけでは人を成長させる事は出来ないかあ・・・。
鈴は太田先生に対して、謝罪を聞いて何を思うのか?ちょっと不安になり複雑な気持ちにもなる。
そして話をしているうちに鈴の墓前に到着した。
私はただ、今日はまあ暇だったから気まぐれな気持ちで来たが、こうしてちゃんと冥福を祈り、墓前の前で手を合わせて目を閉じて冥福を心から祈った。
まあ明日鈴に逢えるんだけど、こうしてちゃんと冥福を祈った事がないからな。
私と同じように太田先生も奈々瀬も手を合わせて鈴の冥福を心から祈った感じだった。
今日は本当に鈴のお墓参りに来て良かったと心から思えた。
こうして偶然奈々瀬と太田先生とも偶然だが話を聞けて本当に良かった。
そしてお墓参りも済んで、太田先生と駅まで一緒に行って、話すことは何もなくただ黙って共に駅まで行った。
駅に到着した時、太田先生は私達に改まって真摯なまなざしを私と奈々瀬に向けて言う。
「柴田さん。高山さん。今日は偶然君たちと出会えて良かった。
私が言うのも何だが、今日君達に出会えて、相沢さんにちゃんとした謝罪が出来たような気がしたよ。
本当にありがとう。
それと高橋琴美さんにもよろしく伝えて置いてください」
「とにかく太田先生もお元気で」
「ありがとう。柴田さんも高山さんもお元気で、どうかお体にはお気をつけてお過ごしください」
と太田先生は恭しく頭を下げた。
そこで隣にいる奈々瀬に軽く肘を突きつけ、『何か一言言ってやれ』と意を込めて、伝えると。
「とにかく太田さんの気持ちは分かったけれども、私はあなたを許した訳じゃありません。
でも、あなたと今日偶然逢えて、話を聞いて、あなたがさっき仰った相沢鈴が報われた気がして、正直今の心境はほっとしています」
「ありがとう。高山さん。それでは」
そう言って太田先生は改札口を通って私達の町とは反対側の下り電車のホームに向かい、去っていった。
私と奈々瀬はその姿をしばらく見つめて、ここで改めて奈々瀬と私は目を合わせて、本当に私は奈々瀬と偶然ここに出会ったのだと改めて認識した。
「奈々瀬、明日もちろん店に来るよね」
奈々瀬は軽く息をついて、「もちろんよ」と素っ気なく言った。
明日奈々瀬がお店に来る事を知って、私は次第にテンションが上がってきた。
こうして仲間が元気を取り戻してくれる事に、私はまた明日から、いつもの勉強にもバンドにも夢にも意欲的になれる事に嬉しくて仕方がないんだな。
まあとにかく私は友達として奈々瀬は必要な存在だ。
これからもずっと・・・
そう・・・これからもずっと・・・。
これからもずっと・・・。
作詞 盟 作曲 奈々瀬 編曲 カラフル。
「君との出会いは奇跡だね。互いに夢を共有して、共に追いかけた仲だからね。 僕は君なしではこんな素敵な思いをすることはできなかった。 君も同じことを言うんだね。 互いに歩み、躓いて喧嘩して、いがみ合っても、どこかで僕の心は君を必要としていたんだね。 君も同じだって。 これからもどうぞよろしくね。 これからもずっと・・・。 僕は君を近くに感じる事で、夢へ向かう力は無限大。 君と僕が手と手を取り合えば、この空に向かい風と太陽の光を感じて歩みゆけるだね。 たとえ夢が亡くなっても、君の為に生きるのもありかも。 君も同じ事を思っていたんだね。 いつまでもどうぞよろしくね。
これからもずっと・・・」
そう奈々瀬と私で一つの歌を奏でて、最後に私は叫んだ。
「カラフルの夢への挑戦は永遠に続くんだ」
って。
そして私と奈々瀬は切符を買って改札口を通って、明日への扉をくぐった。




