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また逢えるその日まで  作者: 柴田盟
17/23

本当の気持ち、それはすなわち矛盾。でも・・・

 奈々瀬の思いが私の脳裏に描写される。


 奈々瀬は私が予想した通り、後ろめたい気持ちがあったからだ。


 その理由とは・・・。


 四年前鈴が太田の暴力によってパニックに陥り自殺したのは提出するはずだった鈴の理科のノートを奈々瀬がこっそり隠していたからだった。

 それでまさか鈴が体罰を受けて死ぬなんて夢にも思わず、その事で奈々瀬は心の奥深くに隠して苦しんでいたみたいだ。


 なぜ奈々瀬は提出するはずだった鈴のノートを隠したのか・・・。


 表向きでは鈴にしっかりして欲しいと言っているが、本質的な思いは・・・・私と親しくしたからだ。


 私と親しくしたから。


 奈々瀬は私の事を宇宙空間のような心の奥底に・・・。


 嫌だ。


 こんな思い受け止めたくない。


 気持ち悪いし、そんな奈々瀬の事なんか大嫌いだ。


 でも真実は鈴がパニックに陥り自殺したかのように残酷で嫌らしい。


 そんな真実受け入れたくないが、この迷魂が住むあの世と思われる世界はそんな人間の嫌らしい部分まで見えてしまう。

 それは丸裸を見られるよりもすごく恥ずかしく嫌らしいものだ。


 その奈々瀬の裸の心は、私を強く欲している。


 それはなぜなのか?理由何て無かった。奈々瀬が私が入る事により、奈々瀬は奈々瀬でいられる、密かに琴美の事も邪魔な存在だと思っていたが、私にとって琴美は私が私でいられる存在なので、その点は我慢してずっと目をつむっていたみたいだ。

 

 それに小学校の時に私達は奈々瀬と出会ってからも周りから蔑ろにされたが、中学の時、奈々瀬は私と琴美が見えないところで、私達三人に距離を縮めてくる人を陰湿な手口で追っ払った。

