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また逢えるその日まで  作者: 柴田盟
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幸せの方程式

 ここはどこだろう?私の魂しかない。空虚な闇の中だった。


 その中で鈴の気持ちが私の魂に描写される。


 鈴が迷魂として奈々瀬に伝えたかった事。


 迷魂として現れた鈴は、奈々瀬に大切な事を伝えに来た存在。


 でも鈴の宇宙空間のような心には奈々瀬に対して憎しみに染まった心が存在していた。


 鈴の悲しみが聞こえる。


 迷魂は憎しみに染まってはいけない。


 それは迷魂である鈴は充分に承知していた。

 でも奈々瀬にされた憎しみはそれを反する程の強さを増していた。


 鈴の心は奈々瀬を幸せにする為に現れた。しかし、鈴は奈々瀬に対して憎しみの心を抱いていた。


 鈴は迷魂として私達、特に奈々瀬を見た時に、激しい葛藤にさらされていた。

 それは奈々瀬を幸せに導く為に大事な事を伝える事を選ぶべきか?迷魂の本来の目的、掟と言った方が良いか、それを反してまで奈々瀬に一矢に報いる為に復習するべきか?


 奈々瀬も気がついていたのだ。鈴が奈々瀬に憎しみを抱いている事を。


 奈々瀬はその憎しみを受け入れる覚悟をいつもしていた。


 鈴が迷魂として現れた時に、もう歪んだ運命の引き金は弾かれていた。


 いや奈々瀬が鈴に対して、嫉妬に翻弄され、あの時提出するはずだったノートを隠した時から。


 奈々瀬も後悔していた。鈴はそれに対して憎しみを抱いていた。


 鈴の幸せを奪ったのは奈々瀬。それは奈々瀬と鈴、そして私と琴美が避けることの出来ない残酷な真実として、私達の歴史に刻まれている。

 その残酷な真実を受けた鈴の憎しみが私達の身に差し迫ろうとしている。


 鈴は奈々瀬の鈴に対する後ろめたさにつけ込み利用して、奈々瀬そして私達をこの迷魂の世界へと誘ったのだ。


 そして私はその真意を心ではなく鈴の口から聞きたいと思い、意識を取り戻して、その目を開けた。


 そこには惨劇が繰り広げられていた、カノンちゃんと琴美は姉妹むつまじくブランコに寄り添い眠りにつき、サタ子おばあちゃんはまるで人形のような無機質な表情で立ち尽くして、奈々瀬は壁に貼り付けられて、体中傷だらけだった。


 もはや言葉にしなくても鈴の真意は理解できた。


 鈴は幸せを奪った奈々瀬を始め、私達に復習するつもりだ。


 鈴の心の声が聞こえる。


『見てごらんよ。現実から目を反らして死んだ者を忘れられずにいる哀れな琴美ちゃん。

 それに私を陥れその後ろめたさから耐えきれずに現実に生きる事に疲弊してすべて皮肉にとらえてしまった哀れな奈々瀬ちゃん』


『鈴、お前の気持ちは分かる。でも憎しみに生きれば、その憎しみはやがてお前に帰ってくるのが世の定めだよ。それでも承知でこんな事をするのか?』


『ずっと一人だった。ずっと一人で鈴の事を見つけて慰めてくれる人も魂もなかった。鈴の心の中には心が煮え返りそうな憎しみに焼き尽くされて苦しかった。ここは地獄じゃないのに、地獄よりも苦痛の場所だった。

 鈴はただみんなと幸せに生きたかった。現実の世界でみんなと遊んだりバンドしたり、勉強したり、そしてやがて結婚して子供だって持ちたかった。もう鈴にはそれさえも叶わない。鈴はこの世界で一人きりで佇むくらいなら、迷魂の掟を反してもあなた達を許さない』


『許さないならどうしたいんだよ』


『・・・』


 鈴の心の中は空っぽだが、私はその真意が分かった。


『鈴、お前はどんなに憎くても私達の仲間でいたいんだろ。いいよ。迷魂の世界で三日立ったら帰れなくなるみたいだけど、お前が望むなら、私はこの世界でずっとあんたと一緒に居てやるよ。飽きて嫌になるほどな』


