7年という月日
目の前に広がるは優雅な屋敷、綺麗に手入れされている庭園。
小さな虹を見せる噴水。
こんなの日本のどこに行ったって見れないよ。
俺はミーシャに招待されてメアリス家のお屋敷に来ている。
この世界でメアリスというのはすごいらしい
ミーシャの先祖は魔王が現れた際、勇者にお供し、魔王を倒した勇者パーティーの一人らしい。
・・・・魔王って・・・
魔王を倒した勇者はこの国を作り上げ、その仲間であるミーシャの先祖は国の重鎮として国の発展のために働き、その子孫は今もこの国の中心となり働いているらしい。
ちなみに俺の今いる国の国王は勇者の末裔らしい。
しかも黒髪。
勇者ってのはどうやら俺と同じ日本からきたみたいだ。
おれとは事情が違うと思うが・・・
「なにをしているのですか?
早く入りましょう」
ミーシャは俺に屋敷の中に入れと言ってくる。
「「「「「おかえりなさいませ、お嬢さま」」」」」
屋敷の扉を開けた瞬間、大勢の女性の声が聞こえる。
そこにはかつて俺が夢見た世界が広がっていた。
頭に着けたカチューシャに黒い色のエプロンのような服・・
そしてひらひらと揺れるスカート・・・
そこにいたのはメイド服をきた女性だった。
おぉぉぉ!!
やばいテンションが上がってしまう。
メイドさんといえば男の憧れの一つだよ!
しかもみんな超絶美人さんばかり!
日本で見たことのない顔つきをしている。
髪の色もカラフルだ。
黒髪は勇者とその末裔以外はいないらしい
ミーシャは何も言わずに歩いていく。
どうやらこれはミーシャにとって当り前らしい
羨ましいやつめ
俺はミーシャのあとについていく。
俺が前を通るとメイドさんたちは無表情で俺を見てくる。
・・・・なんか恥ずかしい
場違いな感じが半端ないです。
「お帰り、ミーシャ。
我が愛しの娘よ」
俺がメイドさんに気を取られていると、すこし低い男の声が聞こえる
声のする方を見るとミーシャにおっさんが抱きついていた。
どうやらおっさんはミーシャの父親らしい
おっさんも姿は、背が高く、髪は紅色、髭を少し生やしているガタイのいい体をしている
まぁいまの俺からしたらみんな背が高いけどね
「ところで、ミーシャ
その子は?」
おっさんは俺をみてミーシャに聞く。
「はいお父様、このお方は攫われそうになった私を助けてくれたのです。
そのお礼に家に招待しました」
「攫われそうになった?!
大丈夫なのかミーシャ?!!怪我はないか?!」
おっさんはでかい声をだしてミーシャの心配をする
うん、このおっさん親馬鹿だ。
「大丈夫よお父様。このお方が助けてくれたのだから。」
「おぉ!そうか、礼を言うぞ小さき騎士よ。」
おっさんは俺に向かってそう言ってくる。
騎士ってなんよ?
「名前を聞かせてもらえないか?
その身なりをみるからに高貴な生まれであろう?」
名前をきかれてしまった。
なんだろう?
さっきからおっさんの目線は俺の髪をみているようにも思える
「ロイです。えっと・・・生まれはちょっとわかりません」
「わからない?ふむ・・・」
「お父様、ロイはどうやら記憶をなくしているようですの。
その名前も私がつけましたし。」
それを聞いたおっさんの目が大きく広がる
「記憶をなくしている?・・・やはりその髪は・・・」
おっさんはなんかぶつぶつと呟いている。
どうでもいいけどなんだかさっきから眠くて仕方ない・・
俺はこんなに早寝する方じゃなかったんだが
やばい・・・落ちる
目・・が・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やぁひさしぶり。元気だった?」
俺の目の前にはあの時と同じ教室にあの男が教卓の上で胡坐をかいている
「君はなかなか面白い人生を送っているようだね。」
こいつもう会えないとかいってなかったか?
「いやね、そのつもりだったんだけど、君と君の体の具合がいまいちでね
うまく融合してないんだよ。
ごめんね、これは僕のミスだよ。」
いやそんなことはどうでもいいんだよ
どうして俺はこんなところにいるんだ?
