2-03 起きたら昼だったって話、する?
なんだか良いにおいがする。
懐かしくって、焦がれていた……お味噌のにおい。
ずっとずっと、帰りたいと思っていた場所の……。
「っ!? ここ、日本!?」
目を覚ますと、遮光カーテンの隙間から日差しが室内に射し込んでいた。
白玉に叩き起こされた対価として肉球を思う存分堪能したあと、私は再び眠りについた。
午前一時だったから、始発で出かけるにしてもまだ寝る余裕はあるからね。
と言うわけで、もう一度寝た私だけれども、アッシュアリアの夢は見なかった。
魔力がどうの……って言っていたから、白玉が何かしたのかな。
さて。そんな白玉は、いま室内に……いない!
お味噌汁のにおいがするから、食べ物に釣られて台所にでも行ったのかな。
大家さんって、朝食もちゃんと作ってるから偉いね。
出遅れてるかもしれないけど、私も手伝おう!
んー! と伸びをして室内の掛け時計を見つめると、時計が指していた針は、なんと……!
「ふぁ~~っ!? 十二時~~~~!?!?」
真夜中の十二時ではなく、正午!
い、いやちょっと待って!
掛け時計が狂ってる可能性がある!
私は慌ててスマホの時間をチェックした!
しかし、掛け時計の時間と一致している!!
うわあ〜〜! 完全に寝坊したっ!!
朝ご飯のにおいだと思ったら、お昼ご飯だったなんて!
つまりこれって、二度寝前と合わせて半日以上寝てたってことになるんだけど!!
急いで会社に行かないと!
遮光カーテンを開いて着替えをし顔を洗ってから、バッグを掴む!
「大家さん!」
大家さんがいそうな気配のする台所を覗き込むと、調理中の大家さんがのほほんと挨拶をしてくれた。
「詩乃ちゃん、おはようございます」
「もう昼だぞ!」
白玉は大家さんのそばで、監視と言う名のご飯待ちをしているようだった。
「あ、うん。おはよう!」
「良く寝れたみたいで良かったです」
「あ、ありがとう……」
ニコニコ笑顔で挨拶してくれる大家さんは、たぶんぐっすり寝てる私を気遣ってくれたんだと思う。
気遣いはありがたいけど、寝坊した身としては複雑な気持ちでいっぱい!
「私仕事に行くから、帰って来るの遅くなるかもしれないけど、先に寝ていてね」
「え!? 今から!? 今日は祝日ですよ!?」
大家さんがめちゃくちゃビックリしている。
私もそこまで大げさな反応をされるとは思わなくて、ちょっとビックリした。
「そ、そうだけど、たしか仕事忙しかったはずなんだよね」
「でも異世界から帰ってきたばかりで疲れてますよね? 今日は休んだほうが良いですよ」
「異世界帰りなんて言い訳は、現実では通用しないんだよ」
「でも異世界に行く前から、働き詰めだったじゃないですか! 今日くらいは休んでも良いはずです!」
「でも仕事にいかないとみんなに迷惑が……」
「だめです……! 詩乃ちゃんの健康が第一です!」
大家さんに手を掴まれてしまった。
何故か大家さんが珍しく頑固になっている。
私も仕事に行かない選択肢はない。
異世界で過ごした年数分だけブランクがあるから、ただでさえ遅れてる仕事がもたつく可能性がある。
休んでクビになったら困るんだけど……。
二人とも「でも」ばっかり言ってるし、このままだと会話が平行線になりそうな気しかしない。
「仕事に行くか行かないかは、メシ食ってから考えたらどうだ? 腹が減ってると考えもまとまらんだろう」
そう思っていたとき、食いしん坊フェンリルのひとことが剣呑な空気を解した。
さすが、白玉! 略して、さす玉!
でもゆっくりお昼ごはん食べてる場合じゃないんだけどなあ。




