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第13話(終)

 ◎田島



 長岡が去ってから田島は、唖然としてばかりはいられないと行動を起こした。

 いつ他の警官が追ってくるのかわからない。田島は未だに追われる身であった。

 地面から起き上がり、パタパタと砂を落とす。

 少し離れたところに放ってあるジャンパーも拾い上げて、同様に砂を払った。

 結局のところなんだったんだという疑問はあれど、それを熟考する時間はとてもではないがない。

 田島は警官たちとの位置関係を思い浮かべて、前に向かって歩き出した。

 街を出る。

 その先は何も考えていなかった。

 どこへ行くのか、何をするのか、何で生きるのか。

 俺は頭が悪いと田島が嘆く。小難しいことは、自らに直結することでも考えるのが億劫だった。

 だから。

 何でも知っていそうなあの逆さま人間を思い浮かべて。

 結局あそこが帰る場所になってるんだよな、と苦笑する。

 そして、どうせ行き先を決めてないし、と納得する自分に呆れた。

 田島は歩き出す。

 ひとまず戻って、それで、サカサにこれからを相談しよう。

 ついでに、変な情報を寄越した津山に一発だな。

 二人の友人に思いを馳せながら、田島は『西の街』に背を向けた。



 〜〜



 ▽長岡



「ただいまああああああああ! パパですよパパですよパパですよ!」

「ぎにゃあああああぁぁあああ!」

 玄関が開くのを見届けて、二日前と同じように明に飛びつく長岡。

 明は長岡が汗まみれであることに気づいて、心底嫌そうに悲鳴をあげた。

 そこに柚子がてってこと現れて、当然巻き込まれる形となる。

「ゆーたん! ゆーたんゆーたん! ゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたんゆーたん、ゆううううたああああぁあんんんぅぅぅうううう!」

「ぎにゃあああああぁあああ!」

 さすがは兄弟。二人とも瓜二つな反応を返しながら、しぶしぶ父からの抱擁とほっぺたスリスリを受け入れる。

 長岡はしばしそれを続けてから、なぜ自分が家に戻ってきたのかを思い出す。

 そして、明と柚子の小さな手をとって、自分の腹へと動かした。

 ペチペチと、明と柚子が父の腹を触る。

「どうだ!? おとーさん、痩せただろ?」

 むむむ、と明が唸って、判決を下す。

「痩せました!」

「痩せました!」と柚子も兄に続いた。

「そうかそうか……うぅ、ぐすんぐすん」

 長岡は二人の様子に晴れ晴れとした表情で頷こうとして、思わず涙をこぼしてしまう。

 その様子を見ていた妻、薫がそういえば、と気付く。

「蒔野さんから連絡あったけど、あなた今忙しいらしいじゃない。うちに戻ってきていいの? あ、もしかしてもう泥棒を捕まえたの?」

 期待の目で夫を見て、その視線を受けた長岡がウッと目をそらす。

 その様子を見て、まさか……とさすがに薫は心配になった。

「おとーさん、お仕事サボってきちゃったの?」

「の?」

 明と柚子のあどけない表情がかえって長岡を攻め立てているようで、長岡の背が小さくなっていく。

「あ、あははは」と愛想笑いを浮かべるほかない。

 その表情で察した明が、「あ、おとーさん、ドロボー逃したんだ。だっさーい」

 続いて柚子が「だっさーい」

 長岡は浮かんだ汗に冷えたものを混じらせて、衝撃を受ける。

 そして最期には明の、「おとーさん、しっかりしてよ」という言葉に打ちのめされて再び家を飛び出した。

 せめてシャワーで汗でも、と提案しかけた薫は、相変わらず呑気だった。



 〜〜



 ◎▽田島・長岡



 田島が街を離れようと急いでいたら、正面から顔色を少し悪くした長岡が現れた。

 汗もさっきよりかいているし、一体この数時間で何があったんだ、と田島が戸惑っていると、長岡が言う。「やっと、ゼェ、見つけたぞ。ハァ。田島ァ」

 そして、「今度こそ、絶対捕まえてやるよ!」と勢いのままに飛びかかってきた長岡を、

「うわっ」

 と躱して、田島は走りだす。

「待ちやがれええええええぇええ!」

「なんでそんなに元気なんだよ! どっから湧いてきたんだ!」

 すっかり夜になった街に、はた迷惑な叫びが響く。

 この原因が大の大人二人だとは住人たちも気付けないだろう。

 そのまま二人は走り去る。

 鬼ごっこはまだ終わらない。

『対になる超能力者同士は、惹かれ合う』

 本当かもな、と田島が笑った。



 〜了〜


 ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。

 悪い点がどんどん見えてきて、楽しめる作品になったとは自分自身胸を張れない状態ですが、ひとまず目標であった完結を達成できたことを喜びたいと思います。

 間にはいろいろと不満はありますが、終わり方は大体当初の予定通りで、私の好きな終わり方です。

 これからも、自分の作品の中に自分の好きな部分を増やしていきたいと思います。頑張ります。


 活動報告で、簡単にこの作品に対する思いや次作の話などを近々する予定なので、気になる人は見ていただければと思います。

 ありがとうございました。

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