異常な日常
「どいてなさい!!」
突然の事態でまったくわけのわからない俺を自称殺し屋は突き飛ばすとそう叫んだ。
「イテェ。なんだ!?何が起こってんだ!?」」
「だから同業者だって言ってるでしょ!!邪魔だから下がってなさい!」
同業者?こいつの?ってことは.... 。
「殺し屋よ!!」
!! やっぱあの話しは本当だったのか!!イマイチ実感がわかなかったが。
俺は窓から奇声を上げ入ってきた男を見た。
「ひひひ...ヒャハハ」
...こいつ..。
俺は奇声野郎を見ると正直恐怖したね。こいつは入ってきてからしばらく経つと言うのに誰とも目をあわさず虚ろに笑い続けていた。
「お前か?ターゲットは?...ひひ..」
やべ。目があっちまった。
「いえ。違いますけど。」
咄嗟に否定した。肯定したらやばいと俺の直感が警告してから。
「そうか〜...」
どうやらばからしい。見た目でわかるけど。
「...ってんなわけね〜..ひひひ」
うわ。きたねー。のりツッコミかよ。
「何やってんのよあんた!そいつは冗談抜きでやばいのよ!!さっさと逃げなさい!!」
必死になって叫ぶあいつに俺は気をとられ一瞬やつから目を離した。
「...えっ?」
もう一度視線をいかれ野郎のほうに向けたがそこにはもう誰もいなかった。
「ぐっ?!...」
「ヒャハ..苦しいか?..くくく..ハは。」
突然いかれ野郎が視界に入ると俺は首を絞められた。
やばい。本気で苦しい。.
「苦しい?いいなぁ苦しいのか。...くく」
..俺こんどこそ死ぬのかな?
やべこえぇ...嫌だ..嫌だ。俺まだ死にたくねぇ。こえぇ。死ぬのがこえぇよ。
なんで?あいつの時はこんなじゃなかったのに..。.
「死んじゃう?死んじゃうの?かわいそうになぁ。アハハ」
..もう..意識が..
「ちっ!!こんのあほが!はなしなさい!!」
意識が途切れる寸前に俺が見たものは、目の前の野郎が吹っ飛んだのと、息をあらげ顔を真っ赤にした女の姿だった。
「カハッ!はぁはぁ。」
苦しかった。...まじ死ぬかと思った。
「だから言ったでしょう!こいつはやばいって!!」
安心を隠すよう殊更に怒鳴るあいつの声が聞こえてきた。
「すまない。助かった。マジでサンキュー。さっきのは本気でやばかった」
「 !! 勘違いしないでよね!!あんたを殺すのは私なの!別に助けたわけじゃないわ!」
?なんでそんなに慌ててるんだ?
「うるさい!!うるさい!慌ててなんかない!そんなこというひまあんなら....っ!!」
殺し屋に突然二本のナイフが襲い掛かかったがひらりとそれをかわすと俺の隣に着地した。
「すげっ。...じゃなくて大丈夫か!?」
「当たり前でしょ。私を誰だと思ってんの。」
だれだっけ?そういや殺し屋っていうことぐらいしか聞いてなかったような。
あいつはさっきまでの慌てようが嘘のように冷静にナイフが飛んできたほうに視線を向けた。
「痛い。痛いなぁ。なんてことするんだNO7よ。おかげであごが砕けてしまったよ。くく。」
...こいつ本当にいかれてんな。なんであんな笑ってんだよ。さっさとおひきとり願いたいね。
「うっさい。あんたが横取りしようとすんのが悪いんでしょうが。」
「横取りとは人聞きが悪いなぁ。お前に殺す気がなさそうだったから俺が代わってやっただけだろ?それに獲物は早いもの勝ち.....文句でもあるのか?」
....なんだか急に喋るようになったなー。変なとこでも打ったのか?...ざまーみろ。
「大有りだっていってんのよ!あれは私の獲物。私以外には殺されちゃいけないの!」
んーさっきから俺、人扱いされてねーなー。
結構傷つきやすい年代なんだけどな。
「くくく..そうか...まぁそういうことにしておこうか。どうでもいいことだ。これで殺せるやつが2人に増えた。くく...お前はどうやって死にたい?」
.うわっ!..鳥肌が..なんださっきの笑い。気持ち悪すぎ。勘弁して。
「いちいちうっさいわよ。もう死になさい。....後...あんたもさっきからぐちぐち独り言がうるさい!さっき殺されかけてんだから、その辺でびくびく震えてなさい。」
そうしたいのは山々なんだが全然怖くないんだよね。なんでだろ?一度死の恐怖を味わったからかな?
「そんなわけないでしょ。普通はその恐怖が忘れられずに縮こまるのよ。初めてあったときから思ってたけど、本当変なやつね。」
あなた方よりは絶対にましだとは自負していますがね。
「やっぱ、あんたから先に死ぬ?」
「ごめんなさい。嘘です」
咄嗟に謝る俺は情けないですか?
「わかればよろしい。」
....なぁーんかやっぱ懐かしい気がすんな。気のせいか?
