EP1 『事件。』
こんばんは、沙凪です。
サブタイトルのEPは「エピソード」とお読みください。それでは、たとえ悪魔とののしられようとも。をお楽しみください。
見ろよ、アイツ。
あぁ〜『闇斬』?アイツ本当に暗くて不気味だよなぁ。
あいつの腕にヘンな模様みたいなあるよなぁ〜。お前も見た事あるか?
見てねぇよ。気持ち悪くて見ていられるかよ。
つか、アイツのあだ名ってさ・・・
あっ、あの人が来たわよ。
あの人って何考えてるかわからなくて気持ち悪いよねぇ〜。
腕の入れ墨、あれ宗教の関係かなにかじゃないの?きっと、やばい事やってるんじゃない?
近寄らない方が身の為だわ。
マジで、あの人のあだ名ピッタリよね・・・
・・・悪魔・・・
俺はそう呼ばれている。闇の世界で生きる者として罵声を浴びるのは仕方のない事なのかもしれない。
「瑞希、お昼どこで食べる?」
「屋上でよくない?」
「じゃぁ〜、屋上行こう!!」
ギイイイ・・・ガチャン!!
「今日は晴れてて気持ちがいいね!!」
「そうだねぇ〜瑞希♪」
「じゃぁ〜、いつもの場所に行こう。」
「ねぇ〜、あの人・・・」
「あっ!!あいつは・・・」
「・・・・・・っ!!」
「ちょっと、そこどいてくれない?邪魔なんだけど『悪魔』!!!」
「・・・俺がここを動く必要はない。」
「私はそこに座りたいんだけど、アンタが邪魔で座れないんだよね。」
「俺が先に座っていたんだ。お前がここに座る権利はない。」
「そこは、私達の特等席なのっ!!」
「もう、いいよ〜瑞希、違うところに行こうよぉ。」
「・・・・・・・」
「・・・そうね、こんな奴の傍にいたらこっちがおかしくなるわ。」
俺の名は、『闇斬 光』銀龍高等学院に今年入学したばかりだ。だが、俺は他の奴らとは違う。俺は闇に生きる存在だ。
「お〜い、HRは終わりだ。日直、号令頼む。」
起立・・・・・・・礼。
「真美〜部活行くよっ!!」
「あっ、うん!!待ってよ瑞希〜」
「待ってるわよ〜〜」
「もうすぐ大会だねぇ〜瑞希ならきっとレギュラーとれるよ!!」
「真美だって、上手じゃない。2人でレギュラーとろうね!!」
「でも、一年生でレギュラーなんてとれるのかな?」
「努力よ、努力!!頑張れば慣れるよ!!」
「そうだね、頑張らなくちゃっ!!」
「おいっ!!姫野!!腰が高いぞ、もっと腰を落とせ!!」
「はいっ!!」
「うわぁっ、監督厳し〜い。瑞希怒られっぱなしだね。」
真美が笑いながら話をかけてきた。瑞希は、それに答えるがとてもじゃないが元気な返事は返せなかった。
「大会が近いからってこんなに練習するなんて・・・。だいたい、なんで私ばっかり・・・」
「それだけ期待されてるんだよ、瑞希はっ!!」
「どうだかねぇ〜〜」
ムスッとする瑞希に真美は優しく、そして明るく答えた。しかし、瑞希は疲労のせいか薄い反応をした。
「こらぁっ!!喋ってるヒマがあったらさっさと走れ!!」
「はっはい!!」
私は、『姫野 瑞希』銀龍高等学院に今年入学した一年生。バスケットボール部に入部し、毎日を汗と努力と友情の青春で生きている。大切な人は親友の『麻野 真美』で、嫌いな奴は『闇斬 光』だ。
「今日も疲れたねぇ〜。あっそうだ真美!!夕飯どこかで食べていこうよってか、ラーメン食べに行こうよ!!割引券の期限今日までなんだ〜。」
「またラーメンですかぁ〜。さり気なく5日連続ですよ?昨日も同じような内容でラーメン屋に行った記憶が・・・。私はラーメンを見るたびにこの5日間を思い出すよ。」
「まぁ〜いいじゃない、美味しいんだし♪」
この瑞希のラーメン好きにも困ったものだわなどと思いつつもラーメン屋に足を運ぶ真美であった。
「ふぁ〜〜、美味しかったぁ〜!!やっぱ、オジちゃんの作る醤油ラーメンは最高だよっ!!」
「私は塩が1番だと思うな〜。」
「醤油なのよっ!!ねっ、オジちゃん!?」
