短編3.5 割と平和な今日
目覚めると普通に家にいた。
あれ〜?俺って、変な兄ちゃんになんかされようとしてなかったっけ?
見渡してみても違和感はない。どっからどうみても俺ん家のリビングだ。
ん〜?夢だったのかな?
「ふぐわっ!!」
突然背中に衝撃がくる。
「お腹減った。目覚めたんならお昼ごはんつくりなさい。」
とりあえずは、俺が立ち上がった瞬間に後ろからドロップキックかましたやつに集中しよう。
「このあほ!いきなり何しやがんだっ...あれ?」
勢いよくさけんだ言葉全てが吐き出されることなく俺は違和感を覚える。
「なんだか朝と違くね?主に服装とか。ってか俺のじゃね?その上着とか。」
よく見なくても今朝とは違う、明らかに男用の服を着たナナが右手を腰にやり、不機嫌そうに俺を睨んでいた。
「あぁ、これ?ちょっと汗かいたから着替えたわ。」「ふ〜ん。お前って人様の服なんの断りもなしに着るんだ。」
「うん。着るけど。」
...まぁ、いいか。別に減る者でもないし。
「そんなことより、ごはん。めし、お腹すいた。」
「誰だよお前。ゲン○君でさえ、お前ほどじゃないぜ」
ゲ○タって何?おいしいのか?ってきかねぇかな。
「うっさい。あんたは寝てただけだけど、こっちは疲れてんのよ。」
ちっ。やっぱ世の中そんな上手くいかねぇな。 時計を見てみた。午後2時をとうに過ぎていた。
「うわっ。もう昼過ぎじゃねーか。そんな寝てたのかよ。ってかいつ寝たんだ?俺は。」
特に寝た記憶もないし、眠かったつもりもない。
「はぁ?あんた覚えてないの?」
何を?
「朝ごはん食べた後に襲われたじゃないの。」
誰に?
「殺し屋。」
....えっと、それは宅配便の恰好した兄ちゃんのことかな?
「当たり前でしょ。他に誰がいんのよ?。」
「.....」
両者が沈黙する。ナナの場合は単純に俺がしゃべらないからだろうけど。
「あれって夢じゃなかったの!?」
予想外です。
相変わらずのばかっぷりね。とゆう言葉が俺の耳に入ってきたような気がしたが、とりあえず無視した。
「んっと?それじゃ、あの兄ちゃんは?」
「あ〜、あいつ?」
そう、そいつ。
「私がぶっ飛ばしてもういないわよ」
え〜と、とりあえず..。
「そんだけ!?...あんだけ前回意味ありげに引っ張ったのに!?いいのそれで!?」
「いいんじゃない?別に。雑魚だったし。それに、」
ナナは蛇足を承知だといった感じに付け足した。
「この作者に戦闘描写なんて高等テクできるわけないじゃん。」
......なるほど。
「ってゆうか、早く昼ご飯作りなさいよ。ほんと腹減ってんのよ、私は。」
むー、仕方ない。今回はどうやら助けられたらしいからな。(ほんと、らしいってどういうことだよ。自分のことなのにね。)素直に従ってやろう。
っと思ったが2人分には材料が足らないっぽいので近くの店で食うことにした。
「らっしゃい!!」
のれんをくぐると野太い男の声が聞こえてきた。
「私、チャーシュー麺ね」
「チャーシュー抜きじゃなくていいのか?」
「はっ?何よそれ?それだったらチャーシュー麺頼む必要ないじゃない」
「わからんのなら別にいい。」
わかる奴にはわかるから。
というわけで昼間から屋台が何故か開いていたのでここで食事することにした俺達。
....この町変なのが多いなぁ。
「あっそ。どうでもいいわ。それよりあんたは何にすんのよ。」
「んー、じゃあ俺とんこつで。あっ、麺は大盛な。」
「じゃあ、私も大盛で!」
「あいよ!!チャーシュー大盛、トンコツ大盛一丁!」
「ふん〜♪ふふん♪」
ナナが上機嫌に鼻歌を歌っている。曲名はショパンの小犬のワルツか。なかなかいいセレクトするじゃねーか。
....嘘だけど。
わかるわけねーつの。絶対音感なんて持ち合わせたつもりはない。でもまぁ、ナナが上機嫌だってことくらいはわかるかな。
「どうした?やけに機嫌がいいじゃねーか。お前がそんなにラーメン好きだとは知らなかったよ。」
「別にラーメンがそこまで好きなわけじゃないわ。おいしいとは思うけど。」
そのあとにこうつぶやいた。
「ただ、こどもの頃を思い出しただけ。」
...こどもの頃ね。こいつのガキのころなんてどんなんだったんだろうな。きっと今以上にわがままでうるさかったに違いない。
直感的にあるやつが思い浮かんだがすぐに記憶の底に落っこちていった。
そういや、ガキの頃といえば....いつ頃だったかな?親に内緒で夜抜け出して、屋台にラーメン食いにいったんだよな。えっと、そんときは....あれ?そんとき誰といったんだっけ?一人ではなかった気がするけど。
まぁいいか。帰って親に怒らまくったのはよく覚えてるんだけどな。
結局、ラーメンを食い終わるまで、思いだすことはなく、ナナも上機嫌のままだった。
「はぁ、おいしかった。あの屋台のおじさんやるわね。」
ラーメンの味は俺達の想像以上だった。
「あぁ、まさか昼から開いてる屋台があんなにうまいとわな。」
一口食べるだけて濃厚なトンコツが口いっぱいに広がり、かといって重くはなくどんどんと胃袋に吸い込まれていった。
そう。それはまるで、ラーメンの、ブラックホールや〜!!
....んー。ひこま○さんみたいにはいかんな。意味がわからん。
「あんたさっきから何やってんの?ぼけっとして。」
不思議そうに問い掛けた。
「別に、ちょっとテレビ出演でも狙おうと思っただけだ。」
さっきあきらめた。
「そうね、あんたがテレビなんてね。せいぜいドッキリで笑われるあたりがお似合いだわ。」
屋台にいってからナナの機嫌は同じ状態が張り付かれたままだ。
「悪かったな。お前もその壊れた性格さえばれなければトップアイドルになれるかもな。俺が写真つきで応募紙でも事務所に送り付けてやろうか?」
まぁ、十中八区とおるだろうな。
「ばっかじゃない?」
なんで?収入の一割くらいを俺に還元してほしいんだが。
「テレビにでる殺し屋がどの世界にいんのよ!?」
作りものみたいな怒り顔で怒鳴り散らした。
そんな怒鳴り散らすナナをみていると服の隙間からあざや切り傷があることに気付いた。
多分、朝にはなかった。
「聞いてんの?まったくこれだから...」
でも、そのことをナナは何もいわない。
「あぁ、聞いてない。それよりどうする?まだ4時前だけど。」
俺も気付いたことは言わない。
「ふん!どうでもいいわ!好きにしたら?」
ただそんだけ。
「んじゃクレープ屋な。近くに新しくできたらしいから。」
「あんた、本当、甘い物好きねぇ。さすがにそこまでいくとひくわね。」
「うっさい。甘い物は体にいいんだぞ。例えばな....。」
「はいはい。」
今日はめずらしくナナが聞き役で俺がしゃべり続けた。
梅雨も通りすぎそろそろ本格的に蝉が合唱し始めそうだった。
「あっ。お腹すいてきた..。」
「一度、お前の胃袋を調べてみたいんだが、本当に小型のブラックホールでも存在すんじゃねーの?」