第3話:ツンデレの妹に憎まれて眠れないお話 後編
3話目からさっそく3ヶ月の放置プレイです。序盤でここまでやる気のない小説も珍しいことでしょう。
「ふぉおおおおおおおおおっ。あたたたたたたたたたたたっ!」
バキッ
「あうちっ!」
「……何をしてるんですか?」
「いや、この窓ガラス強化ガラスっぽいからちょっと強度でも測ろうかと」
「そんな理由でいきなりガラスを叩かないでくださいよ……」
「お、なにこれ? 壷か?」
「あ、それは旦那様が趣味で集めているものでして」
「ふーん。よし、こいつでボーリングでもするか」
「聞けばそれ一つで普通の一軒家が買えるとか」
「壷でそんなことするなんて非常識だよな、うん」
食事を取った後、俺は雨宮さんに屋敷の中を案内してもらっていた。なにはともあれこれからここで暮らしていくことになったのだからいろいろと把握しておかないといけないからな。それにちょっと食いすぎたから腹ごなしをしたかったのもある。
でも問題が一つあった。
「この屋敷広すぎ!」
もうかれこれ1時間以上歩き回っているが、雨宮さん曰くまだ半分も回っていないらしい。さっきみたいにおふざけをちょくちょく入れているせいもあるとはいえ、これはねーよ。
「金持ちってのは大変だよなぁ。わざわざクソでかい家を建てて権威を示さないといけないだなんて」
「え?」
「ん? 違うの? 俺、金持ちがでかい家を建てるのは他の金持ち連中にバカにされないようにしてるんだと思ってたんだけど」
「あ、い、いえ、間違っているというわけではないと思いますけど、普通はそういうことを考える前に、大きな家に住めて羨ましいなぁとか思うものだと……」
「え、そうなの?」
そんなこと一瞬も考えなかった。なんか「あんたおかしいんじゃない?」とでも言われたみたいでちょっとへこんだ。
「……その、才悟様は、変わった方ですね」
「は?」
突然そんなことを言われて俺は面食らった。
「べ、べつに変な意味じゃないんですよ? ただ、その、雰囲気、と申しますか……まだお会いしてほんの少ししか経っていませんが、才悟様はわたくしが今まで見てきたどんな人とも違う感性を持っていらして、ふと、そう思ったんです。そう言えば、旦那様が渡してくださった調査書にも一風変わっていると書かれておりましたね」
「調査書って、俺の?」
「はい」
「へー。なんて書いてあったの?」
「確か、えーとですね……。秋坂才悟。16歳。現代ではあまり類を見ない貧乏人」
「いきなりケンカ売ってるなその調査書」
事実だから何も言い返せないけどな!
「生活の詳細は……」
「もういいよ言わなくて。なんかどんどん俺がみじめな存在になっていく気がするから」
「そ、そうですね。わたくしもあれを見たときは我が目を疑いしましたから」
どうやら俺の生活は目も当てられないぐらい酷いものらしい。
その後も雨宮さんの説明を聞きながら屋敷内を歩き回って、ちょくちょく話をしていたのだが、ちょいと気になることがあり、俺はどうしようもなくむずかゆくなってきたので思い切って言ってみた。
「あのさ、雨宮さん」
「はい、なんですか才悟様」
「それ。その才悟様っての、やめてくれないか? どうにも恥ずいんだけど」
様付けがとても似合っていないという自覚が俺にはある。根が貧乏人だからな。だから彼女から『才悟様』なんて言われるとひじょーに背筋がかゆくなる。
「はあ……でしたら、どうお呼びすればいいんでしょうか。『ご主人様』ですか?」
「そんなん笑顔で言われたら俺萌え死にしちゃうからダメ。無難に『才悟さん』とかでいいんじゃないの? なんなら呼び捨てでも構わないけど」
「そ、そそそそそそそんな滅相もない! い、いくら専属とはいえわたくしは一介のメイドに過ぎないですからっ!」
「あー、とりあえず落ち着け。まずは深呼吸をするのだ」
「は、はい。すー、はー、すー、はー」
「落ち着いたか? 落ち着いたな? ではその状態を維持しつつ上目遣いから満面の笑みでかわいく『お兄ちゃん大好き!』と言うがいい」
「え、えーと……お、お兄ちゃん大す………って何言わせるんですかぁー!!」
……やばい。不覚にももえた。もちろんくさかんむりの方で。
