プロローグと名のつく災難の始まり
突発的に書きはじめたこの物語。
先の作品も完結していないというのに。
……大丈夫かな?
最終改訂7/15
「で、今回はどうしてこうなったんだ?」
すぐ隣で外を窺う幼馴染に、半分嫌味も込めて言ってやった。
本当は聞かなくてもわかっている。
今回は一緒にいたからだ。いや、今回も、と言うべきだろう。
だが今回に限っては何時に無い状況に陥った。
現在の状況。
その名の通り、崖っぷち。
「だってこんな事になるとは思ってもなかったんだから、しょうがないじゃない」
そう言って、彼女はくじいた足を指差す。
いつものように通行途中に悪党を発見したためみーちゃんが鉄拳制裁を下そうとしたのだが、今回に限って予想外な出来事が起こった。あまりにもありえないことに、みーちゃんは木の根っこに足を取られ足をくじいたのだ。
いつもの事なら彼女が一瞬にして相手を伸して終わりなのだが、今回に限って何故かうっかり足をくじいてしまった。
そのため現在、二人して必死に逃げ回っている状態なのである。
本当にお互いこのトラブル体質には困りものだ。
正確に言えば、幼馴染のトラブル回収体質、とでも言うのだろうか。そしてそれに巻き込まれるオレ、という図式だ。
こんな非日常のような出来事が、オレ達の日常茶飯事な出来事になっている。
自己紹介が遅れた。
オレは新宮 真。
幼馴染の無茶と無謀と陰謀とトラブルに、常に巻き込まれる側(ここ重要)のただの無害な一般人だ。
少しつり上がり気味の目つきだが、よくかわいいと評される。その最たる理由が、身長四捨五入でギリギリ150センチ(切捨て140センチ)。微妙なお年頃のただの少年です。
隣で辺りの気配を探っている普通と少し違うのが、幼馴染のみーちゃんこと坂崎 美夜。
しっとりとした長い黒髪を持つ、大変整った外見を持つ身長168センチ(羨ましい限りだ)の一応女性である。
そんな完璧に近い外見を持っているみーちゃんだが、一つだけ欠点が。その……あの、非常に言いにくいんだが、言った場合みーちゃんに物理的に地獄を見せられる可能性があるので非常に遠まわしに言わせてもらいますが……(限りなく小声で)控えめな胸、でしょうか。
優美な外見に反して中身が猛獣と有名な剣の使い手である。何処かの道場で修業を積んだとかで、腕前はともかく規格外。そして何故かよく勝負を挑まれたりしている。
いっこ年上なのだが、オレとは何故かいつも一緒に行動を共にしている。そのせいか腐れ縁、と周りからはよく言われている。
いるのだが、一つ誤解しないで貰いたい。
決して!決してだっ!!オレ達は付き合っているわけではないっっ!!!
どうもよく周囲に誤解されるからはっきり言っておきたいのだが、オレはこんな凶暴な彼女は欲しくない。理想は楚々とした家庭的なほんわかとした女性が理想である。
逆にみーちゃんに聞いても違う、とはっきり言われるだろう。みーちゃんの理想は遥か高くとてつもないものだから。聞いた時、思わずそんなのいないだろ、って突っ込んだら殴られたけど。
ここで一つ断っておきたい事がある。
何故男のオレではなく彼女が相手に立ち向かうのか、ということだ。
男のプライドにかけて一言言わせてもらいたい。
オレも一応それなりに腕っ節には自信がある。というか、そうならざる状況が出来上がっていたから結果的にそうなった、と言えるんだが……。
話がそれた。
そんなオレでも彼女にはまったく敵わない。というか、ここいら一帯の人間で彼女に敵う人間は誰一人としていない。最強であり最凶最悪な剣神と言われた羅刹、『修羅の美夜』。
あまり人として褒められるような二つ名じゃねー、と言ったら容赦なく殴られた。笑顔で。
という訳でここいら一帯の事情通は、彼女に挑戦しようとする猛者は一人もいなくなった……というわけでもなく、盛んに戦いを挑んでくるものが後を絶たなくなったらしい。
またまた話が逸れた。
とにかく、言いたいのはたった一つ。
役割は間違っていない、という事だけだ。
「よし。決まった」
唐突なみーちゃんの言葉に、思わずその顔を見る。
……非常に嫌な予感が。
「何が?」
「何がって真くん、当然決まってるじゃない。逃げる方法だよ。簡単簡単。前は敵、後ろは崖。でも幸い下には川が流れてるっぽいし」
嫌な予感的中……して欲しくなかったんだけど。
「というわけでこっから飛び降りよう」
満面の笑みでぐっと親指を立てて突きつけられた。
「…………みーちゃん。ここ、どれくらい高さがあるかわかって言ってる?」
「大丈夫。私、運は良いから」
ええ。あなたは強運ですから良いですとも。だが、こっちはそんなものはない。あるとすれば悪運ぐらいだろうか。ギリギリ生き残れるぐらいの。
どんなことがあろうとも、最後はやるべきを成してきた美夜。
反面、そんな彼女に巻き込まれながらもかろうじて生き残ってきた真。
一応反論させてもらいたい。
その生き残る自信、どっから湧いてくるんですか?
そんな事を考えながらいると、みーちゃんはおもむろにオレの首根っこを掴むと「行くよ」と躊躇い無く飛び降りた。
風を切る音を聞きながら思った。
これで生き残れたら何の美味しいものを食べようか、と。
そして。
「みーちゃんの、ばかぁぁぁ…………」
空しい空しい叫びが、自分の耳に跳ね返ってきた。
プロローグ部分が一話より長いって……。
ま、いっか。