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友忘れノ章 第三話 始まリ


どこか遠くの山奥の村に行く夢を見た。そこは誰もが幸せそうに暮らしていて……まさに桃源郷という感じだった。だけど、自分がその村に訪れて、その村に住むようになってから…村は様変わりしてしまった。誰もが疑心暗鬼になり、相手のことを信じられなくなったり…相手が自分を殺そうとしているのではないかと思ったり…そしてその相手を…殺したり…。そんな事件や事故のことを、村人たちは神の祟りだといい、村は完全に恐怖心に支配されてしまっていた。でも、それを見て、誰かが…。


今日は朝からものすごく眠たい。多分変な夢を見てあまり寝付けなかったからだろう。あくびをしたらだらしないと観往や紗倉に言われそうなので、あくびが出そうになるたびにずっと噛み殺していた。…転校してからもう一ヶ月がたった。クラス全員とはとりあえず話せるようになったし、友達と呼べるような人も何人かできた。初等部の子たちともある程度は話せるようになったんだから褒めてほしいもんだ。いつの間にか見慣れてしまった通学路を歩き、いつもの待ち合わせ場所に行く。今日は俺が一番乗りのようだ。最初のうちはよく遅刻していたのだが、みんなに注意という名のお仕置きをされていたのでほとんど遅刻をすることはなくなった。むしろ、今日みたいに一番乗りになることもしばしばだ。2分ほど待っていると、観往がやってきた。

「勇馬くんおはよ〜今日は私2番目かー!なんかくやしい」

「くやしいってなんだよ…」

観往が考えることはあまりわからない。まあ別にわかりたいわけでもないが…

そして、観往が来てから10分がたったころやっと紗倉が来た。でもいつも紗倉と一緒の宮魅がいない。

「あれ?宮魅ちゃんは?」

観往も同じことを思ったらしく、そう紗倉に聞いた。

「それが…いなかったですの」

「「いなかった?」」

観往と声が重なる。いなかったとはどういうことだろうか。体調不良で休むなら友達に休むということ伝えそうなものだが…しかも紗倉と宮魅の家はすぐとなりにあったはず。家にはいかなかったのか。

「いつもあたしは宮魅と家の近くで待ち合わせをしていますの。だけど、5分ほど待っても来なかったものですから家に訪ねたのですわ。家のインターホンを鳴らしてみたのですが、誰も出てこなくて…というか、家の中から物音さえも聞こえなかったのですのよ。家に入ろうと思いましたけどさすがに鍵がかかってたので入れもしなくて…」

「そうだったのか…」

それはものすごく心配だ。今すぐにでも行きたいが…学校があるのでさすがに行けない。

「やばい!!遅刻するよ!!」

そう突然観往が言ってきた。時間を確認すると、今は8時13分。遅刻判定になるのは8時15分なので結構やばい。走ってもここからだと3分ぐらいはかかってしまう。

「もうこれは遅刻覚悟で行くしかないな…」

俺等3人は学校に向けて全力で走ったのだった。


学校についたのはギリギリ遅刻の8時16分。全力で走ってきていたのを見られていたおかげというべきか、そこまでは怒られなかったので良かった。ただ…少し大変なことが起こった。宮魅の兄である宮人さえも学校に来ていないのだ。しかも先生に連絡がないらしく、無断欠席ということでクラス内でも話題になっていた。あの真面目なクラス長が無断欠席することあるか…。これは家に行くしかない。友達としてな。

