友忘れノ章 第二話 2日目の二人
次の日。俺は観往、宮魅、紗倉の3人と待ち合わせをしていた。一緒に学校に行くためだ。本当は宮人とも行く予定だったが、クラス長だから早くいかなきゃならないらしく、一緒には行けないと言われてしまったのだ。
「あ、やっほ〜!もう、勇馬くん来るの遅いよ!」
「ごめんごめん」
「謝り方が軽すぎですわ!!ほんとに反省してるのですか?」
毎回毎回紗倉はうるさいなぁ、と思いつつこれに反論してもめんどくさくなるだけなので無視することにした。それが一番いい。
「宮魅ちゃんおはよー」
「おはようです!!」
「あーーー!!!勇馬、あたしのこと無視しましたわね!!!ただじゃおかないんだからー!!」
「どーせ口先だけだろ」
そう返したところ、紗倉は
「あーもう頭に来ましたわ!そんな勇馬にはこうしなくちゃですわね!!」
と言いながら俺の頬をつねってきた。
「い゛っっっっっだあああああああ」
あまりにも痛すぎて大声で叫んでしまった。人生でこんなに叫んだのは初めてではないだろうか。頬をつねられるのってこんなに痛かったのか…
「さすがに紗倉ちゃんもやめてあげなよ〜勇馬くんめっちゃ痛そうにしてるし…」
「そうですよ。紗倉、やめるのです。」
「むぅ〜〜〜」
紗倉はそう言ってやっと俺の頬から手を離してくれた。あまりにも痛かったので、頬をさすると少し腫れているように思えた。なんで頬をつねられただけでこんなんになるんだよ…紗倉は力が強すぎるのではないか。あと観往も。昨日の握手のときの痛みはまだちゃんと脳内に刻み込まれている。ほんとに、ふたりとも男性顔負けの強さな気がする。少なくとも俺よりは強い。しかも紗倉に至っては小4だぞ?ガチでやばすぎだろ…。…それに比べて宮魅は大人しくてかわいいなあとか思ったりしてたら、今ここにいる人全員から嫌われそうなので思わないようにしておこう。なんか…こいつらならいとも簡単に俺の心とか読めそうだしな。
「早く学校いかなきゃ遅刻するぞ。」
「勇馬に言われなくてもわかってますわ!!というか、そもそも…」
「はいはい。もうその話はおしまいだ。」
「はぁ?ちょっと…!!」
「そうだよ〜紗倉ちゃん。もうおーわーり!」
「つきさんに言われたら聞かざるを得ないじゃないですの…」
「みんな、早く行くのです!!勇馬の言う通り、ほんとに遅刻しますよ!!」
学校についたのは遅刻ギリギリの時間だった。一応クラス長である宮人からは、「遅刻ギリギリじゃないですか…これからはちゃんと間に合うように来てくださいね。」と少し注意されてしまった。まあこれに関してはほぼほぼ紗倉が悪いと言っていいのではないか…と思ったが、あの三人の中では俺が悪いことになっているのを思い出したので口には出さなかった。これ以上めんどくさいことになっても困るからな。そんなことを考えていると、
「今日の一校時目って数学だっけ?」
と観往から聞かれた。授業のやり方もこの学校の特殊なところで、それぞれの学年に出された課題に一人ひとりで取り組む、というやり方で授業をしているのだ。もちろん生徒どうしで教えあうのはOKだし、学年をまたいで教えあったりするのもいいらしい。
「ああ。確か。」
まだあまりこの授業形態には慣れていないが、普通の学校の授業よりも気楽だからとてもありがたい。
「そっか。ありがとね。」
授業の準備を始めようとしたところ、ふとあのことを思い出した。
「あ、そうだ。お前って何年なんだ?そういえば名前教えてくれたときに言ってなかったなっておもってよ。」
「私は中学3年だよ。勇馬くんといっしょ!」
「おお、いっしょか…。」
マジか。同い年だとは…観往は結構身長が低い方なので年下かと思っていた。
「何その反応。まさか、身長低いからって年下だと思ってた〜とか言わないよね?」
「うっ…。」
「思ってたの!?!?ひっど〜い!!!私からしたら、身長低いのはコンプレックスなんだからね!だからあんまり言わないでよ!」
「いや、ほんとにごめん。…でも、観往はかわいいから身長低いほうが似合うと俺は思うけどな。」