「そろそろいいかな?待ちくたびれて死にそうだよ。早くどっちか殺させてくれないか?...」
こいつ律儀に待ってたんだな。さっきはいきなりナイフ投げたくせに。
「私からの些細なプレゼントだよ。最期のせりふはもう終わったかな?......ヒャハはは。」
「ふん。お前こそママに助けを呼ばなくてよかったの?いつもいってたじゃない。ママー。ママ〜って。」
「....死ね。」
どうやらNGワードだったらしく、急にあたりの雰囲気が変わると、いかれ野郎は自称殺し屋にとびかかりそこから2人の攻防が始まった。...がっ俺にはレベルが高すぎて2人がなにやってるのか皆目見当がつかないので省こうと思う。
決してめんどくさいとかそんなんじゃないよ?
戦闘描写がみたいならジャンルからそっち系を選んでみたらいい。必ずこんなんよりおもしろくてかっこいいのがたくさんあるから。
まぁ俺がわかる範囲でお伝えするなら、多分2人の実力はあんま変わらないじゃないかな。
お互い手数は多いが決定的なダメージは与えてないようだ。
それにしてもこいつら強いなぁ。俺、こいつら2人に命狙われてんだよなぁ。
.....死んだね俺。
今のうち辞世の句でもよんでおくか?
でも...実際に死を前にしたら恐怖で何もできないだろうな。いかれ野郎の時がそうだったし。あいつの時はなんでか怖くなかったけど。
そんなことを考えているとどうやら戦いは佳境に向かっているらしい。2人は手を出すのをやめ、お互いの動きを観察し次で決めるようだった。
..よく考えたらこいつらのどっちが勝っても俺って結局殺されるんだよなぁ。
ってことは同士討ちしてくれたほうが俺的には1番いいんだよなぁ。そう.だよな?
ガキン!!!
突如金属と金属がぶつかる音が部屋中に響き渡り、辺りはしんとなった。
終わった..のか?どっちだ!?どっちが勝ったんだ!?それとも....。
2人が同次に倒れた。
「殺し屋!!!」
俺はなぜだかすぐに殺し屋のもとに駆け出した。
「おい!!殺し屋!」
「うっさいわね。そんな近くで叫ばなくても聞こえてるわ。」
少し元気はないが口調は今日あったままの高飛車だったので俺は安堵のため息を....なんでついてんの俺?
「何?あんた変なこと考えてないでしょうね?」
まぁ変なことっちゃ変なことかな?
「いや。別に。そんなことよりあの野郎は?」
「さぁ?とりあえずは決まったけど確かめて見ないとわからない。」
そういうので俺とあいつはあの野郎が倒れたところを見た。
「....あっ。」
「逃げられたわね」
そこにはもう人影はなかった。
「まぁ大分痛め付けたから当分の間は来るってことはないでしょ。」
「来たとしてもその頃には俺はいないだろ。」
「.....」なんだ?なんか言いたいことでもあるのか?変な顔して。
「..今回は...」
はっ?
「私...てるし..」
なんだって?
「だから...」
聞こえないってば。
「....がして..」
えっ?
「あぁもぅ!!だから!今回は私も怪我してるから見逃してやるつってんのよ!このばか!」
「うぎゃー!!」
なんかデジャブだ〜!!
でも今回は気絶しなかった。すんげー痛かったのは変わらなかったけど。
「いてぇだろが!!いきなり何しやがる!!」
「アハハ!!いいじゃない!!少しかっこよくなったよ。」
くっ。こいつめ。人の顔を殴っておいて爆笑しやがっ...て?........うわっ!笑ってる!初めてみた。
「アハハ?.?..何よ?なんかついてる?あっ!もしかして顔にかえり血ついてる?」
いやっ。かえり血って。
「とくになんもついてないけど...。」
やっぱお前もそういう風に笑うんだな。とかは思ったりしないけど。
「まぁいいわ。それじゃそろそろいこうかな。」
そういうとすくりと立ち上がった
「そうか。...そういや名前聞いてなかったな。教えてくれないか?」
「......?」
んな怪訝そうな顔するなよ。
「あんた私に命狙われてんのよ?今回は特別。特例。バーゲンセールよ。感謝しなさい。」
意味わからんな。何安売りすんの?
「別にいいだろ?自分を殺すやつの名前くらい知りたいもんさ。」「残念だけど私に名前なんかないわ。」
なんで?
「当たり前でしょ。殺し屋が名前残しとくわけないじゃない。仲間うちはコードで呼べばいいしね。」
それもそうだな。納得。
「んじゃ今日からお前ナナな。」
「....はっ?」
いかなりそんなこというもんだから自称殺し屋はキョトンとしていた。
「いや。呼び名がないと不便たろ?」
俺、殺し屋じゃねーからコードとかで呼びたくねーし。
「あんたがここまでばかとは思わなかったわ。
....好きにすれば?」
好きにさせてもらおう。
「ふん。それじゃね。せいぜい夜道には気をつけなさい。」
お前がいったらシャレにならんな。
「あぁ。またな。」
あっ。今度あったら俺、殺されるじゃん。またなはおかしいよな。
俺が訂正しようとすると、もう自称殺し屋改めナナは姿を消していた。
はぁ。今日は変な一日だったな。こんな日は人生をあと5回やり直してもできないだろうな。明日くらいは普通の日を過ごさせてくれよ。
どうやら、俺はもう長くはないらしいし。
そして一人になった俺は緊張の糸が切れたのか、その場でぶっ倒れて朝まで一度も目を覚ますことはなかった。
第一話 出会い編 終り