俺が聖なる『お兄ちゃん』ヴォイスに感動していると、雨宮さんはバカ正直に実行した自分の無垢さ加減に呆れるのと台詞の恥ずかしさにより足元がお留守になり、足がもつれてお倒れになった。ごめんごめんと謝りつつ手を差し出そうとして―――俺はそこにヘブンを見た。
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
さてここでテメェらに質問だ。お前らは絶対領域なるものを知っているか? は? 知らない? いいや貴様は知っているはずだお前は自分の心に嘘をついているに過ぎない認めろ認めるのだこれは一般常識なのだと! さて、テメェらの頭に件の領域がぽわぽわと浮かび上がってきたこれからが本題だ。ずばり聞こう。その絶対不可侵なる領域の、さらに向こうには一体何が広がっているか知っているか? もしかしたら知らないかもしれないな。だが俺は知っている。ちょうどいい機会だ。知らないもののために俺がその領域の名前を教えてやろう。
女体の神秘と言っても過言ではない、絶対領域の先にある絶対空間、その名も―――”PANTU”と言う。
今こそ俺の秘密を明かそう。俺の体の半分はエロスでできている。
「きゃっ! さ、才悟様どこをご覧になっておられるのですか!? 見ないでくださいー!」
「えー」
「えー、じゃないですっ! 何考えてるんですかあなたは!」
「 ”PANTU”のすばらしさを大衆に広く知らしめるにはどうすればいいか考えておりました」
「そんなこと考えなくていいです!」
「いやー、それにしても雨宮さんなかなかに過激な下着つけてるねー。もうちょっと清楚な感じのする下着も雨宮さんに似合いそうだけど、こっちの方が色っぽいね。へっへっへ、姉ちゃんいいもん持っとるのぉー」
ぷすっ
「ぎゃああああああっ! め、目がぁああああああっ!」
突き出された細くて綺麗な指が俺の目玉にクリーンヒットした。痛い。文字通り血の涙を流しそうなほど痛い。
「も、申し訳ありません才悟様! わたくしったらつい……! ああなんてことをわたくしは……!」
「い、いや、今のは完璧に俺が悪かったから……」
ふぅ……俺としたことが、我が人畜無害の紳士の理念を崩壊させてしまったぜ。どうも俺はこういう突発的なエロティックイベントに弱い節がある。今後は気をつけなければ。まあ、今見た光景は一生忘れないがな!
「ああ、それと雨宮さん」
「は、はひ!? か、かかかかか覚悟はできております! どんな罰も受ける所存です! そ、それと、わたくしめも一応一人前のメイド故、そ、その……お、おおおお、お望みとあらば……多少えっちなことでも……」
「今夜ノーパンで俺の部屋へ来い」
「ふぇえええっ!?」
いかん、あまりに魅力的な言葉につい本音が。
「冗談冗談。てか、俺が言いたいのはそんなことじゃなくて、名前」
「……はい? 名前、と言いますと……?」
「あのね、君はさっき俺が言ったことをもう忘れたのか?」
「………あ」
「まったく、たった数十秒前の話だというのに。雨宮さん、まさか若年性健忘症?」
「って! 才悟様が変なことを言わせるからわたくしが転んだりしていろいろ場が混乱したんじゃないですか!」
「バカヤロウ。この俺に仕えるというのならその程度さらりと受け流して見せろ。……いや待て、そうなるとせっかくのリアクションを楽しむことが出来ないな……やっぱり、存分におろおろしてくれ」
「そんなぁ〜。勘弁してくださいよ才悟様……」
「ほら、また」
「うっ……で、でも、やはりわたくしはあなたに仕えるものであって、決して対等な立場に立つものではないのですよ? 必要以上に仲良くしてしまっては……その、間違いが起こらないとも……」
「雨宮さんは間違いを起こすつもりなの?」
「い、いえ! わたくしなんかが滅相もない!」
「じゃあ、問題ないだろ。俺がいいって言ってんだから、気にしないでよ」
「そ、そういうわけには……」
「……俺はね、正直言うと、どちらかといえば一人でいることを好むんだ。必要以上に誰かの助けを借りるってのが個人的に気に入らなくてね。だから本音を言えば、君みたいなメイド、俺には必要ないんだよ。
