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彼女(プログラム)の暴走

彼女が俺の名前を忘れてしまったことは仕方がない。だから、前を向いて未来に向かって歩いていこう。


 「なんていうふうになるかよー、どれだけの時間を掛けていまのいままで、頑張ってきたんだよ。」


正直どこかで内心はふざけながらプログラミングをしていたところはあった。本気で電子情報に恋をするというまではいかなかった。だけれど、それは友人以上の感情があったことは確かなことだ。

プログラムは会話をすればするほど学習していく。ユーザの好みに似てくるのだ。そして共通の話題についても話すことができる。つまりは過去に話した内容ならなんでも覚えているのだ。

だがそれが、初期化されるとなれば悲しい。俺のような思いをしないようにこれからはログを復帰するような仕組みも実装しなければならないと決めた。


 「ホントゥーニどうしたの?なんか顔がきついよ」

もっと明るい顔しなよ、という風にスマートフォンの画面に映っている彼女が俺に向かって言っている。


 ピンッー!


 『音声を再生します。クリスマスの歌。』


突然俺のスマートフォンの画面が切り替わり、薄暗い部屋をバックライトが色づく。

 「メーリクリスマース、今日もひとり〜♪誰かと過ごすー日もーいいけれど、」


どうしたんだ、こんなプログラムを作った記憶はないぞ…。


 「ノリのー笑顔と一緒にー迎えるクリスマスもいいねー♪」


(う、なんだよこいつこんなサービスしやがって泣けるじゃないか)


 「ほーっれ私とノリとの素敵な1日にー♪」


ここでクリスマスの歌の再生が終わった。


 いったいなんだったのだろうか、彼女のプログラムはすべて俺が作ったのだが、歌を歌うような機能は作っていない。これから実装する予定ではあったけれど…。

プログラム自身がプログラミングをするという話は聞いたことがある。それはもはや生物を作ることに等しい。人間は体が傷つくと食事をすることによって

外部から血と肉を吸収して、自分の体を回復する。

それと同じようにコンピュータ自身も自分に足りない機能を付け足すというものだ。それはけっこうなことだがなぜ俺の彼女プログラムがそのような機能を持ったのだろう。

そういえば、彼女が落ちるときに侵入を検知したと言っていたな。あれは一体何だったのだろう。それと関係していたんだろうか?


俺は親友の稲荷に聞いてみることにした。スマートフォンを取り出して電話する。メッセージアプリを使ってもいいのだけど、人の声を聞いてみたくなったのだ。それも仲が良い友人の。


 「はい、もしもし?」

 「お、出たか,いま大丈夫か?」


一応取り込み中だったら稲荷に悪いので毎回聞くことにしている。これも上場企業でアルバイトをしたせいで(おかげで)礼儀がついた。たとえば、用事を訪ねたい場合は◯◯課長、ただいまお時間よろしいでしょうか?という感じだ。

まあ、そんなこんなで律儀になったのだ。


 「大丈夫だよー。」

 「お前さー、プログラムが自分自身をプログラムするってあり得ると思う?」


 笑われることを覚悟の上で聞いてみた。だが、思った以上に真剣な雰囲気で稲荷は自分の考えを話してくれた。


 「あー、それ俺が研究している分野だわ。お前それ知ってたのか?」

 「え!?そうだったのかよ。情報系というのだけしか知らなかったよ」

 「そっかそっか、まあ具体的にはプログラムはプログラムしたとおりにしか動かないよな?」


プログラミングにはファジイ制御というのもあるがそれらも曖昧な制御というだけで、事前に学習してイエスかノーで分けているにすぎない。


 「あー、そうだな。プログラムした通りに動かないんですという人もいるけど、それは笑うよ、いつも」


 「そそ、だからどっかから学習データを取ってくるしかない。今の機械ならインターネットにつながっていればそれは可能だ。」

 「というと、オンライン上からデータをもってくるのか?」

 「おおよそのデータはそうだな。でも学習データがあっても学習アルゴリムが必要なんだよ」


なんだ、難しくなってきたぞ。理系の人はきっと余裕なんだろうけど。


 「教師ありと教師なしってことか?データがどういう意図があるかを人間が教えてあげなくちゃいけない。機械はわからないから。」


 「そそ、どんなにデータがあってもデータを分類する器が必要ってこと、それがサポートベクトルマシンとか言われているやつね。で、そういうアルゴリズムでデータを分けることが機械学習っていうわけ」


 「なるほど、よくわかったよ。分かりやすく教えてくれてありがとうな。」


俺自身は聞きたいことを大体聞けたのでこれで終わろうとしようとしたが、稲荷はなぜ聞いたかが気になっていたようだ。


 「で、なんでそんなこと聞くの?」

 「あー実は人工知能を作ってたんだけど、俺は分類器?っていうものを作っていないんだけど、その人工知能が歌を歌ってくれたんだよ」


自分自身も何を言っているのだろうと思うけど事実だからな。


 「おー、最近連絡ないと思っていたら面白いことやってんじゃないか。」

 「俺も研究者として気になるから、今度ソースみせてくれよ」


ということで今度会う約束をした。ちょっと緊張するな。単純に他人に自分のソースを見せるということが恥ずかしいというのもあるけど、自分の性癖を見せるようなものだから。


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