めっちゃラノベな件
「ってこと! わかったぁ?」
説明を終えたみみぴょん――ゴスロリの少女がそう呼べと言ってきた。本名を聞くとにっこり微笑まれた。世の中には深入りしない方がいいこともある――は、そう言って俺たちを見た。
んーと、聞いた話を要約すると……。
なんでも、伝説の剣を抜けるのは、千年に一度現れる、“真の勇者”だけで。
魔王を倒せるのも、“伝説の剣”を持った“真の勇者”だけで。
ソラがその“真の勇者”らしくて。
みみぴょんは、そんな“真の勇者”を魔王討伐に導くお助けキャラ的なもので。
いわゆるRPGのように、ステータスやスキル、レベルやHPなどを管理してくれるみたいで。
これから一緒に冒険だよぉー!!! きゅるんっ!
……ってことだそうです。
そんな話をグダグダグダグダされた感想は。
……うん、ラノベだなぁ。要はラノベ設定ってことだよな、うん。
前世で結構ラノベを呼んでいた俺は、そうやってすぐに納得できたが。
ソラは首をひねっている。
「うーん。いまいちわかんないんだよなぁ。すてーたす? とか」
「まぁまぁ、要はいろいろ管理してくれるよってことだ。だよな?」
「うんっ。そーだよぉ。ユーゴ、よく知ってるね?」
「あー、うん。前世で見たから」
「そっかそっかあ。伝説の剣に灯る意思が転生者ってめっずらしいねぇ」
「そーなのか?」
「うんっ。三回くらいこの仕事やったけどぉ、少なくとも私は初めて♡」
「へぇ。ってことはみみぴょんは三千さ、ぐふぅっ!」
余計なことを言ったソラが笑顔でみぞおちを殴られてる。どんまい。
「とまぁそんな感じ! わかんないことあったらその都度きいてくーだーさいっ! これからがんばろーね!」
そう言って笑顔で手を差し出される。
うーん。でもなぁ。
「「やっぱりめんどくさい」」
俺とソラの声がハモる。
と、みみぴょんの方からピキッと音がした。
見ると、かわいらしいお顔に可愛らしくない血管が浮いていらっしゃるじゃねぇか?!
「ちょ、まて、ごめんって」
「ごめんごめん、飴ちゃんあげるから! ね?」
俺たちは必死になだめるが。
「お前らいい加減にしろぉォォ!」
「わーっ!」
「ぎゃーっ!」
みみぽんの指先から光が発せられ、意識がぐにゃりと歪む。
強制転移、という言葉が脳裏に浮かんだ。
――こうしてついに、俺とソラ、そしてみみぽんの冒険が、止む無く幕を開けてしまったのだった。