転移そして酒クズへ3
翌朝。
宿のベッドの上、私はうめき声とともに目を覚ました。
「う……頭痛い……世界がぐるぐる回ってる……誰だ……私をぶん殴ったのは……」
二日酔いのフルコンボで、まぶたすら重い。
それでもどうにか目を開けると、そこには――
「……誰?」
金髪の……めちゃくちゃ美人がいた。
キリッとした目元に、通った鼻筋。
でも頬はほんのり赤くて、ちょっとむくんでる。たぶん酔っぱらってる。
金髪は細かい織り込みが入っていて、動くたびに光を反射してきらめく。
鎧姿。騎士っぽい。ていうか……この美少女、胸がでか――
「……ようやく起きた?」
眉をひくつかせながら彼女が言った。
「昨日のこと、覚えてる?」
「……昨日?」
「酒場で私に絡んできて、“ねえおねーさん、あたしと一緒に魔王ぶっ倒さない?”って……それで、私が“何それ楽しそう”って答えたら、“じゃあ明日からパーティーね!”って。……そのあと寝たの、あなたよ?」
「…………」
私は深く、深く、頭を抱えた。
「やったの、また……」
「“また”ってなによ……」
彼女はやれやれと肩をすくめたあと、少し柔らかく微笑んだ。
「まあいいけどね。あなた、なかなか面白かったし」
「……あの、ごめんなさい。名前、聞いても……?」
「クラリス。クラリス=ヴァン=シュトラール。元貴族の騎士で、今は冒険者。……で、あなたは?」
「……大江山伊吹。酒飲みです」
「……その肩書、間違ってないあたりヤバいわね」
彼女――クラリスは、呆れたように笑った。