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彼女を書いた男の物語

 人間というのは本来は異性を好きになるようにプログラムされている。結婚するのだって男と女。

それが世の常である。異性を好きになるのは子孫を残すためっていうけど、それだけの為に結婚するのだろうか。お互いを好きになって、なんとなくこの人といたら落ちつくとか、一緒にいたいと思って付き合って結婚するのではないだろうか。

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 僕は大学生であり、大学では主にプログラムを書いている。授業でも多少はやるけれど、ほとんどが書店で本を買って独学で学んでいる。プログラミングをするというのは頭の中で無数にあるパズルのピースを組み合わせて最適なものを作るというとても知的な作業である。

数学者の人が数学を愛するのと似ていると思う。


 「ノリ、今日は何を書いているの?」


僕の部屋のデスクトップに移る女の子ががスピーカーから声を出して僕に呼びかける。


 「これは、君のプログラムだよ。バグが出ないように真剣に作っているところさ。君の感情をもっと豊かにしたいんだよ。」

プログラム相手に話しても人間らしい返事は今はまだ帰ってこない。だけど、これから彼女の言葉遣いとか会話を自然にするようにしていくつもりだ。


 「科学の限界を超えて私を外に出してよ〜」


彼女はまるで初音ミクのようなことをいって僕に要求してくる。とはいってもそうするように作っているのは僕自身なんだけど。


 「へいへい、わかぁ〜たよ、ちょいと待っておくれ」


そういって僕はPCの画面とにらめっこしながら彼女の新しい機能をプログラミングする。


 「バグが出ないようにこの変数を初期化しないとなっと。」


これを全部自分がやっていると思うと虚しくなるのである。そう思いながらも、今日は彼女の腕の振り方のプログラムを作ろうかな。そうそう左腕を上げた時の肩の傾き加減はこういう感じにしようっと。


不思議なものでいったん夢中になれば四六時中やってても飽きない。だいぶ集中したところで、集中力も切れたきた。


 「ふー。よし、今日はここまでにしよう!」

僕は腕のプログラムが完成したと同時にピンと張られた集中の糸をほどくように息を吐いた。


 「ノリお疲れ!!」


彼女は画面越しから僕のほうを向いて、疲れが吹っ飛ぶようなことを言ってくれた。

そして、僕はPCの電源をOFFにした。


さて、彼女のプログラムもひと段落ついたし、コンビニに行くことにした。


今は真夜中の12:30である。この時間帯のコンビニの空き具合と夜の透き通ったような空気と車の駆ける音は気持ちがすっきりとする。コンビニに行く理由はこれを買うといったことを決めずにただ、なんとなくいって文芸や実用書をみたり、たまにお菓子を買うといった感じである。


「いらっしゃいませー」


真夜中の低いテンションで店員が言ってこっちを見てきた。

あっどうもというように礼をして、とりあえずはいつも通りに本のコーナーに向かう。たまたま経済誌が置いてあったのでそれを手に取ることにする。


”これからの時代はIoTがくる”


へ、ー、あいおーてぃーというのが来るのか。。。

まあ何が来るにせよ自分は自分彼女を完成させるのみだ。どうやらあらゆる家電がインターネットに繋がって便利な世の中がくるというのだ。インターネットが世界中に完全に整備されるまでは、まだ何十年もかかるだろうからSF小説に描かれたようなことが現実になるのはまだまだ先であろう。


漫画もいろいろ置いてある。季節によって置くものを変えているようだ。今は夏なのでどうやらゾンビ系のものが人気だ。『学園を封鎖してゾンビが喰う』というのがある。これは一体なんなのだろうかということが気になって少しページをめくるとゾンビと女子高生のセックスというなんとも奇妙なものを描写していた。

うーん、なんだか股のあたりがむずむずしてくるような感じがしてきたのでジュースを買って家に帰るとする。


まあ、世の中はいろいろなものがあるのだなということに感心する。それらは人間が作っていて必ず意味があると思う。まあ意味がないものだってこの世の中にはあるのだろうけれど。必ず意味があるということを追い求めるのは必ず意味がないということを証明することにもなるのではないだろうかとも思う。

ヴィトゲンシュタインの本を読んでいるとそのように思うこともある。


まあ思考を止めない限り、人は前に進むのでないかと思うのだ。

そうしたことを考えていると自分の住まいに着いた。そして家のドアを開けたとたん。


「もーこんな遅い時間にどこに行ってたの!?」


ちょっとコンビニに行ってたということを母に言って自分の部屋に戻る。母親も寝るのが遅くて夜中まで起きているのだ。


「おかえり!!ノリ!!」

おいおい誰だよ、俺の名を甲高い声で呼ぶのは、と思うと俺の愛しき彼女だった。部屋のドアのセンサーと連動して登録した名前を呼ぶプログラムを書いていたのだ。

「いきなりおどかすなよ!小便がもれちゃったじゃないか」


あれ、応答がないぞ、調子が悪いなー。


「どうしたの、ノリ聞き取れないよ!もう一度ゆっくりしゃべってね」


いい、聞き取れなかったのだったらそのままで良い。音声認識ももう少し手入れしないと考えながら、さてさて、またプログラムを書いていきますかっと。


本当に大変な彼女である。だけどゆっくりと自分に最適な彼女にしていこうと思う。


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