エピローグ
「……どう、して、真白は撃たれても平気だったの……?」
ボクが尋ねるとゴンさんが答えてくれた。
「この子の中には二つの人格があるのよ。ひとつは感情が欠落した人格、そして、もうひとつは痛みを感じることが出来ない、五感のうち、触感の欠落した人格。今のこの子は後者よ。それは世界に飛び散ってしまった心のカケラのせい」
その時に知った。彼女の続けている不毛な戦いを。真白がしていること、それはバラバラになった自分の心のカケラを集めることだと。そう、本当なら彼女にも笑顔や哀しみ、そんな感情があったはずなんだ。だけど、今の彼女には何も無い。彼女は至高の存在なんかじゃない。元々、空っぽだったんだ。何も感じられない。それはどんなに悲しいことなんだろう。その時、彼女の瞳から一筋の雫が零れた。
何故だろう、ボクはその、ほんの一瞬だけ真白が笑ったように見えたのだ。
「幾つに散ってしまったのかは分かるの?」
「分からないわ。あまりにもバラバラにされてしまったもの」
そう言って、彼女はもう一度、ボクに口付けをした。その時、真白がもう一つの人格である真白になったことが判った。どうやら、真白の口付けは二つの人格を変えるためのトリガーのようだった。
「それじゃ、お別れね。アンタも女の子なんだから、もっと気をつけなきゃ駄目よ~ん?」
ゴンさんはそう言って、ボクの頭を軽くデコピンで小突いた。そのそっけない優しさが嬉しかった。真白はこれから先も自身のバラバラになった心を取り戻す戦いを続けるのだろう。
生きるという戦いの日々。
ボクはまた日常に戻っていく……。
大学当時の悶々としていた時期に書いた物語なので、いろいろモヤモヤしていることがわかってしまう部分がそこかしこにちらほら見えますね。登場人物の一人「ボク」の性別は女の子ですが、ヒントがもう少しあったほうが良かったでしょうか。何かを隠しながら書くのは難しいので要精進ですね。機会があれば、いつかゴルゴンゾーラさんと真白の出会いの話とかも書けたらいいな、などと考えております。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




