EP2 『紅。』
瑞希は叫びながら目を瞑った。逃げる余裕は無かった為、頭を手で押さえ無事を祈った。
「おい、伏せろ!!」
瑞希はその言葉を聞き、とっさにしゃがみ込んだ。するとその上を先ほどの声の持ち主が飛び越え、怪物に一発の蹴りをかました。怯んだ怪物にもう一度蹴りを入れた。その声の持ち主はしゃがみ込んでいる瑞希を抱きかかえ場所を教室へ変えた。
「だっだれ?」
「ちっ。なんで人がいるんだよ。いるならちゃんと連絡しろよ、あのやろう。」
辺りは真っ暗で人の顔など見えたものではないが、その人物の顔を見続けていると、月の光が一瞬差し込み顔が見えた。そこにいたのは。
「闇斬 光・・・?」
「・・・ちっ。顔まで見られちまったか。あぁ〜関係ない人間巻き込んじまったな・・・。」
「なんで、アンタがここにいるのよ!!てか、あれは何な訳?」
「・・・あれは本物の悪魔。」
「は?何よそれ?悪魔なんている訳無いじゃない。」
「・・・お前も見ただろ。あれは悪魔だ。正確に言えば、たちの悪い動物か。」
「あれが動物?そんなもんじゃないわよ!!」
この事態についていけない瑞希は完全に冷静さを失っていた。
「だいたい、なんであんたがここにいるのよ!!」
「・・・俺は、あいつ等みたいな悪魔を退治する為にここに来ただけだ。俺も悪魔だなんて言えたたちじゃぁないがな。」
「えっ?何、あのあだ名の事?」
「・・・奴らは紅っと言う生物だ。今の世の中の人間には知られていない、闇の生物だがな。奴らは姿形は人間と変わらないが、覚醒すると悪魔のような姿になり、人を襲うようになる。」
「そっそんな事って・・・。」
「・・・奴らは、国の判断で世間には知られないようにしている。今の世の中に知れ渡ったら大混乱を招く。なぜなら、この世の人口の内、日本だけでもおよそ500人に1人の割合で紅がいると言われている。まぁほとんどの奴が未覚醒だがな・・・。」
「えっ?あの化け物がそんなにいるって言うの?」
「・・・そう言われている。詳しい数は俺は知らないが・・・。俺達は何も知らない人間どもを護る為に存在しているんだ。国の上層部の人間だけがこの組織の存在知っていて、この組織を援助している。」
「・・・組織ってことは、他にもアンタみたいな人がいるってこと?」
「あぁ、そう言う事だ。組織名は『紅狩人』通称『狩人』と呼ばれいている。日本にいる狩人は20人程だ。」
「・・・そ、それはわかったんだけど・・・。あの、さ、なんでアンタ自分は『悪魔だなんて言えたたちじゃない』って言ったの?」
そう瑞希が尋ねると、光は教室の窓の方へと3・4歩程歩き、月を眺めながらまた話を始めた。
「・・・覚醒した紅どもは、昼間は未覚醒の状態と変わらないのだが、夜になると人間の血を求め人を襲う。覚醒した紅だと判断する方法が一つだけある。それは、夕方から明け方までの間に奴らの目を見る事だ。奴らの目は月の光を浴びると目の色が『紅色』になる。それゆえ、奴らの名は『紅』と言う。」
そう言い終えると、光は瑞希の方に顔を振り向けた。すると・・・
ガタッ・・・!!光の顔を見た瑞希はある事に気が付き、数歩後ろに下がった。
「・・・あ、アンタの片目・・・紅色・・・。」
光の右目は、瑞希の言うとおり紅色だったのだ。
「・・・だから言っただろ?俺は悪魔なんて言えたたちじゃないって。俺は紅と人間の間に生まれた『半紅』なんだよ。」
「まさか、悪魔が本当の悪魔だったなんてね・・・。」
「なんとでも言うがいい。それは変える事の出来ない事実だ。狩人の者は数人を除いて俺のような半紅だ。」
「じゃぁ何?アンタも人の血を吸うわけ?」
「いや、半紅は吸血はしない。ただ、年に2回ほど輸血をする。輸血をしなければ体が弱体化し、生命維持が出来なくなる。」
淡々と話をする光に、新たな質問をしようとしたその時。教室のドアが壊れ、ドアの向こう側に紅の姿が見えた。
「・・・おっと、ゆっくりしている時間は無いようだ。詳しい事はあとで説明する。外までお前をつれいく。そのあとは自分でどうにかしろ。」
「ちょっと・・・。」
光は瑞希を抱きかかえ、教室の窓から校庭へ飛び降りた。
「きゃあああああ!!」
「騒ぐな。この程度では、俺は死なない。無論お前も死なせはしない。」
光の着地とほぼ同時にどぉぉぉぉん・・・っと地面に低い重低音が響く。
「急げ、また奴に追いつかれるぞ。早く逃げろ!!」
「えっ!?あ、うん。わかった。」
瑞希が走り出すと光は走り出した瑞希を呼び止めた。
「・・・おい。」
「何よ!!」
「このことは誰にも言うな。絶対だ。」
「わかってるわよ!!だいたいこんな話誰も信じないって!!」
「・・・それもそうだな。さて、さっきの続きといくか。」
「ぐわぁおんおおお!!」
「・・・いくぞ。」
掛け声と同時に光の腕にある入れ墨のようなものがひかりだし、日本刀へと変化した。