「…っっっっっ!!!!」
「観往?」
「そ、そんなこと言わないでよ…恥ずかしいじゃん…」
「えっっっ…あ…その…」
観往が手で顔を覆って、指の隙間からこちらを見ていた。さっきの観往のセリフは…思い出したら俺まで恥ずかしくなってきた。多分今俺の顔は耳の先まで真っ赤だ。
「ごめん………」
「だ、だいじょぶだよ…!別にいやじゃないし…」
「そうか…」
「う、うん…」
少し嫌な沈黙が流れる。今が授業前のクラス全体が騒がしいときで良かった。俺等をずっと見てるような変な人がいない限り、この場面は見られていないはずだ。本当に良かった…と思ったその時。扉をバン!と勢いよく開ける音が何事かと思ってそっちを見る。クラスのほとんどが話をやめてそちらを見ていた。みんなとても驚いたのだろう。そして扉を勢いよく開けた人物、紗倉は俺を見るなり、
「勇馬はなんでそんなに顔が真っ赤ですの!!!!」
とクラス全員、いやもしかしたら隣の教室にさえ聞こえてしまうのではないかというほどの大声で叫んだ。今この場にいる人達の視線が俺と紗倉の二人だけに集まっていた。おい、紗倉は何を考えているんだ。こんな状況になってしまったからにはさすがに弁明しなければと思い、
「いっっっいや違うんだ…!!!!これは…その…」
と口走ったが、その先の言葉がいつまでたっても出てこない。
「しかもつきさんまで顔が赤いじゃないですの…!!!」
「僕は何もして」
「この変態っっっっ!!!!!!」
あ…終わった…。転校2日目にして学校生活が終わりました。いやほんと紗倉は何をしてくれてるんだ!!!絶対ゆるさねえからな!!!!全く、これからどう学校で過ごしていけばいいんだっての…とんだ大災難に巻き込まれてしまった。
「私のせいで勇馬くんの学校での立場が…ごめんね…」
「観往は気にしなくていい。まあでもあとで紗倉に話しといてくれ。あれは誤解だってな。」
「でも勇馬くんが話したほうがいいんじゃないかな?多分だけど、私が話しても勇馬くんへの誤解は解けないと思う。」
「はあ…あとで話しに行くか…」
「がんばってね!!応援してる!!」
もとはといえば俺が観往にかわいいって言ったせいだよな…いや、それは絶対に悪くない!だって観往がかわいいのは事実なんだ!かわいいって言ったあとに恥ずかしがってる観往、ガチでかわいかった…今だって、上目遣いで応援してるなんて言われたらがんばるしかなくなるじゃねえか!!
一校時目が終わり、次の教科の準備をすぐに済ませた俺は、隣の教室、初等部のクラスへ向かった。この誤解を解くことが果たしてできるのか…不安で仕方なかったが、もうここは頑張るしかないと思った。扉の前で一呼吸したあと、扉に手をかけ、横にスライドする。初めて入る初等部の教室。中・高等部とは少し違う空気が流れているように感じた。教室を見回す。紗倉はいるだろうか。
「あれ…いない?」
パッと見たところこの教室にはいなそうだ。でもこの時間に教室にいないことってあまりないのではないだろうか。俺が言えたことではないが…
「あ、勇馬!どうしたんですか?」
と急に声をかけられた。声の主は宮魅だった。紗倉の大親友である宮魅ならどこにいるか知っているだろうと思い、事情を話した。すると、
「あそこにいますよ?」
そう宮魅が言った。教室の隅のほう、俺から一番遠いところ宮魅が指を指していた。あ、ほんとだ…。あと、なぜか隅で縮こまっている。そんな俺等の会話が聞こえていたらしく、こちらを振り返ると、
「ゆっ勇馬…!!!!!」
と少し驚いたような声と顔をしてこっちを見ていた。
「さっきはごめんなさいですの…あたしが勘違いをしていましたのよ…」
「えっ」
「だから!ごめんなさいって言ってますのよ!!」
まさかあちら側から謝られるとは…まあこれで俺が頑張る必要はなくなったわけだから、良かったかもな。……あと、思ったことなのだが…紗倉も意外とかわいいところがあるのかも知れない。これがいわゆるツンデレか…




