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初めに撃ったのは護衛の一人だった。
真白は後方に跳んで避けつつ、お返しの銃弾を右手から放つ。弾は護衛の急所、眉間に見事に命中していた。堰を切ったかのような銃弾の奔流。それが真白の華奢な肉体に穴を穿とうと追っていく。銃撃のほとんどを避けて、真白はその返答である弾丸をことごとく急所に撃ち込んでいた。弾が無くなると内刀を抜き、その残党を一撃の下に切断した。その断面から霧散する血液が噴水のように周囲に広がる。凄惨な光景だった。
「この世界は誰も傷つけずに生きていける世界じゃない」
ついに、そこにボクとゴンさん、反撃してこなかった人たち。それ以外には人と呼べるものが誰も居なくなると、真白は悲しげな表情を浮かべ、胸に手を当てる。鎮魂の詞を紡いだ。その瞬間、彼女の体が不自然に揺れる。その胸には真紅の染みが浮かんだ。
「ヘヘ、殺ったか……」
「残念ね。私の人格は痛みを感じないの」
次の瞬間、男は一刀両断された。噴水のような血しぶきが舞って真白の白い顔に飛び散った。雪原に紅い薔薇の花びらが落ちたようだった。よく見れば、その男はボクをさらった男に見えた。彼女は何かを掴み取ろうとするかのように頭上に手をかざす。青白い光が一瞬、その手に集ったかのように見えた。そして、全てが終わった。