 そのやり方は、今だにその生徒は引きこもるほどのショックを受けているという。

 でも奈々瀬にはそれに対して罪悪感は無かった。


 私を取り囲もうとする連中をどんなひどい目に遭わせても近づけない。


 現に高校受験が出来なくなったのは、奈々瀬の陰湿な行為にみんな私と琴美も巻き込まれ、受験が出来なくなってしまった。

 でも奈々瀬にとってはそれは好都合。


 いつまでも私と入られる。いつかタイミングを合わせて、奈々瀬は私を独占しようと心の奥深くに強く切望していた。


 私と裸で抱き合い、互いに裸の心を共有して、いつまでも一緒にいたい。


 この迷魂が住む世界に誘われたのは、ある意味好奇心だった。


 そして奈々瀬は知ったんだ。迷魂の世界で人間として生きている奈々瀬が赴けば思い通りに出来ると。


 でもオーナーから聞いたが、迷魂の世界に三日滞在したら、私たちが住む世界に戻れなくなると言っていた。

 それに迷魂を思い通りに出来るなんて一言も聞いていない。 

 また謎が一つ私の中で生まれた。


 奈々瀬の裸の心を目の当たりにして、正直私は不快だった。


 もう絶交したいとも思っている。


 とにかく奈々瀬を現実世界に無理矢理でも引き連れて、帰ってから今後バンドの事も含めて奈々瀬との関係を考えて行かなくてはいけないと私は思っている。


 奈々瀬の裸の心をまとめると現実世界に嫌気がさして、迷魂が住む世界に永遠に滞在しようとしている。


 目の前に不敵に笑う奈々瀬の心は悲しみや苦しみに押しつぶされて真っ黒に染まろうとしている。


 奈々瀬が手を挙げると、身動きできない見えない黒い枷が外れて、自由に動けるようになる。


 私の裸の心が奈々瀬には届いているが、奈々瀬の心の声を聞くと、それを強く拒んでいる。


 奈々瀬は私が奈々瀬を許せない気持ちを知っている。


 ここでは嘘は通じない。


 だったら力ずくで奈々瀬を・・・。


 私と琴美はアイコンタクトもしないで、心は通じ合い、奈々瀬を止めようと奈々瀬に立ち向かう。


「奈々瀬。目を覚ませ」


「奈々瀬ちゃん」


 温厚な琴美もどうやら奈々瀬の事を許せない気持ちに染まっている。


 でも奈々瀬はもうこの世界にいる限り、そんな事はどうでも良いと不敵に笑い、再び私と琴美に真っ黒な黒い枷がからみつき、身動きできなくなる。


 奈々瀬の心の声が響く。


『悲しいよ二人とも。この世界に入れば思い通りなのに、それでも現実世界に私を引き連れたいみたいだね。

 でも心は変わるもの』


 すると、目の前にカノンちゃんとサタ子おばあちゃんが現れた。


「カノン」


 琴美が叫ぶ。


 琴美のからみつく黒い枷が外れて、琴美はカノンちゃんに脱兎のごとく近づいた。


 そこで私は気がついた。


 現れたカノンちゃんの心の声が聞こえない。それにサタ子おばあちゃんの声も。


 琴美にそれはカノンちゃんじゃないと心で訴えたが、琴美の心はカノンちゃんに気を取られて届いていない。


「琴美」


 大声で呼び止めたが、私の声は琴美には届いていない。


 あれはカノンちゃんじゃない。迷魂は心がないのか?いや鈴の心の声は聞こえる。「いつまでも一緒に居よう」って奈々瀬に完全に洗脳されている感じでだが。

 じゃあ、あのカノンちゃんな何なの?それに目の前のサタ子おばあちゃんも。


『何ってカノンちゃんだよ。それにあなたのおばあちゃんのサタ子おばあちゃんだよ』


 奈々瀬の心の声が聞こえる。


「嘘だーーー」


『盟、迷魂の世界に嘘なんてないのよ。裸の心でぶつかり合うのだから、この世界に嘘何てない。すべて真実でしか語れない世界なのよ』


「じゃあどうしてカノンちゃんとサタ子おばあちゃんの心の声がしない?絶対におかしいよ」


 すると奈々瀬はいつの間に私の眼前にその不気味な笑みを浮かべながら近づいてきた。


『だったらおいでよ盟も』


「気持ち悪い近づくな!」


 拳を丸めて奈々瀬の顔面に放とうとしたが、黒い枷に包まれていて、身動きができない状態だった。


 すると奈々瀬は精神異常者のような表情を浮かべて、私の頬を本気で叩いて、叩いたと同時に黒い枷が外れて、私は地面に転がり恐怖を覚えた。


『盟、自分の立場が分かっているの?』


 倒れた私の所にゆっくりと歩み寄り、私の上着を強引にはいだ。


 そして奈々瀬は異常な目つきで私を見つめて、私に恐怖心を与える。


『うふふフフ。怯えている怯えている』


 私はもはやパニックに陥り、とっさの判断で奈々瀬に背を向けて走り出した。


『逃げなさい逃げなさい』


 奈々瀬から距離を置いても、奈々瀬の心の声が私に響く。まるで奈々瀬は楽しんで私の恐怖心を煽って楽しんでいる様子だ。


『うふふふ。あははは。うふふふふ。あははは』


 私は必死に逃げるのに夢中だった。


 奈々瀬の心の声が聞こえない所に行きたいと必死で懇願しながら。


『無駄よ。盟。私と盟はもう一つになったのも当然なんだから』


 この世界では奈々瀬に私の心は筒抜けだ。逆に奈々瀬の心も筒抜け。

 でも奈々瀬にはこの世界を支配しようとして、そして私や琴美ともそれに迷魂として現れたサタ子おばあちゃんやカノンちゃん、そして鈴と共に永遠に生きようと懇願している。


 私はそんな世界では生きたくない。


 そんな偽物のような世界で生きたくない。


 私はどんなに辛くても現実から目を背けずに生きてれば、たとえ心の距離が果てしなく遠ざかってしまった人とも分かり合い、幸せになれると思っている。


