お盆の時期に現れる水辺の幽霊
皆さんは、お盆の時期をどう過ごされましたか。
お盆と言っても、東京と地方では時期が違うのですが、このお話では8月の中旬頃について述べたいと思います。
いわゆるお盆休みになると、社会人の方でも1週間位はお休みが取れる事もあるかと思います。
その時期は、家族連れで海に行ったり川に行ったりする事も多いと思いますが、水難事故のニュースもちょくちょく見かけますね。
その時に、誰かしらからこんな事を聞いた事はないでしょうか。
「ああ、お盆の時期はご先祖様が水辺に集まるから、海や川には行かない方が良かったのに」
「もしかしたら、水辺にいた幽霊に引き込まれたんじゃないのかな」
お子さんを遊ばせる為に、海や川に行ったが最後、最悪の事態になってしまった方もおられるのでしょう。
または、お子さんを助ける為に大人の方が犠牲になった、なんてニュースも聞きますが、痛ましい報道には言葉を失いますね。
ただ、お盆の時期の水辺の幽霊というのは、海や川やプールを思い起こしがちですが、実際のところは自宅のお風呂の近くにもいたりするのです。
何でこんな事を、と思われるかもしれませんが、執筆している自分自身に霊感があるからなのです。
その霊感のお陰で、今迄散々不思議な事柄を見てきたのです。
前置きが長くなりましたが、今回のお話は、お盆の時期に自宅の浴室に現れた幽霊について語っていきたいと思います。
あれは、2010年の8月だったと思います。
この年は、特に暑さが酷くて、ニュースでも大々的に取り上げていました。
その当時、自分はアパート住んでいでたのですが、夜から朝にしか冷房を入れないので、昼間は猛烈な暑さとの戦いでした。
そんな事をしていたのは、電気代の節約の為でした。
ただ、あまりの暑さの為に、1時間に1回は水風呂に入らないと危険な状態でした。
その年の、お盆を迎えた初日に、自分はいつものように水風呂に入っていました。
すると、浴室のアクリル扉の一角に、ぼんやりと人影が見えたのです。
自分は、急いで浴室の扉を開けると、5歳前後の女の子の幽霊が立っていたのです。
その子は、可愛らしい吊りスカートを履いていました。
髪型はセミロングでしたが、何故か全体的に濡れていました。
前髪は長めだったので、両目が隠れていました。
なので、お顔は鼻と口しか見えませんでした。
その女の子を見て、最初こそはギョッとしたものの、特に害はなさそうだったので、もう一度水風呂に入り直しました。
しばらくして、どうもその女の子の幽霊の事が気になったので、アクリル扉を開けると、浴室の中に入ってくるではありませんか。
ただ、浴室の入り口付近から動かなかったので、知らん振りして頭を洗っていたのですが、シャンプーを洗い流してから右側を見ると、女の子の幽霊が真横にいるではありませんか。
自分は、浴槽の真ん前迄来た女の子の幽霊を見て、ゾッとしました。
「まさか、この子が自分を引き込みに来たんじゃないだろうな…」
「でも、さっき頭を洗ったから大丈夫だろう」
そう思ったのも束の間、頭を触ってみると、シャンプーが落とし切れていない事が分かりました。
自分は、目を開いたままシャンプーを洗い流し、再び真横を見ました。
女の子の幽霊に動きはありませんでした。
「何だ、頭を洗うくらいなら大丈夫だったのか」
ただ、再び水風呂に入る事には、躊躇いを感じました。
「もし、この子が何かしてきたら…」
そう思うと、恐怖でしかありませんでした。
しかし、この浴槽には家族も入るし、このままって訳にはいかないでしょう。
そこで、自分は女の子の幽霊に話し掛けてみる事にしました。
「ねえ、君には僕の声が聞こえる?」
その子は、驚いたような顔をしましたが、すぐに真顔に戻りました。
「この家に居てもいいから、お風呂場の中には入って来ないで」
すると、その子はゆっくりと頷きました。
自分は、ドギマギしながら状況を見守りました。
すると、女の子の幽霊は、のっそりと浴室から出て行きました。
それからというもの、女の子の幽霊は浴室の前にはいるものの、浴槽の前に来る事はありませんでした。
ただ、疑り深い自分は、水風呂に入る度にアクリル扉を全開にして、女の子の幽霊が入って来ないか観察していました。
女の子の幽霊は、何かを訴えかける訳でもなく、ずっと浴室の前に佇んでいました。
お盆の最終日になると、女の子の幽霊の表情がフッと緩みました。
その直後に、女の子の幽霊は瞬く間に消え去りました。
その後は、何度お盆を迎えても、女の子の幽霊を見る事はありませんでした。
今思えば、浴槽から浴室の前を、ずっと観察していたお盆の時期が、懐かしい思い出だったりするのです。