まあ今は、ここにいる以上はそういうのが俺の傍にいるのも仕方がないって妥協してるけどね。俺だってメイドさんの仕事を奪ってまで安いプライドを押し通したいとは思わないよ。でもどうせ傍に置くなら俺は雨宮さんと仲良くなりたい。友達として……とまでは、さすがに言わない。でも、主人と従者の関係ってだけは止してくれ。俺は様付けなんてされる柄じゃない。頼むよ、雨宮……真奈美さん」
好意の印も込めて下の名前で呼んでみる。真奈美さんは少しあたふたとしたけど、俺が真剣に見つめ続けると、観念したかのように肩を落とした。
「……ハァ。分かりました。それでは、これからあなたのことを、才悟さん、と呼ばせていただきます」
「うん、それでいいよ。よしよし、素直な子は好きだよ俺」
「あ、頭をなでないでくださいよ……!」
「お、照れてる照れてる」
「べ、べつに照れてなんていませんよ!」
「(ぐっ)ナイスツンデレだ、真奈美さん」
「そんなんじゃありません〜!」
「ははは」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
「おっとっと」
ムキーッ、とでも言いそうなほど子供っぽい仕草で俺を威嚇すると、真奈美さんはぷんすか起こりながらさっさと先に行ってしまった。ありゃ、少しいじり過ぎたか。
「それにしても、主人をほっぽり出すメイドってのはどうなんだ? ……まあ、俺としてはこっちの方が嬉しいけどね」
これからの生活、正直不安だらけだったけど、なんか、うまくやっていけそうな気がしてきた。
「おーい、待っとくれー」
少し小走りで真奈美さんを追って角を曲がる。
「……瞬間移動?」
クソ長い廊下には真奈美さんの姿はなかった。
「まあ現実的に考えて消えるわけないわな」
おそらくこの通りのどこかの部屋に身を潜めているのだろう。まったく、少しからかわれたぐらいて拗ねちゃって。うむ、かわゆいね。
とりあえず俺はテキトーに近くの部屋を開けてみた。
そこに、下着姿の我が義妹がいた。
『……………………………』
麗菜、現実を認識できず硬直。
俺、麗菜の胸をガン見。
沈黙を打ち破ったのは俺だった。
「不合格」
「ちょっとっ! どこ見て言ってんのよあなたっ!!」
「いや、だって、ねえ? うう、あまりの貧相さに涙が……」
「貧相って言うなぁああああああああっ!!」
「それになんだよお前その格好。下着だけじゃねえか」
「しょうがないじゃない着替えてたんだからっ!」
「バカヤロウ! 着替えてる最中ならなおさら服を着崩した状態じゃないとダメだろうがっ! いいか、女の下着ってのはなぁ、乱れた衣服からチラッと見えるのが一番萌えるんだよっ! そんなことも分かんねぇのか貴様わっ!」
「知らないわよそんなのっ! それよりいつまで見てるのよっ!」
「お、いいねシーツで身を覆うその姿! 本人は隠せているつもりで微妙に見え隠れする下着が大変ぐっじょぶです! 合格ぅっ!!」
「ぜんぜん嬉しくないわよバカァアアアアアアアアアアッ!!」
―――しかし、まあ、綺麗なことだ。
一見平常心を保っているように見える俺だが、内心は結構いっぱいいっぱいだったりする。さっきも言ったが、俺は振って沸いてきたエロイベントに弱い。加えて、麗菜は口は悪いがそれを除けば、俺が知るどの女よりも綺麗で……その、かわいい。胸は正直これからに期待だが、細くすらっとした手足に、キュッと締まったウエスト。神ががり的なまでに整った顔。そんな女が、俺の前で下着姿でいるのだ。これは、なんというか……卑怯だ。
「助けて修司っ! 変態ノゾキ魔に犯されるーっ!!」
「い!?」
いきなり何言い出しやがるこのアマ! ヤバイどうしよう。客観的に見て悪いのはどう考えても俺だしこれじゃ言い訳のしようが―――
「そこまでです」
いつの間にか叩き伏せられて拳銃突きつけられました。
「ちょと――――っ!! なにこの急展開!?」
「黙りなさい、一言でも喋れば心臓を打ち抜きます」
「(ひぃいいいいいいいいいいいいっ!!)」
く、バカな! 今まで幾度となく暴君を退けてきたこの俺が、なんの気配も感じないまま呆気なく組み伏せられてしまうとは!