また死んだのか?
「死んでないよ?
眠っただけだよ
子供だからね。」
眠ったって・・・
てことは戻れるのか?
「あれあれ?
あの世界のこと気にいちゃった?」
そりゃな・・
面白そうだし
なによりドラゴンとかいるんだぞ!!
そんなのが見たのは初めてだったがすごくかっこよかった
「そうかいそうかい
それは良かったよ。
おっと、そろそろ本題に入ろうか?
僕はこうゆうのは苦手だから勘弁してね」
本題?
「そう、僕がここに来た理由、君がここにいる理由を
とは言っても大したことじゃないけどね。
君の体と精神を融合させるだけだよ
すぐ終わるよ」
なんだ。
そんなことなら早くしてくれ。
あの体は動きにくくて仕方ない。
「普通三歳児があんなに動けるわけないからね。
かなり無理してたんだよ?」
無理って・・・
んなこといわれても・・・
「はい!終わったよ。
じゃぁ今度こそお別れだね。」
またそんなこと言って現れるんじゃないのか?
「今度は本当に最後だよ。
あとは君の人生だ。
好きに生きるといいよ」
そうか
なんだかんだでお前には世話になったな。
あの時死んでいた俺を助けてくれたって言うんだから。
「いいよそんなの。
僕も用があったしね」
用?
「うん、君のおかげで手に入れることができたからいいんだ。
本当にありがとう」
男はそういって笑う。
その笑いは涼しげで・・・しかしどこか狂気をはらんだ感じがする。
「じゃ、ばいばい」
ああ、じゃあな
「あ、言い忘れてたけど、こことあっちの時間の流れは違うからね。」
時間の流れ?
「そう。まぁ戻ったらわかるかな?」
男がその言葉を言い切る前に俺の意識は途絶えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
再び目を覚ますと、俺は知らない場所にいた。
あれ?さっきミーシャの屋敷に来ていたはずなのに・・・
ここはメアリス家の屋敷ではなく、なにかの建物がるみたいだ
「ここは・・・?」
わけがわからない。
そういえばあの男がなにか言っていた気がする。
・・・・・そういえばさっきより目線が高い気がする。
「どうしたのロイ?」
俺は後ろから声をかけられとっさに前に飛び退く。
シュッ!っと音と共に俺はさっきいた場所より数十メートル離れたところに移動する
「キャッ!」
俺に話しかけたのは女の子なようで、その姿を見てみるとどことなくミーシャに似ている気がする。
ミーシャのお姉さんかなにかかな?
「突然どうしたのよもう」
女の子は俺に親しげに話しかけてくる。
・・・・はて?
この子はどこかであっただろうか?
「ちょっと、どうしたのロイ?
顔色が悪いわよ!」
女の子は俺を心配そうに見ている。
俺をロイとよぶということは、やはりミーシャの家族か。
「いえ・・・あの、あなたはだれですか?」
「?、何言ってるの?。私?私はミーシャよ」
その女の子は自分のことをミーシャと名乗った。
「バッ・・・バカな・・・ミーシャは四歳くらいのはず!」
俺が取り乱したように喋ると女の子は
「四歳? 何年前の話をしているの?
私はもう11歳よ?」
11歳?
「変なロイね・・・まぁいいわ。授業が始まっちゃうからはやく行きましょう」
「行くってどこに?」
「どこにって、教室に決まってるじゃない」
教室?
いったい何が起こっているんだ?
突然知らない場所にいて、しかもミーシャが11歳になっているって・・・
11歳ってことはあれから7年くらいたってるよな?
俺は自分の姿を確かめる。
俺の身長はさっきまでとは違い、背が高く。
小学生2年生くらいまである
鏡がないからわからないが、身に覚えのない服を着ている。
・・・・これはいったい
そう考えた瞬間、あの男がいっていたことを思い出す。
『ここと、あっちの時間の流れはちがう』と言っていた気がする。
時間の流れ・・・・
ってことはあれから7年近くたったわけ?