「ん?いや、オジちゃんは美味しいって言われればどの味でも構わないよ〜あははは。」
「醤油が一番って言いなさいよぉ〜!!」
「あははは、ゴメンよ瑞希ちゃん。お詫びに醤油ラーメンの割引券あげちゃうよ。あははは。」
「あ〜、オジちゃんダメよこの子に割引券なんか与えちゃ。私が毎日付き合わせれるんだからぁ。」
「いいからいいから♪じゃぁ、オジちゃんまた明日来るねっ!!」
「はいよ〜、いつでもいらっしゃい。」
「明日も来る気満々だね、瑞希。少しは私の事も考えてよね。」
「考えてるよっ!!考えてるけど、己の欲望には敵わないのっ!!」
「考えてないじゃない・・・。」
お気楽な瑞希は真美の意見をまったく聞かずに明日もラーメンを食べるようだ。その後もいつもの様な会話をしているうちに自宅の近所まで来ていた。
「そうそう、真美。お願いがあるんですけどぉ・・・。」
「宿題でしょ?たまには自分でやりなさいよねぇ。」
「さっすが真美♪じゃぁノート渡すから、明日の朝起こしに来る時に渡してくれ・・・。」
瑞希と真美の家は隣の隣であった為、昔から真美が瑞希を朝起こしに行き、朝食を一緒に食べるというのが暗黙の了解であった。それは、瑞希の母が朝には仕事に出掛けてしまう為朝に弱い瑞希を起こす者がいないからである。瑞希の父は数年前に不慮の事故で亡くなってしまっている為今現在姫野家を支えているのは、瑞希の母である。その関係で母は家を空けている事がほとんどであった。
「どうしたの?」
「あっりゃぁー、ノート忘れてきちゃったぁ〜テヘッ。」
「テヘッ、なんて言ってもダメだよ!!私は先に帰るからねっ!!瑞希の家の掃除もしなきゃいけないんだから。瑞希ってば掃除なんかしないでしょ?」
「真美のけちぃ〜。いいよ〜一人で取りに行って来るから。」
「遅いから気をつけてね!!」
「取って来たら家に届けるよ!!」
「はぁ〜い。」
部活で疲れ果てた体を気合いと言う名のエネルギーで走らせ二十分。瑞希の目の前に学校が見えてきた。
「はぁはぁはぁ、んっはぁはぁ・・・。あぁ〜〜、部活の後にこの距離を全力で走るもんじゃないわ、走り死ぬわ・・・。」
警備員さんが閉めたのか、校門は鍵が掛けられていた。が、瑞希はそんな事はお構い無しに校門をよじ登り、教室へと入り込んでいた。
「あったぁーー♪私のノート発見!!早く帰って真美に宿題やってもらおうっと♪」
ノートを手に取り、教室を後にしようとしたその時。
ドオォォォン・・・。同じ階の理科室の方から爆発音が聞こえてきた。
「なななななな、なによぉ!!なんなのよぉ・・・。理科の先生、実験にしちゃやりすぎじゃないのぉ?学校破壊する気?公共の物壊したらいけないって知ってるのぉ〜・・・。」
瑞希は、冗談を言い聞かせおびえる自分を励ました。すぐ帰ればいいものの、興味本位で理科室へと向かって行く。
覗き込むように理科室を見ると窓側の壁や窓ガラスに大穴が開いていた。まるで何者かがここで争ったかのようだった。
「何よ、コレ。喧嘩かなんか?それにしちゃ物が壊れすぎじゃ・・・。」
唖然とする瑞希の背後に何やら怪しげな影が近づく・・・
「・・・っ!!だっだれ!?」
「姫野、こんな時間に何やってるんだ・・・はやく帰れ・・・よ・・・。」
「なっなんだ、理科の先生の平尾先生じゃないですかぁ。びっくりした〜。」
「はや・・・く・・・かえれ・・・よ・・・退学・・・にされ・・・たいのか・・・。」
「先生?大丈夫ですか?具合悪そうですよ〜病院に電話してきま・・・。」
瑞希が携帯を取り出そうとした瞬間、目の前にいる平尾が突如異様な姿へと変貌していく・・・。とても醜く、おぞましい姿へと。
「きゃああああああああ!!」
「血が欲しい!!チガホシイ!!!ぐぅあぁあぁ!!」
恐怖のあまり座り込んでしまった瑞希に魔の手が襲い掛かる。