表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に酒税法は存在しねぇんだよぉぉぉ!!  作者: ヒオウギ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/144

泡と霧のあいだに

「推薦依頼……?」


 テーブルの上に広げられた封筒。その中には、ギルド印のある依頼書と、詳細な地図、そして警告の赤いスタンプが押された紙が同封されていた。


「“泡鳴区・東方森林帯の霧魔獣調査”……?」


 クラリスが依頼内容を読み上げると、ミスティアが小さく眉をひそめる。


「この地域……確か“腐食霧”が発生することで有名な危険地帯です。過去にも何件か、金属装備の冒険者が被害を受けたとか」


「それってつまり……装備が溶けるってこと?」


「可能性は高いですね。ですが、この依頼内容……」


 ミスティアは依頼書を指でトントンと叩きながら、落ち着いた口調で続ける。


「“湿気の多い地域での魔物調査において、特殊な水性魔法が有効であると報告あり”。……つまり、泡沫魔法のことを指しているのではないかと」


「おおお~! つまりこれは、ミスティアへの“指名依頼”ってことだよね!」


 私は勢いよく立ち上がると、両手をバッと広げる。


「これはもう、やるしかないでしょ。わが《酔いどれ旅団》、いよいよミスティアの炭酸パワー全開の時が来た!」


「炭酸パワーて……もう少しまともに言いなさいよ」


 クラリスが呆れ顔でツッコミながらも、依頼書をじっと見つめたままうなずいた。


「でも確かに、これは私たちにとって“意味のある依頼”かもしれないわね。得意分野が活かせるってことは、それだけ成功の可能性も高い」


「でも油断は禁物です。腐食霧に加え、現地には“霧魔獣”と呼ばれる未知の個体が確認されているようですから」


「よし、なら今夜は準備に充てて、明朝出発ってことで!」


 私は気合いを入れて拳を握る。――次の一歩が、今までと違うことは、三人とも感じていた。


 だってこれはただの依頼じゃない。


 “酔いどれ旅団”にとっての、**最初の“試される旅”**だから。


「じゃあ、準備リスト作戦発動だ! ミスティア、炭酸チェックよろしく!」


「了解です。泡沫魔法・零式は霧の撹拌に使用、滑層は移動補助として……」


「私は剣の手入れと、霧対策の布装備を追加しておく」


「私は……やっぱりビール多めに持ってく! あと、しょっぱい系のつまみも忘れずに!」


「……食料じゃなくて嗜好品ばっかりじゃないのよ」


 そんな調子で、準備の夜は更けていく。


 けれど――その森の霧の中で、泡と霧がぶつかりあう、奇妙な戦いの幕が上がろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