その間の記憶は一切ないのに、ミーシャは俺と話していた。
とゆうことは俺が覚えていないだけでどこかで何年か暮らしていたようだ。
いったいどこで・・・
そういえば体がすごく軽い。
さっきもすこし前に出るだけのつもりだったのにかなり動いていた。
「あれ?ミーシャはどこに行ったの?」
考え事をしていたらミーシャがどこにいるのかわからなくなってしまった。
しかしあれがミーシャとは・・・
すっかり美少女になっていたよ
あれは将来かなりの美人になるね。
地球にいないくらいの。
あぁここの人たちはみんなあっちとは顔がなんか違うんだけどね
ミーシャを探して建物の中に入っていく。
そういえばさっきミーシャは教室と言っていた気がする。
ってことはここは学校か?
ミーシャが11歳ってことは俺は十歳だよな・・・
つーことはここは小学校?
でもなんかでかい人が多いけど・・・
俺は歩きながら教室と思われるところを覗きながらミーシャを探す。
ドンッ!
よそ見して歩いていたせいか俺は誰かとぶつかってしまった。
「すいません」
俺がぶつかった相手は俺よりも大きな体をしている。
高校生くらいなのか170はあるように思える。
そしてなによりその髪の色。
その髪は黒く、カラスの濡れ羽を思い出させるほどだ。
「いってーな。前見て歩け。ガキ」
黒い髪の男は口悪くそういう
俺はつい・・・「日本人?」
と口に出してしまった。
それを聞いた男は目を開き驚いたような顔をする
「なっ!どうしてそれを・・・」
男は驚きを隠せないようで、俺を指さし口をパクパクさせている。
「お前は・・・」
男はなにかを言おうと瞬間、ミーシャの怒鳴り声が聞えた。
「ちょっとロイ!何してるの?はやく教室に行きましょう!
遅刻するわよ」
俺は男に頭をさげてミーシャの元に行く。
男は諦めたのかどこなに歩いて行った。
さっきのは黒髪だった・・・
たしか黒髪は魔王を倒した勇者の末裔にしか現れないって言ってた気がする。
ってことはあれは勇者の末裔か?
「ロイっていつのまに勇者様とお知り合いになったの?」
「勇者様?勇者の末裔じゃなくて?」
俺はミーシャの言い間違いかと思い、聞き直す
「そ、勇者様。魔王を倒すために一年くらい前に召喚されたじゃない?
忘れちゃったの?」
忘れたというか俺は聞いてないけど・・・
いや俺の知らない俺って言うか・・・
あー!もうめんどくさいな
「魔王って前に勇者が倒したんじゃなかったの?
この国を作ったていう人とミーシャの先祖が」
俺が聞くとミーシャは
「うん、そうだったんだけど、また魔王が現れるってお告げがあったんだって」
「お告げ?」
「神の声を聞くギフトっていうやつで聞いたらしいの。
それで今の勇者の子孫では力が足りないってことで勇者が召喚されたの。
私も勇者様が魔王を倒しに行くときにいかなきゃいけないんだけどね」
ミーシャが魔王を倒しに?
「どうして?」
「私の受け継いだ継承魔法を使って、勇者の手助けをしろって・・・」
「手助けっていたってミーシャはまだ11歳だよ?」
「関係ないよ。お姫さまも私と同い年だけど、同行するって話だから。
それに勇者様は強いから安心だよ。」
強いね・・・
「まだ魔王が復活していないからそれまでは学校に行って、魔法の勉強をしろって言われてるから、
勇者様はお姫様の護衛だって。」
ミーシャは羨ましそうにそういう
「へ~、じゃぁ俺は何しにここに来てるの?」
「何しにって・・・ロイは私の騎士でしょ?
私の護衛に決まってるじゃない!」
ミーシャはすこし怒ったように言う
「護衛って・・・アスラさんはどうしたの?」
「アスラはあなたに剣を教えた後、お父様の方についていったじゃないの」
そうなの?
俺って剣を習ったんだ・・・
なんも覚えてないんだけど・・・
「じゃ、はやく行きましょう」
「護衛って俺は何をしたらいいの?」
「私の後ろにたっていればいいのよ。
あまり私に恥をかかせることはしないでね?」
「わかった。」
俺とミーシャは教室の中に入っていく。
いつのまにか数年たっており、今の状況についていけないが、ちょっとずつ理解していこうと思う。
魔王とかと戦えってのは嫌だけどね。
とりあえず今は、ミーシャにいろいろ教えてもらおう