「我が主、朝霧麗菜様に対する不埒な行為。人生を七回捧げようと償えない罪です。覚悟はできていますね?」
「あなたこそ、覚悟はできているのでしょうね」
「!?」
俺に銃を突きつける男が驚いて振り返ると、そこには日本刀を突きつけて仁王立ちする―――真奈美さんがいた。
「まさかの救世主キタ――――ッ!!」
もう何がなんだか。
「雨宮さん、ですか? これは一体どういうことでしょうか」
「それはこちらの台詞です、伊達さん。あなたは誰に向かって銃を突きつけておられるのですか?」
「誰、と言われましても、不埒なノゾキ魔に……」
そう言って男は初めて俺の顔を見た。うおっ、スゲェ美形の兄ちゃんだ。
「さ、才悟様!? も、申し訳ありません、とんだご無礼を!」
慌てて俺を解放してひざまづく兄ちゃん。えーと……。
「真奈美さん、説明プリーズ。俺訳分かんないんですけど」
あと、できればその日本刀しまってください。メッサ恐いっす。
「あ、はい。えっとですね、その方は伊達修司さんと仰って、麗菜様専属の執事なのです」
「え、執事?」
「はい、ご覧の通り」
真奈美さんに促されて視線を送ると、
「このバカ修司! なんであいつを解放してるのよ!」
「し、しかしお嬢様、あの方は先刻ご報告にあった秋坂才悟様なのでしょう? 私ごときが手を出すわけには……」
「何言ってんのよ根性なし! いい? あいつはあろうことかこの私の下着姿を見たのよ!? こ、この、私の、誰にも見せたことない、ああああられのない姿を! しかも! あろうことか私の胸を侮辱するなんて! 修司っ! とにかくそいつ殺っちゃいなさい!!」
「お嬢様。あなたは朝霧家の娘なのですから、そのような物騒な発言は控えてください……」
「うるさいうるさいうるさーいっ! いいからさっさとそいつ殺しなさいよーっ!!」
……うん。俺、将来執事にだけはなりたくねえわ。
「にしても、ずいぶんと若いな。執事ってもっとこう年配のイメージがあったんだけど」
「ええ、年配の方の方が細かい気配りもできますし、また人生経験が長いですので主人の相談事に乗ったりできますからね。ですが、彼は若輩ながらも執事としての実力は一級です。主人の身の回りの世話から危険分子の排除まで、たった一人で対応可能です。かくいうわたくしも、才悟さんを全力でサポートするため、一級のスキルを持ち合わせております」
それであの日本刀っすか。
「それにしても才悟さん。いくらなんでも初日に麗菜様の着替えをノゾクなどと、不謹慎極まりないですよ」
「ちょ! それ誤解! てか真奈美さんが急にいなくなるから探してたんじゃんか!」
「だ、だってそれは才悟さんがおかしなことを仰るから……!」
ああマズイ。また話がややこしくなってきた。思考がうまく働かねえ。
「だぁあああああああ! と・に・か・く! テメェら全員そこに正座しやがれ―――――っ!!」
◇◇◇
「囚人点呼ー、開始っ。雨宮真奈美!」
「え、えと、はい!」
「伊達修司!」
「ここに」
「朝霧麗菜!」
「あんた何様? 死ねばいいのに……」
このアマ、シバき倒したろか。
しかも奴め、俺が正座しろと言ったのに一人だけベッドに座ってあまつさえ携帯をいじり出すとは。こんなのが日本を担う大企業の娘だと思うと心配でしょうがない。
「ハァ。まあとりあえず、真奈美さんにはあとで『30秒間パンツガン見の刑』に処するとして……」
「え!? それって本気ですか!?」
「バカ言え、本気なわけあるか」
「そ、そうですよね。もう、驚かさないでくださいよ……」
「俺が本気になったら、『一日中ノーパンの刑』に処するに決まってるじゃないか!」
「爽やかな笑顔でサムズアップ――――ッ!?」
真奈美さんは正座から体育座りに移行してしくしくと泣き始めた。ああ、かわいい……。
「そんで修司さんだが……まあ、本人としては主人を守ろうとしての行動だったんだし、その忠誠心に免じて不問っつーことで」
