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パーティから半年が過ぎて彼女はどうなったのか

続編希望があんなにあると思いませんでした。本当にありがとうございます。

前作を書いた際には、続編なんて一切考えていなかった為、書くのに時間がかかりました。









「はぁ…」


机の上に山積みになっている書類を片付けながら、レイナ・キッセイは思わず、ため息をついた。

あの、ロクシード貴族学校を出るとそのまま、シュワルツに連れられてあっというまにシフカーへ。

シフカーにつくとすぐに養子縁組がなされ、宰相を務めるキッセイ公爵の養子となった。

このキッセイ公爵、夢は老後を娘に介助してもらうことと公言するほどの者なのだが、出来る子供出来る子供全て男という黒一色の家系だった。そんなところで、シュワルツが話を振ると、この際、血がつながらなくても娘ができるのならと、キッセイ公爵は、喜んでレイナを迎え入れた。

そして、レイナの才を知ると、宰相しても喜びの声を上げ、喜々として、レイナを文官として働けるよう場を整えた。


「あら、レイナさん、ため息などついてどうしたの?」


「ッ!? エリスさま、いらしたんですか!?」


誰もいないと油断していたら、いつの間にか、シュワルツの第一妃・エリスがいた。

公務の際、シュワルツの隣に寄り添い、慈愛に満ちた笑みで、人々の心を癒すその姿から、女神が王子に嫁いだのではないかとさえ言われている美女だ。


「ええ、扉が開いていたので、不用心だなぁっと思いまして中を覗くとため息をついているレイナさんが見えたのでつい声をかけたの」


悪戯っぽく微笑むエリスにレイナは「そうですか」としか、答えられなかった。







「あの、なんで、私はエリスさまとお茶をしているのでしょうか?」


「わたくしがお誘いして、レイナさんがOKしたからよ」


「えっと、私、まだ仕事が残っているので、そんなに長い出来ないんですが…」


「大丈夫♪ 大丈夫♪」


ニコニコとしているエリスを見て、このほほ笑みには勝てないとレイナは、諦めた。


「レイナさんも早くシュワルツと結婚すればいいのに…」


「ふぇ!? シュワルツさまと結婚!?」


何の前置きもなく告げられた言葉に、レイナは思わず立ち上がってしまった。

この国に来て生活するようになってから、王子の婚約者として築き上げてきた淑女としての仮面が、ボロボロとはがされている気がする。


「あら? てっきり、わたくしは、シュワルツがレイナさんを妻の一人に迎える為に連れてきたとばかり思っていたのだけど」


「ち、違います。シュワルツさまは、私が有能だと判断したからだとおっしゃっていました!」


「ええ、だから、妻として迎えようと思っているのよ。きっと」


「え?」


レイナはエリスの言わんとしていることが良くわからなかった。

レイナの生まれ育ったロクシードは、一夫一妻を法で定め、婚約者や夫婦以外の異性に気をやるのは恥だとしている国だったのに対し、今住んでいるシフカーは重婚を認めており、むしろ推奨している国だ。


「ロクシードからきたレイナさんには、わかり難いかもしれないけど、シフカーでは夫を妻が支えるのなの」


「それは、当然じゃないんですか?」


ロクシードでも妻が夫を支えるという考えは普通にあった。


「アレを見て」


エリスが指す方を見ると、シフカーの騎士たちが整列している姿が見えた。その前に立つのは、白銀の鎧を纏ったこの国の第一王子であり、先ほどから、何度も名前が挙がっているシュワルツだった。その隣には、燃えるような赤い鎧を纏った美女が仕えていた。


「シュワルツさまと、ミレイユさま?」


赤い鎧を纏った女性こそシュワルツの第二妃であるミレイユだった。

騎士団でも並の騎士では、歯が立たないといわれるほどの剣の腕を持ち、戦場では、的確な指揮を執り、自分を勝利に導く姿から、勝利の女神とさえ呼ばれている美女だ。


「私が、公の場でシュワルツを支える妻であるように、彼女も軍務の場で彼を支える妻なの。

この国での支えるとは、夫を自らの得意分野でそれぞれ支えるということ。

あなたは、政務に明るいでしょう? 実際に文官としての仕事もちゃんとできていると聞いているし。

だから、シュワルツはあなたを政務で支えてくれる妻に、と思っているのではないかしら」


「……」


「これを見て」


そう言って右手を上げ中指にしている指輪を見せた。黄色い六角形石がついていた。


「この指輪、シュワルツの付けている指輪に合わせられるようにできていて夫の指輪と妻たちの指輪を合わせると、花の形になるの。

この国の王は、最低五人の妻をとるの。

公務、軍務、政務の仕事を支える妻。

子が生まれた時に育児をする妻。

そして最後に、閨の調整をする妻。

合計で五人」


「閨の調整って……

それに育児なら、乳母を雇えば…」


「あら? この二つは特に重要よ。

閨の調整っていうのはね、子が出来やすい最高のタイミングで閨が出来るようにしたり、優劣がつかないようにしたりと、夫婦間や妻同士の仲を取り持たなければ狩らない重要な立場なの。昔そのことで、妻同士の間で血で血を洗う闘争があったそうだから。

育児もそう、仕事を支える妻たちが、安心して仕事に打ち込めるためにも気心しれた相手に預けるのが一番。育児に関しては、昔は黒い物があったらしいけど、今はそういうのもないし。

今のシュワルツの妻は政務の妻以外全員が揃っているわ」


そう言ってにっこりと笑うエリスは、レイナに妻になりましょうと誘う。


「…でも」


「まだ、リオス王子の事が忘れられない?」


「……」


返事をすることが出来なかった。自分の半生は、自分を全く見てくれなかった元婚約者の為にあったといってもいい。その呪縛から離れたとはいえ、すぐに他の人を想うのは、今までを否定するような気がしたし、ロクシードで育ったレイナには、重婚というものに抵抗があった。


「すぐに答えを出す必要はないわ。ゆっくりと考えて、自分の心に整理をつけて、その上で、答えを出すといいわ。

その答えがどんなものであっても、シュワルツも、わたくしも、誰も、あなたを悪くは言いません。

まぁ、わたくしの願いとしては、あなたと一緒にシュワルツの隣に立ちたいと思うのだけどね」


そこからエリスは、先ほどまでとはまるで関係のない他愛もない話をレイナに面白可笑しく話し、レイナが見あたらず、探していたキッセイ公爵が現れるまでお茶会は続いた。






前作の感想で、クラリスのセリフの無さについて指摘がありましたが、書いた当初は、めちゃくちゃしゃべっていたんですが、グレンが出てくるまでに前作の総合文字数の3倍近くかかり、元々短編にするつもりだったので、長すぎるのはまずいと頭を悩ませていました。

そこでふと、なんでこんなに長いのかを読み返してみると、クラリスに関係する部分がグダグダと長ったらしくなっていたことに気付き、だったら、クラリスのセリフ全部切っちまえっと思い、クラリスには一切しゃべらせるのを止めました。

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