転移そして酒クズへ1
まばゆい光に包まれ、私は意識を手放した。
目を覚ますと、そこには青空と草原、遠くに山と小さな街並み。いかにも異世界ですという光景が広がっていた。
「……マジで転生したんだ……」
呆然としながら立ち上がり、自分の姿を確認する。
小柄で童顔。完全に子供っぽい見た目だ。
髪はショートボブで、風に揺れる内側には――赤いメッシュ。
「……チビになってない……?」
いや、違う。これが私の異世界での身体。肉体年齢十六歳に設定されてるんだった。
よかった、老化はしてない。
そして、服装。
上はえんじ色と黒のパーカー風チュニック。その下に乱れた白のタンクトップ。
動きやすい濃藍のショートパンツに、ぴったりした黒タイツ風レギンス。足元は分厚い革製のショートブーツ――これ、踵で酒瓶砕けそう。
腰には黒革ベルトに吊るした普通サイズの瓢箪。ベルトのバックルには酒神の紋章が刻まれている。
背中にはごつい金棒を斜めに背負い、ポーチの中にはコルク抜きや塩、乾き物……なにこの酔っぱらい旅グッズ?
バッカス様がくれたこの旅装――名前は「酒葬の巡礼装」。名前のくせがすごい。
――ちなみに、この瓢箪はただの飾りじゃない。
魔力を込めれば任意にサイズが変化し、巨大化して中の酒を勢いよく噴射できる。
敵に向けて撃てば、衝撃で吹き飛ばせるし、運が悪ければそのまま溺れさせられる。
まさに“飲む”も“戦う”も両立した、酒クズ用万能ツールだ。
そして金棒。こいつは見た目どおりの暴力装備だが、どうも――
テンションが上がれば上がるほど、こいつをブン回したくなるかんじだ。
酔えば酔うほど、振り抜く一撃が重くなるっていう、なんかもう完全に鬼仕様の武器である。
「瓢箪と金棒……私、完全に鬼じゃん……」
苦笑しつつ、ポーチの中の金貨を確認する。バッカス様からのスタート資金だ。
――さて、行くぞ。
「酒だ!とりあえず飲まなきゃ始まらねえ!!」
私は草原を駆け抜け、最寄りの街へと突撃した。