「ありがとうございます」
「で、最後に麗菜なわけだが……」
「気安く呼び捨てにしないでくれる? 虫唾が走るから」
「じゃあ、レイぴょん」
「変な名前で呼ばないでよ!」
「なんだ、うさぎ風は好みじゃないか。ならレイにゃん」
「好みとかそういう問題じゃないから!」
「そう興奮するなよマイシスター」
「妹って言うなーっ!!」
うるさい奴だな。
しっかし、ずいぶんとまた嫌われたもんだねぇ。
「まったく、こんなイケメンな兄貴が出来て一体何が不満なんだか」
「ハァ? ブサメンがホラ吹いてんじゃないわよ」
「…………(ピキッ!)」
おーけー。落ち着け俺。こいつは年下。俺年上。ここは大人の振る舞いを見せねば。
「まあそう嫌うなよ。さっきのはその、確かに俺が悪かった。ごめん。反省してる。だが、お前だっていけないんだぞ。そんな綺麗で魅力的な体をしているんだから。男なら飛びつかない方がおかしいんだよ」
「うざい、きもい、喋るな」
褒め殺し作戦、失敗。
「……そ、そうだ。俺、こう見えて肩揉みとかすげー得意なんだ。お前、肩こってないか? もしそうなら俺が揉んで……」
「寄るな駄犬」
スキンシップ作戦、失敗。
「…………そ、そう言えばさ、麗菜って今年で高校生になるんだよな? いやー、麗菜って頭良さそうだもんな。きっといい学校に決まったんだろうな。でもさ、進学となるとやっぱりいろいろ不安とかあるよな。そうだ、もし勉強で行き詰るようなことがあったらさ、俺が教えて……」
「あんたみたいな低能に教えてもらうぐらいなら小学生に聞いたほうがマシよ」
「………………(ピキッ!)」
「さ、才悟さん落ち着いて!」
「離してくれ真奈美さん! この生意気ぺったんが俺のことを『お兄ちゃん』って呼ぶように調教してやる!」
「お、お嬢様落ち着いてください!」
「離しなさい修司! この自意識過剰なブサメンに巨乳の愚かさを叩き込むのよ!」
俺と麗菜はメイドと執事を振り切って対峙する。
「おもしろい、自他共に認める巨乳スキーであるこの俺が、貴様のようなつるぺたに屈するとでも?」
「悪いことは言わないわ。今すぐ土下座しなさい。そうすればお仕置きだけは勘弁してあげる」
「はっ、やってみさらせ」
俺はよゆーの表情でふんぞり返る。何をするかは知らないが、今まであらゆる危機を乗り越えてきたこの俺が、こんなロリ娘にやられるなど、それこそビームサーベルでも持ってこない限り―――
ドゴンッ!
「ちっ、外した」
―――サーベルはなかったけど、ハンマーは持ってました。
「待ていっ! テメェ今俺が避けなかったら間違いなく潰されてたぞ!? ていうか『10t』ってお前化け物かよ!」
「うっさいわね! いいから黙って挽肉になりなさいっ!」
「きゃ―――――っ!!」
第二次兄弟戦争、スタート。
結局、建物内と言わず屋敷内を完璧に把握できるぐらい追っかけ回されましたよ。自分、一睡もできなかったですよ。しかもばたんきゅーしたバカを背負って帰るのは俺の役目でしたよ。
とにもかくにも、こんな感じで朝霧才悟の記念すべき一日が幕を閉じた。
……俺、これからホントにやっていけるのかな。
うーん、ラストの方はもう少し話を広げたかったんですけど、現段階では才悟と麗菜の口ゲンカくらいしか書けないですからね。あんまりだらだらするのも嫌いなんでちょっと無理やりまとめました。まあ、この話は屋敷内での主要人物の紹介的な意味合いを持っていたので、その点はクリアされているのでよしとしましょう。
さて、次回からは彼らの春休みの日々をつらつらと何話か書く予定なのですが、はっきり言って内容はまったく考えてません(マテ)。まあ基本的に作者はパソコンの前に座ってから内容を考え始める超無計画野朗なんで、次の話も妙なテンションだったらそれなりのが書けるでしょう。あんまり期待しないでくださいね。感想お待ちしてます。