迎え酒と、目覚める力3
クラリスは、ベッドの上でぐるぐる巻きの毛布にくるまれたまま、時折「うぅ……二日酔いよりキツい……」と涙目で呻いていた。
私はその様子を見ながら、真剣な顔で、自分の手にしたジョッキを見つめる。
「……なんか、違うんだよな」
酒を飲むと、強くなる。身体が軽くなって、気分もアガる。
でも――
「毎回、酒バフ状態になるの、正直ちょっと……めんどくさいっていうか、味わう前に気が散るっていうか……」
せっかく酔いたいのに、強制的にテンションがブチ上がる。
それは、私の“酒の楽しみ方”とはちょっとズレてる。
「それに、クラリスと同じ酒を一緒に飲めないなんて……」
酒はひとりで飲むより、誰かと一緒の方が楽しいのに。
せっかく気の合う仲間ができたのに、一緒の酒を酌み交わせないなんて、そんなのは――
「――やだな」
私は立ち上がって、腰の瓢箪を軽く叩いた。
「よし。決めた。私はこの世界で――」
胸に手を当て、静かに、でも確かに、心の奥で誓う。
「この世界で“おいしいお酒”を見つけ出してやる。誰かと一緒に笑いながら飲める、最高の一杯を!」
そう、異世界のまずい酒に絶望している場合じゃない。
この世界には、まだ見ぬ美酒がきっとある。
ドワーフの熟成ウイスキー。エルフの果実酒。黄金のリンゴ酒。幻の神秘酒。
そして――
「魔王を倒して、酒神バッカス様の“神酒”を飲むんだ」
そのためなら、冒険でも戦闘でも、なんだってやってやる。
それが私の人生。酔って、笑って、生きてやる。
だから私は、旅に出る。
この“異世界まず酒地獄”を、“飲みたい世界”に変えるために!