アイドルの秘密と四季
盛大な歓声の上がる、ライブ会場。
ステージには、4色の衣装をそれぞれ纏った4人の美少女達。
今年でデビュー3年を迎える4人組アイドル"seasons"。
メンバーの名前が、さくら.ひまわり.もみじ.つばきなので、四季"seasons"。
そしてメンバーも、個々の名前に合った雰囲気を持っていた。
「みんな〜、今日はっ、ありがとー!」
おっとりふわふわ、黒のロングヘアを揺らす春のさくら。
そのさくらの声に応えるかのように、会場は更なる熱気に包まれる。
「またくるからなー!待っててなぁ〜!!」
元気で活発、茶色のショートヘアが目印の夏のひまわり。
その男勝りな振る舞いも、彼女の魅力のひとつである。
「すっご〜く楽しかった?みんなー大好きだよー??」
さくらのふわふわ、ひまわりの元気を兼ね備えている、茶色のボブカット秋のもみじ。それが…私だ。
「…また会う日まで。」
右手をスッと挙げるクールな黒のミディアムヘア、冬のつばき。
他の3人のまとめ役のリーダーなため、ライブの時でも至って冷静だ。
それぞれ軽い挨拶をして、4人はステージを後にする。
ステージ裏の長い廊下には、会場のスタッフやイベント関係者達が、左右に連なっていた。
「お疲れ様で〜す!!」
「最終日、お疲れ様でしたぁ!!」
今日はseasonsのライブツアー最終日ということもあり、スタッフ達は次々と花束を渡してくる。
「うわぁ〜?桜に向日葵、椿の花もあるよ!!」
季節感ガン無視の花束を受け取ったさくらが、満面の笑みを浮かべた。
「ごめんなさいねぇ。さすがに"もみじ"は用意でなかなくてね…あはは。」
私の事を見ながら、バツの悪そうな表情をするスタッフ。
でもころもいつものことなので、私はいつも通りの営業スマイルで、軽く左手を左右に振った。
「まぁ、葉っぱですもんね。気にしないでくださ〜い。」
初夏のこの時期に、桜や椿が用意できたなら、もみじくらいも用意できるのでは?
てゆーか…花束とか嬉しくないし。
4人全員で手を振りながら、"seasons"と書いてある控え室に入っていく。
扉が閉まり外の喧騒が聞こえなくなった瞬間、なにかの糸が切れるかのような音が、それぞれが響いた。
「だっあー!くっっそ、あち〜ぃ!!」
「つーか、熱気やっばあ!!」
「今日のライブは会場の収容人数を越えてたんだろ?なんでチケットの販売量増やしたんだって感じだよな〜。」
さくら、ひまわり、つばきの順番に、言いたいことをでかい声でズバズバと言いまくる。
そして"俺"は、トレードマークである茶色のボブのウィッグを外した。
「人気が出てきたんだから、いいことじゃねーか。」
外したウィッグから出てくるのは、少年のような…むしろ"少年そのもの"と言える、ウィッグと同じ髪色の短髪だ。
「それはいいけどさぁー…。」
言いながら、さくらは黒髪ロングのウィッグを外す。
そしてそれに習うかのように、ひまわりとつばきも同じ事をした。
外したウィッグの下から出てきまのはすべて…少年の短い髪だった。
「"男の俺達"には荷が重いっつーか、結構大変じゃね?秋人?」
seasonsの"さくら"こと北城春樹が俺、"もみじ"こと西野秋人の名前を呼んだ。
「そーでもないろ?結構慣れてきたと思うけどな。」
水の入ったペットボトルのキャップを開けて、歌い疲れた喉を潤す。
飲み終えてから室内を見渡すと、"ひまわり"こと南夏弘がスマホをいじり、"つばき"こと東海林冬彦が、メガネを光らせて読書をしていた。
ここまでくれば誰でもわかると思う…4人組美少女アイドルグループ"seasons"のメンバーは全員、"現役男子高校生"なのだ!!