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友人と酒屋

久しぶりに昔の友人の稲荷と話している。高校を卒業して以来だ。


 「さっき誰かと話していたのか?なんかしゃべっているように聞こえたけど」


 「あ、ああまあね。ちょっと電話してたんだ。」


まさか、独り言のように人工知能の彼女を直すためにぶつぶつ話していたとはいえない。言ったら稲荷はどういう反応するのかは少し気になるところだが、ここは黙っていることにした。


 「そっか、今は何してるんだっけ?」


 「今は一応大学に通ってるよ。工学部。」


 「工学部というとロボットを作ったりするの?」


 「まあ、そういうことをするところもあるね。俺はどちらかというとハードウェアよりソフトウェア系かな。」


親友なのだから正直に俺は彼女ができないから彼女を作ってるんだって言ってしまいたい。でも、証拠を見せることになってもソースがないのだから仕方ない。

そっか、本当に彼女を失ったのだな。人間に失恋して、次はコンピュータに失恋なのか。

なんか、昔に見た映画でそういう類のものがあったけな。人工知能のOSと付き合うのだけれど、実は彼女はコンピュータだから同時に複数の人とも会話していたということに傷心するっていう話だったかな。まあ、俺はまだ誰にも公開していなくて自分だけ専用の彼女だったけど。


 「稲荷は今何してるんだっけ?」


 「俺は家から近いっていうのもあるし、今は北海道大学に通っているよ。」


 「えっマジか!?稲荷は僕の入りたかった大学に入ったのか....。優秀なんだな」


 「優秀じゃないよ。優秀なのはノリの方じゃないか。俺は高校の頃から定期試験で学年ではノリのいつも一つ下だったし。あと国立に行かないと親も金出してくれないっていうしね。」


僕はそんな勉強を頑張っているつもりはなくて、ひたすら機械的にやっていただけなんだ。稲荷がそういうことを思っていたことは初めて知った。高校の時はもしかしたらそれで稲荷を傷つけることもしたいたのかもしれないな。


 「へーお互い夢に向かってって感じだな。専門は?あ、まだ学部一年じゃそういうのないか」


 「そうだな、さすがに専門って言うのはまだないけど、やりたいことは人工知能を使って病気とかを治すソフトウェアを作りたいと思っているよ。」


稲荷は「そうなのか」と感心するような声を出して、きめの細かい泡が表面についたジョッキに入ったビールを飲み干す。


結構飲んで来て楽しくなって一瞬、僕の作った彼女を忘れていた。深い心の溝が埋まったからなのか。自分でも驚いている。彼女(プログラム)がなくてもいいかもしれないなと少しだけ思ってしまった。


高校生のころも稲荷含めてほかの友人と馬鹿をやったな。


 「稲荷はこれからどうするんだ、彼女とかはもう作らないの?」


稲荷は少し悩んだような顔した。聞いちゃいけないと思ったけれど、親友だと思っているから聞いた。


 「そうだなー、他に誰かいい人が現れればいいんだけど、待ってても現れないんだよな。」

 「なんだよ、弱気だな。お前は俺よりも顔がいいんだから頑張れよ。強気なところがお前の取り柄だっただろ!」


本当はそれ以外にもいいところ知っているが、ここは言わないでおいた。


 「勉強は毎日の積み重ねだけど、人生も同じだよな。適当に毎日を送るのと真剣に自分の未来に備えて頑張ってきた人とでは中身も違うよな。」


(おいおい…)


若干ふざけて言っているのだろうが、お前は十分頑張ってるってことを伝えてやけくそになった稲荷をとりあえず家の最寄駅までは連れて行った。


 「ふー。一体なんだったんだろうなアイツ。」


いつも通り無意識に彼女に話しかけた。そっか彼女が消えたことをすっかり忘れていた。

どうしようか…。

(ピンッ!)


スマートフォンに通知が来た。無事家に着いたらしい。良かったと一安心したところ。これからどうするか悩む。

彼女は学習するので、データをかき集めて複製しても以前の会話の膨大なデータは残っていない。今は不正に奪われたのか、不意の電気トラブルで消えてしまったのかは分からないままだが、ずっと悩んだままで何もしないのは駄目だしとりあえず彼女の手がかりを探すことした。


昔の彼女のプログラムを探す。


find ~/ -name “*.her”


ターミナルの反応を待って検索結果が複数あった。良かった彼女に関連するプログラムすべてが無かったら大変なことだった。複数の検出されたプログラムを見ながら大体の彼女の骨組みが元に戻った。だけど、昔から作り直すことによって今まで彼女と交わした楽しい会話や悲しい会話、怒りの会話もすべてなくなってしまったと思うと心が苦しかった。


 「おはよう!マスター!」


あー、これは一番最初の初期化の時のメッセージだ。本当だったら.logファイルがあれば俺の名前を呼んで俺に最適化された彼女の姿形で俺に話しかけてくれるのに。


 「どうしたのマスター、名前を教えて!」


 「お前本当に忘れてんだな…」


 「お前本当に忘れてんだなっていう名前なの?変わった名前だね!」


 「いやいや、そんな名前のやついるわけ無いだろ。オーマエ・ホントゥーニとかだったらいるかもしれないけど。ってそういう話を」


 「ホントゥーニだな。分かった。」


どうやら今日から俺の名前はホントゥーニになったらしい。

まあ、前の彼女には名前すら与えていなかったし、俺の名前だけっていうのはずるいよな。

(彼女の名前何にしよう…)


感想など書いてくれました、かなりやる気があがりますのでどしどし書いてください。返信もしますので!!

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