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異世界還りの元聖女へのご褒美は、スパダリ元彼によるフェンリル付き甘やかされスローライフです ~ただいま、すずらん荘~  作者: 江東乃かりん


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2-09 プルプルしない! プルプルしないぞ!

 白玉の首輪も買って、気兼ねなく商店街を歩き回り始めた私たち。

 最初は不機嫌気味だった白玉も、「食べ物を買いに行く」と聞かされては断れまい!

 気づいたら他にも色々買いこんでしまって、すずらん荘の尚君の家に帰ってきた私たちは、両手にいくつものレジ袋を握って玄関を開けた。


「ただいま~!」

「いま帰ったぞ!」


 いまは誰もいないはずだけどね!


「おかえりなさい」

「尚君も一緒に帰ってきたばっかりでしょ。おかえり!」

「ふふ、ただいま帰りました」


 にこにこ笑ってふたりでお帰りを言い合ってると、なんだかくすぐったい。

 ちょっと前までどんより気分だったのが信じられないくらいに今が楽しいと思えるのは、尚君と白玉のおかげだね。


 白玉は玄関の前にあるタオルに足をふみふみしている。ちゃんと足を拭いていて偉い!

 そして、いつの間にかそのタオルを用意している尚君もすごい!


「さっそくおやつにしましょうか」


 気付けば時間は午後の四時前になっていた。

 まずは手洗いうがいを済ませて、台所へゴー!

 尚君がコンロのやかんに火をつけたので、私はプリンが入ったケーキ箱と生卵を冷蔵庫にしまう。

 すると、白玉が恨めしそうに冷蔵庫にしまわれたプリンを眺めていた。


「ん? まだ食べないのか? もう口がプリンの気分なんだが?」

「飲み物を用意するので、ちょっと待ってくださいね」

「そうか。待っているぞ!」


 大人しく頷いた白玉が、尻尾フリフリご機嫌な様子を見せて、和室でちょこんとお座りした。

 現代日本二日目なのに、異世界からの訪問者は慣れた様子である。


「白玉はコーヒー飲めますか? 犬ってコーヒー飲めましたっけ?」

「白玉は犬じゃなくてフェンリルだからね……。たぶん飲めると思うけど、冷ましたほうがいいかも」

「じゃあ白玉の分はアイスコーヒーにしましょうか」


 さて、お湯が沸くまで時間がある。

 その間に、尚君がさっき買って来たばかりのドリップバッグコーヒーを探し始めた。

 私も買ったものを袋から出して定位置に置いていく。

 尚君の家と物の配置を把握している私だけど、やっぱり夫婦みたいだなあ。

 苦笑しながら食器棚からマグカップとプリンのお皿やスプーンを出して、準備完了!

 もちろん、さっきペットショップで買って来たばかりの、白玉のお皿も準備済みです。


「尚君ってドリップバッグ派なんだね? てっきり豆を挽いてるのかと思ったよ」

「やってみたいんですけど、豆を使い切る自信がないんですよ。普段はお茶が多いので……」

「たしかに、緑茶のイメージがある」


 尚君はスローライフが似合いそうな穏やかなオーラを放っているので、食後にのんびりコーヒー豆を挽いてそうなイメージがある。

 それと同時に、縁側でのんびりと緑茶を飲む場面が似合う男でもある。

 つまりどちらも似合う!


「あ、でも……」

「うん?」

「詩乃ちゃんが一緒に飲んでくれるなら、コーヒーミルを買ってみようと思います。どうですか?」

「…………」


 コーヒー豆を挽く尚君の隣で、私は一体なにをすることになるんだろう。

 やることがない~! ってもだもだしてそうだけど、尚君的には豆を挽く時間は作業のうちに入らなさそうだね。


「か、考えておきます」

「決めたら一緒に買いに行きましょうね」

「うん。ドリップバッグ買ったお店に売ってるかな?」

「あると思いますよ。豆も一緒に選びましょう」


 なんだか気分は買う方向になっている気がする。

 ものすごく嬉しそうにしている尚君を見ていると、なんだかすごくくすぐったいけど、同時に暖かい気持ちになる。


 そうしているうちにお湯が沸いたので、尚君がドリップバッグにゆっくりお湯を注いでいく。

 コーヒーの良い香りがし始める中、私は冷蔵庫からプリンを出してお皿に載せると、和室に持って行った。

 もちろん、白玉の分はペット用のお皿です。

 持って行ってる最中にプルプルしないプリンを見て、白玉が尻尾をブンブン振って興奮している。


「本当だ! プルプルしてない! 前にシノが作ったプリンは、運んでいる最中でもプルプルしてたぞ!」

「でしょー?」


 プリンのお皿を並べ終わった頃に、コーヒーも入れ終わったようなので、今度は尚君と一緒に運んでいく。

 コーヒーもちゃぶ台に並べ終わったら、さっそくおやつタイム!


「いただくぞ!」

「いただきま~す!」

「いただきます」


 コーヒーを飲もうとしたら、白玉が前足でツンツンプリンを突いていた。


「やっぱりプルプルしないぞ! これは本当にプリンか!? 偽プリンじゃないのか!?」


 興奮してたと思ったら、今度は疑い始めた。

 プリンを前足でぺしぺししてるけど、いつまでプルプルしないプリンと戦うつもりなんだろう。


「プリンだってば。白玉が食べないなら、私が食べちゃうよ?」

「だ、だめだっ! これは俺の分だからな、俺が食う!」


 私に迫られて焦った白玉が、私を背中を向けて隠すようにプリンを食べ始めた。


「んぐんぐ……。んまい! まったりとしていて味が濃い! 旨いぞ!」


 くるっと首をこちらに向けて旨いアピールをする白玉が、本当の犬みたいで可愛く思えてくる。

 白玉を見守りながら、私たちもプリンを食べ始めた。

 スプーンを入れるともったりするけど、それは濃厚な証!


「んま~!!」

「美味しいですね」

「まったりとして甘みがあるから、コーヒーのさっぱりとした酸味にちょうどいいね」


 ところで、尚君がニコニコ笑顔で私を見つめながらプリンを食べているので、とても恥ずかしい……。


「あんまり見られると……照れるぜ」


 冗談交じりに行ってみたけど、尚君に冗談が通じなかった。


「あ、すみません……つい。詩乃ちゃんがお昼を食べていた時、すごく辛そうだと思っていたんですけれども……」


 ふつうに真面目に返されてしまった……。


「そうやって、にこにこ美味しそうに食べている詩乃ちゃんが、一番可愛いですね」


 この男、いまさり気なく恥ずかしい台詞を言ったよ!?

 コーヒーを飲んでる最中に言われたら、思わず吹くところだった!


「え、あ、ありがとう……」

「詩乃ちゃんが元気だと、僕も嬉しいです」


 こうして我々は、濃厚なプリンを完食したのでした!

 甘酸っぱい空気だったのは、プリンとコーヒーのせいだけではない! はず!

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