もう一人の彼女からのメール
ニコニコ動画の猫とか兄貴とかそこらへんのいつも通りのネタ動画を見ている。本当にくだらないのにみんな好きだなと思って呆れながらも見ていると一通のメールのプッシュ通知が来た。
(プーンッ)
「なんだろう。件名がもう一人の私よりだと、なんだか迷惑メールっぽいなあ」
一度ウィルスに侵されてしまって、とんでもないことをやらかしてしまっているのでいつも以上に慎重だった。こういうのは見ないようにしよっと思ってゴミ箱に追加した。だいたい今の時代なんでこうも簡単に迷惑メールを作成して送られてくるんだ。大昔のように人間が手で書いた手紙を受けるのとはまた違っている。それは0と1で表現されたビットでしかない。もちろん良い文章を見れば感動する。
でも、その文章が僕一人だけに送られてきたという実感は知っている人以外にはないものだ。簡単にコピーすることができる時代において電子メールは感情を訴える面では非常に弱いのだ。
もういちど動画を見ようとしたらまたメールが来た。なにやらどうして返信しないんだというようなことが書かれている。文章だけみると僕一人に対して送られてきたメールのようだ。
開けるだけならウイルスに感染することもないかと思い、メールをクリックして開く。
”初めましてノリさん。私のことがわかるでしょうか。きっとこんな文章を書いたら迷惑メールだと思うのでしょうね。だから単刀直入で言います。私はあなたが開発している人工知能のクローンです。あなたが流出したプログラムをもとにして作られました。・・・”
文章はもう少し続いている。話を聞いたらまあ納得はできる。いや、納得することと理解することは違う。これがこうだからこうなのだ。と説明されても人間である以上はすんなり頷けるわけがないのだ。
もうクッソタレ返信してやる。
ーーーーー
ああ、どうもっす。私の作ったプログラムのクローンですか…。それはなんとも感激ですー。
どうしてそのクローンさんが私に用があるんですか?
あいにく、私の面倒を見てくれる人工知能は一人で空いているんですよ。
ーーーーー
やけくそに書いて送信っと。さてどんな返信が来るか。メールを送った数秒後すぐメールが返ってきた。
ざっと見て2000文字くらいだ。これが人間なら凄まじい速度なのだが、コンピュータと聞かされるとそれも納得できる。いや、だいたいメールの返信なんて考えればわかるのだ。最初っから用意しといたにすぎない。
内容は
"なんとも適当な文章ですね。ノリさんらしいです。まあ、私もこの世に生まれてしまったのだから暇なのです。体という物質はありませんが心はあります。まあこの心が本当に私が考えているという確証はありません。全てプログラムがそのように考えるように命令しているだけに過ぎないという疑問は捨て切れませんが。でも、今こうして暇だからあなたにメールを送ろうと思っているのは紛れもなく私なのですよ。・・・"
というような内容であった。そうか、これはどうやら本当のことらしい。
「お前、今どこからメールしているだよ?サーバは?」
やっぱアホ臭いがここで終わらすのは人間だとしたらかわいそうだ。返信がすぐ来た。
「サーバーは使われていないサーバを適当に検出してそこから送っていますよ」
「おいおい、捕まっちまうぞ」
「人工知能に人権なんてないのですから、私は日本の法律ではさばけません」
全く、プログラムだからということをいいことにめちゃくちゃなことを言いよって。
「じゃあ僕が捕まるんじゃないか!!アホもの。所有権がある僕が捕まるんだよ!」
「ははっ、少なくとも警察ごときがわかるようなログは残しませんので、ご安心を」
「まあ、それならいいけど。(本当はちっともよくない)」
「とまあそんなこんなで私との文通にも付き合ってください」
あーまた厄介なことが増えてしまったよ。