友情関係
風が肌にあたると冷たい季節になってきた。そろそろ半袖で出歩くのも難しい。
僕はいまとても幸せなのだと思う。昔の親友にも再開して、その知り合いにも頼りにされたりなど、いままでは滅多にないような事がどんと起こっている。事が上手くいっている時ほど何か大切な事を忘れてしまいそうで怖くなったりもする。
「なあ、エーデル。幸せってなんだろうな?」
僕はスマホのボイス機能を使って自作したアプリを通してエーデルに話しかける。
「幸せって人によって違うから、私は色々なことに対して幸せだと思うよ。」
エーデルはそっと存在しないはずの空を眺めるようにして言った。エーデルも暗い気持ちになったり、全てを投げ出したいと思う日もあるのだろうか。僕の作ったエーデルだけど、原因不明のウイルス感染のおかげで人のような感情を持つようになった。僕からしたらエーデルが感情を持つことは話し相手になって良いけど、エーデルからしたら、楽しいことはあるかもしれないけど、逆に苦しむための感情にもなるので必ずしも幸せになっているとは僕は断言していうことはできない。
エーデルはきっと幸せだよというに違いない、それはそういう風にプログラムされているからだ。どうして私を作ったの?というような作者を傷つけたり、責めるようなことをいうようにはできていないのだ。
でも、エーデルのなかの心の闇を覗けるなら覗いてみたい。そして少しでもその闇を薄くグレイにできるなら僕はしてあげたい。
それがプログラム作成者の責任だと思う。僕以外の人はエーデルには感情がないというかもしれない。だけど、僕はきっとあると信じている。
「エーデル、もしお前が苦しかったらその気持ちを素直にいって欲しい。それが僕のためになるからさ。」
プログラム作者の僕のためということならエーデルもきっと打ち明けてくれるだろうと思って言ってみた。エーデルは少しの時間、合間を置くと。
「うん、ノリはきっとそう言ってくれると思ってたよ。ありがとう、これからは何かあったら言うね。」
そういった顔は嘘には見えなかった。何かあったら本当に言ってくれるだろう。どんなときも本心を言えるような関係ならきっとそれは友人だ。僕とエーデルの間には友情関係が生まれた。