 確かに奈々瀬の思う通り、現実は汚いし、欺瞞に満ちた世界だ。


『うふふふふ。あはははは。うふふふふふ。あははははは』


 どこまで遠くに逃げたのか奈々瀬からは距離はとれたが、奈々瀬の不気味に真っ黒に染まろうとしている奈々瀬の心が私の心の響いてくる。


 彼岸花が咲き誇る草原に一人佇み、私は黄金色に染まった夕焼けを見上げた。


 奈々瀬の不気味に笑う心の声が響きわたる。


 奈々瀬はずっと苦しんでいた。


 鈴が死んでしまった悲しみを一人で背負い生きてきた。


 その思いにもう耐えられなくなってしまったのだろう。


 奈々瀬、あんたは一人じゃないんだよ。


 私はあなたの事を嫌いになってしまったけれども、私はあなたの気持ちを大事にしたい。

 そしてどうか目を覚まして、あなたの言う通り欺瞞に満ちた世界だけど、そこから目を背けないで私たちと一緒に帰ろう。



 自分を見失った友に伝えたい事。


 作詞 盟  作曲 盟  編曲  カラフル


「心を閉ざして独りぼっちになった君に伝えたい。


 悲しみから目を背けないで。


 君が言う欺瞞に満ちた世界に佇むのはあなただけじゃない。


 私も居るから安心して。


 私の手を取って。


 そして私の手を決して放さないで。


 放してしまったら、あなたは孤独の海におぼれてしまい。やがて永遠の闇に消えてしまう。


 私はあなたの事が嫌いになってしまったけれども、それはあなたの事を一つ知り、あなたと交わした絆が強くなったと僕は思う。


 つまり私が言いたいのは嫌いになったあなたも大好きなんだって。


 大好きなあなたも大嫌いなあなたもすべてをひっくるめて好きになるって、これがいわゆる愛って奴なのかもしれない。


 そして私はあなたに幸せになってもらいたい。


 あなたと過ごして来た時間の中であなたは私を幸せにしてくれた。それにあなたも幸せだったと思う。


 あなたの心が見失っても、私はあなたを探して、一緒に君がなくした大事な心を探しに行くよ。


 だからこの手を・・・・」


 私は手を大空に掲げて「奈々瀬」と叫んだ。


 奈々瀬の心の声がしない。


 心の声がしない事に私は心底心配になり、それでも奈々瀬が大空に突き上げた私の手を取りに来てくれる事を期待して、その手を掲げ続けた。


 私の歌は奈々瀬に届いている。心を奪われてしまった琴美にも鈴にもサタ子おばあちゃんにも、カノンちゃんにも。


 正直私の心は疲弊している。


 半分もうどうでも良い感じにもなっている。


 でも私が掲げた手を奈々瀬は掴みに来てくれると信じている。いやもはや半信半疑、もしくはそれ以下だが、それでも私は手を夕闇に染まった大空に向かって掲げる。


 そして奈々瀬の心の声が聞こえる。


『盟、あなたの歌は心に本当に響くね。でも・・・』


 私は黒い何かに包まれ動けなくなる。


『奈々瀬』


『現実はどんなにすばらしい歌を歌っても、その声は欺瞞の闇に包まれて消えていくのが定めなのよ。

 私がどうしてあなたと友達でいたか分かっているよね。私の裸の心を感じたあなたなら』


『知っているよ。私や琴美それに鈴の事を道具としてしか思っていなかったんだろ

 奈々瀬は私達と友にいれば、何かをする意欲を保つ事が出来る。

 私や琴美それに鈴は嘘をつく事が苦手だ。

 いつも私達三人は誰とでも真正面からぶつかって行ったよ

 たとえそれが陰湿な人間につけ込まれて丸め込まれる事だって知っていても。                          でもそれでも奈々瀬、あなたが助けてくれたんでしょ。私たちを・・・私たちをたぶらかす人間から私や琴美を陰から見守っていてくれたことだって知っている。

 それで奈々瀬。あの時、受験を受けられなくされてはめられたって、奈々瀬は私達の事をほおっておいて抜け駆け出来たのにそれをしなかった。

 確かに奈々瀬の言う通り、この現実は欺瞞に満ちているよ。

 でも少なくても私と琴美、それに店で出会った迷魂である鈴、サタ子おばあちゃんや、カノンちゃんはあなたを欺いたりはしない決して

 そして私は知っている奈々瀬の本当の優しさを

 私や琴美の事を道具としてしか見ていなかった事に後ろめたくなるのは奈々瀬の優しさから来ているんだよ。

 いや、奈々瀬は私や琴美の事を道具としてしか見ていない。

 それはあなたは一人じゃない。

 私たちは友達だ。

 私や琴美、鈴に後ろめたい気持ちがあるならば、謝れば良いじゃないか。

 私や琴美に対して謝ればすむ問題だけど、鈴に対して謝ってすむ問題じゃないことは知っている。

 だから奈々瀬、私もつき合うから、一緒に謝ろうよ。この件に関しては琴美も協力してくれる。

 だから奈々瀬、素直になって』


 もはや矛盾だらけだが、それでも奈々瀬に思いを伝えようと必死に心で叫ぶ。


 すると目の前に奈々瀬が現れた。


 奈々瀬は俯きながら私の方に近づいてくる。


 どうしてだろう?奈々瀬の心の声がしない。


 すると奈々瀬がその顔を上げ、薄気味悪い笑みを浮かべて私を見て、私の全身の鳥肌が立った。


『言いたいことはそれだけ?盟ちゃん』


 これは奈々瀬の心の声じゃない。その心の声を私百パーセント確信した。


『鈴』


 と心で叫ぶと、目の前に心を亡くした奈々瀬が迫り、黒い枷に縛り付けられた私を拳を丸めて思い切り鳩尾に叩きつけた。


 意識が遠のいていく。


 そんな中、鈴の心の声がした。

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