 琴美と奈々瀬の気持ちを心を読んでみて、私は鈴に伝える。


『どうやら鈴。琴美も奈々瀬も同じ気持ちみたいだ。いつまでもお前と一緒に居てやっても良いみたいだぞ。

 まあ琴美はカノンちゃんとずっと居たいのが本意で、奈々瀬はあんたに対して後ろめたい気持ちに苛まれ、現実を見る気にもなれないのが本意だけどね

 それでも良いなら私達は構わないよ

 いつまでもあんたの側に行てやっても良い

 そしてあんたは私達とここで何がしたいんだ?』


 鈴の悲しい声が聞こえる。


『こんなんじゃないと』


『じゃあ鈴、鈴は私たちにどうして欲しいんだよ。奈々瀬があんたにやっった事は友達である私や琴美にも責任がある。だから私達三人でお前に答えてやるよ。私たちが出来る事なら何だって叶えてやるよ』


『鈴。あのお店に行きたい。みんなと一緒にバンドしたり絵を描いたり仕事したり勉強したあのお店に・・・』


 鈴の望みに奈々瀬と琴美の心に聞いてみる。


 どうやら琴美はカノンちゃんと一緒なら良いらしく。奈々瀬は異論はないみたいだ。


『じゃあ、鈴。私たちは帰り方が分からない』


 そう言った瞬間だった。



 ******   ******    ******    ***

 *********   *******   *******  *



 気がつくと私はソファーに寝そべっていて、正面に奈々瀬が眠りこけていて、カノンちゃんと琴美は仲むつまじく床に寝そべっている。それにサタ子おばあちゃんもテーブル席に突っ伏して眠っている状態だ。


 私が起きあがり、ドアから鈴が現れた。


 鈴の顔を見ると、後ろめたい気持ちがあるかのような表情をして、どうやら憎しみを私たちにぶつけたい何て言っていたが、それは本意にそう思っていた訳じゃなく、本当は憎い私達とそれでも仲良く幸せに今まで店でやってきた事をしたいだけだ。

 だから鈴は私達にやましさを感じて少し心が曇っている状態なんだと思った。


 だから私は笑顔で、


「鈴、オーナーが帰ってくるのは後七日だから、それまでここで過ごしても良いよ」


「どうしてそんな鈴を優しく出来るの?」


「じゃあどうして私達を元の世界に返してくれたんだ」


 すると鈴の瞳から大粒の涙が頬を伝い流れ落ちてきた。


「泣く奴があるかよ」


 そう言って私は鈴を抱きしめた。


 鈴は私の胸元を思い切り濡らした。


 それで私は貰い泣きか?私まで涙がこぼれ落ちて鈴を抱きしめて、チビな私は十二歳の鈴の背丈とあまり変わらないその胸を借りて泣いてしまった。


 ずっと辛かったんだよね。ゴメンなさいの一言で片づけられる程の軽いものじゃないんだ私たちがして来た事は。


 幸せになりたいよな。生きて幸せになりたいよな。ここに来た迷魂の鈴を始め、カノンちゃんも幼くその命を失い、サタ子おばあちゃんも家族に蔑ろにされて、悲しい老後を過ごしたのを私は良く知っている。


 みんな幸せになりたいのは当然だ。不幸を思う人間などこの世界に望む者などいない。


 だから私は歌うんだ。


 そして鈴と目が合い、鈴が即座に私のエレキギターを取りに行き、差し出して、鈴はベースを構えて私と鈴は歌う。



 幸せの方程式


 作詞 盟 鈴  作曲 盟 鈴  編曲 カラフル


「誰かの幸せを目の当たりにして、心がすっきりしない。


 無い物ねだり、でもその人の幸せを奪うのではなく、君の胸に手を当ててごらん。  


 熱い鼓動が幸せのリズムを奏でている事に気がつけるよ。


 そしてその鼓動のリズムに合わせて踊りながら希望を奏でる太陽の光を浴びに行こうよ。


 繰り返される日常の中に君を必要としてくれる人が待っている。それが君の幸せの方程式だよ分かる?」


 

 みんなが眠っている間に私と鈴は即興で歌を作り、ベースとエレキギターの音源で二人で歌った。


 歌は誰かに聴かせる物だが、こうして二人で即興で作った歌を歌って幸せを私達は感じている。

 まさに幸せの方程式。


 一曲歌を作って歌い終わって、奈々瀬が目覚めた。


「・・・ここは?」


 奈々瀬は辺りを見渡して、舞台でそれぞれ楽器を持ち立っている私と鈴を見て、複雑そうな顔をしてその瞳をおもむろに閉じた。


 聡い奈々瀬は店にいる自分と中睦まじく眠っている琴美とカノンちゃんとテーブルに突っ伏して眠っているサタ子おばあちゃん、そして舞台で私と鈴がそれぞれ楽器を持って立っている姿を見て状況を理解したみたいだ。