「観往、俺放課後宮魅の家行ってくるわ」

「え、一人で大丈夫…?何かあったら…」

「大丈夫だろ。お前は紗倉を説得しといてくれ。多分行きたいって言ってくるからな。」

「…りょーかい」

少し不満そうだったが、ちゃんと了承してくれるあたりやっぱり優しいな、と思った。俺はそんな観往優しいところが大好きだ。


学校帰りの道をいつもより急いで歩いていく。ここに来てから多分初めての一人での下校。いつもは観往や宮魅、紗倉といっしょだったから、少し、新鮮だった。何分か歩いたあと、自分の家が見えてきたがそちらには向かわなかった。宮魅の家はもう少し先にあるのだ。一回4人でそれぞれの家を案内し合ったことがあったからみんなお互いの家の場所を知っている。そんなことを考えながら歩いていると、宮魅の家が現れた。軽く走ってドアまで向かう。そしてドアに手をかけた。朝、紗倉が鍵がかかっていたと言っていたことを思い出したが気にせず横にスライドした。さすがに開かないだろうと思っていたが、その予想は裏切られた。ドアはいとも簡単に開いてしまったのだ。朝は鍵かかっていたのに…考えられる可能性は一つだけ。家の中にいる人がわざわざ鍵を開けたということだ。でも理由がわからないし、家から物音一つしなかったと紗倉は言っていたはず…だけどこの家には宮魅と宮人がいるはずなのだ。俺は意を決して家に踏み込んだ。…そのとき。玄関近くの部屋の扉がバンッと音を立てて開いた。そして扉を開いた人物が玄関のほうへ向かってきた。その人物は、服が赤黒い色に染まっていて、足取りがおぼつかない様子だった。今すぐに逃げ出してしまいたい、そう思わせるほどの空気がその人物にはあった。そして、俺は決心してその人物の顔を見た。……そこには虚ろな目をした宮魅がいた。顔には赤い…血のようなものがついていた。あの服の赤黒い色は血だったのか…それは心のなかでは気づいていたことだった。

「勇馬……?どうしたんですか?」

「それは…こっちのセリフだよ!!!!宮魅こそ…どうしたんだよ!!」

「……した。」

「え…?なんて?」

「人、殺した。」

「ッ……!!!」

一番考えたくなかった可能性を宮魅が認めてしまった。

「…ふふっ、あはは、あははははっっ!!!!」

「しっかりしろ宮魅!!!一体誰を殺したって言うんだ!!!」

肩を掴んで無理矢理に目を合わせる。

「私が殺したのはー…親愛なる、兄様」

「宮人ってことか…!?」

「ええ!!私がこの手で兄様を苦しみから解放してあげたのですよ!」

「苦しみ…?宮人が苦しんでたって言うのか!?」

そんな素振りは全然見せていなかったと思う。いつも楽しそうに笑っていた。

「兄様は私のせいで苦しんでたのです…だから私が…」

「お前のせいじゃない!!!事情は知らないが、絶対にお前のせいじゃない!!!そう言い切れる!!」

「…あははっ。勇馬も兄様と同じことを言うのね」

「本当に殺したのか…?」

「まだ信じられないのですか???そーだなー…。」

「今からでも遅くない!!警察に自首しよう!!俺も一緒に行くから…!!!」

「ははははっ!!!!自首なんてするわけないでしょ〜??というか、勇馬に話しちゃったから…」

「俺を消す、と?」

「うん!!!!」

ちょっとの希望をもって言った冗談があっさり肯定されてしまった。もうこうなったらどうすることも…いや…一か八か後ろのドアから逃げるしかない!!俺は後ろを向いて一目散に逃げ出した。宮魅が何か言ったような気がしたが、多分、気のせいだろう。


いつもは通らないような道を脇目も振らず走り続けた。どんどん森の奥深くへ進んでいく。後ろからは宮魅の足音が聞こえていた。家から出たときよりもずっと、ずっと近くに来ている気がする。そして俺は、道端に落ちていた石に足を引っ掛けてしまった…思いっきり転んでしまっ

「ドンッ」

「がぁっっ!!あ…あぁぁぁ…」

何か硬い物で頭を殴られたようだ。意識が朦朧としていく…。

「あははははっはははっはっっっ!!!!」

その笑い声は、とても近くから聞こえたようにも、どこか遠い場所から聞こえたようにも感じた。

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