転移そして酒クズへ2
「いらっしゃい、旅のお方!一杯やっていきますかい?」
街の入り口すぐにあった酒場で、陽気なマスターが声をかけてくる。
「飲む。いますぐ。いちばんうまいの、ちょうだい」
「へい、ならばこれだ!この街名物の燃える酒、“フレイム・ウイスキー”!」
やかんか何かで煮込んだような湯気立つ琥珀色の液体が、小さな陶器のコップに注がれた。
私はすぐにそれを手に取り、一息でグイッと――
「…………」
一瞬で表情が固まる。
口の中が、苦い。酸っぱい。舌が焼けるような渋さ。
芳醇さ? コク? 香り? そんなもの、どこにもない。
これ、腐ってない?
いや、それ以前に――
「――ッッまずっっ!!!」
テーブルをバンッと叩いて叫ぶ私に、周囲の客が驚いた顔を向ける。
「な、なにを言ってるんだい! それは伝統の味だぞ!」
「いやいやいやいや!伝統以前の問題でしょ!これ、燃えるじゃん!水割りとか概念ないの!?」
「割るなんて邪道だろ!勇者様はストレートでいくもんだ!」
「私は勇者じゃなくてただの酒好きだよォ!」
私は二杯目を拒否して別の酒を頼むことにした。
次はエール。濃いめの黄金色の液体。
……色はきれい。だけど――
「――うっす……ッ!」
次はラガー。次はワイン。果実酒。蜂蜜酒。
……全滅。
気づけばテーブルには空いたグラスとため息の山。
どれもこれも「飲めなくはない」けど、うまくない。
「バッカス様ぁ……私、思ってたより遥かに地獄みたいな世界に来たかもしれません……」
酒を飲みたい。だけど飲めば飲むほど絶望が広がる。
気づけば、財布も軽くなっていた。
心は満たされない。
異世界の酒、まずすぎ問題。
私はふらつきながら宿を取って、ベッドに突っ伏した。
ああ、二日酔いと心の傷がダブルで来る……。