「奈々瀬ちゃん。ゴメンね」


 鈴が誠意を込め、その意を伝える。


「どうしてあんたが謝るの?」


「鈴はみんなを憎んでいた」


 すると奈々瀬は鋭い視線を鈴に向け、


「憎むなら私だけにしなさいよ。みんなを巻き込むのは・・・」


 そこで言葉に詰まる。みんなを巻き込んだのは奈々瀬が発端だから、それを奈々瀬が言ったら道理に合わない。


 奈々瀬は何を言って良いのか?どうして良いのか?分からないと言った感じで立ち上がり、扉に向かって立ち去ろうとしたところ。


「奈々瀬」「奈々瀬ちゃん」


 と呼び止めたが、そのまま去って言ってしまった。


 まあ突然この状況に置かれて、私たちに対する後ろめたい様々な気持ちを整理するには少しばかり時間が必要だと思って、しばらくそっとしておく事にした。


 後で奈々瀬に連絡の一本入れて、奈々瀬にも後一週間しか滞在出来ない迷魂と晴れやかな日々にするためには奈々瀬の協力も必要不可欠だからだ。


 それにあの様子だと鈴は奈々瀬に伝えたい事を諭していない様子だし。


 一つ息を吸って、琴美とカノンちゃんが仲睦まじく眠っている所に目を向けて、しばらく寝かせたいが、もう充分に眠っただろうと思って、二人の所に歩み寄り、私が琴美を揺さぶり、鈴がカノンちゃんを揺さぶり起こした。


「・・・盟ちゃん」


 寝ぼけ眼の琴美。


「もう充分に眠っただろう」


「カノン」


 鈴が起こしたカノンちゃんに琴美は抱きついて、私は何かやれやれと言った感じだ


 この様子だと、一週間後に訪れるお別れの時に、また何か問題でも起こしそうだ。


 でもまあ、私はどちらかと言うと、迷魂といつまでもこの店で過ごしていたい気持ちであったが、その気持ちは断固拒否して、すごく辛いが一週間後にオーナーが帰ってくるので、そこでお別れを覚悟した方がいいだろう。私、いや私達自身の為に。


 サタ子おばあちゃんの方を見ると、もう起きていて、窓の外のどこか遠くの景色を眺めている感じだ。


「サタ子おばあちゃん」


 と声をかけると一度振り向いて、にっこりと穏やかな笑顔で見て、そしておもむろに目を閉じて、視線を戻す。


 そんなおばあちゃんを見ると、もう私に教える事はないと言った感じだった。


 でも後一週間、色々な事情が込み合って再び迷魂のみんなと過ごす事になった。


 琴美とカノンちゃんと決別させるのも一つの問題だが、それよりもさらに深刻なのが、鈴が奈々瀬に伝えて心に諭さなくてはいけないだろう。

 問題の彼女は後ろめたい気持ちやら、色々と整理がつかない状態だからな。

 今日のところは奈々瀬と鈴との間に関する問題は保留で、とにかく今日は何をするか、正直奈々瀬がいないと始まらない気がするが、本当にどうしようとため息がこぼれ落ちる。


「どうしたの盟ちゃん。ため息なんてこぼしちゃって」


 鈴。そこでおばあちゃんが、


「ため息をつくと幸せが逃げるから、逃げないように、ため息をはいた瞬間に大きくを息を吸うと良いよ」


 そう言えば子供の頃にサタ子おばあちゃんに聞かされた気がする。


 まあ私は言われた通り、ため息で吐いた幸せの息を吸い込むように、大きく息を吸って、取り戻した。


 でもまた何か今一やる気が起きなくて再びため息をこぼしそうになるので、私はソファーにどかっと座って、鈴と琴美に何かやる事はないか意見を求めた。


 そこで琴美が、


「とりあえずいつもの下拵えをしておこうよ」


「そうだね」


 そう言えばそんな作業も合ったっけ何て思って、頭の中は奈々瀬が今どうしているのか、どのように解決させるか、そして今後奈々瀬とはどうして行くのか、頭がパニックになるくらいに奈々瀬の事でいっぱいで、いつもの下拵えをする気にもなれなかったが、これは仕事の責任上やっておくべきなので、琴美と私で取り組んだ。


 奈々瀬と鈴との問題を解決させるには、後一週間、悠長な事はしていられないし、この件を解決させなければ、奈々瀬は幸せになれなくなってしまう重大な事なんだよな。


 そう思うと焦ってしまうが、焦ってはいけない。


 とにかく奈々瀬は今はかなり病んでいるので一人にするしかない。


 後一週間。

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