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意気投合しちゃった件

 んだよこの世界……ふざけてんのか?

 なんでこんなやつが勇者なんだよ?!

 突っ込みたいのは山々。

 だが……!

 

「めっっっっちゃわかる!!!」

「は?」


 思わず声を上げてしまう。だってしょうがねぇじゃん、俺もぐうたらなんだからっ!


「だよなっ。能力があるからって、何でもかんでも押し付けてくんじゃねーって感じだよな!」

「だ……だよねっ!?」


 ぽか~んと間抜けな顔をしていた勇者だったが、いきなり我に返ったように食いついてきた。


「なんでやりたくないこと強要されなきゃなんないのって思うよね?! 『使命』とか『正義』とか言うけどさ。別にあいつらのために努力したんじゃないもん!」

「おぉ〜、話分かってんじゃん!」

「そっちこそ!」


 なんか、勇者と意気投合しちまった。


「僕はソラ。めちゃくちゃ嫌だけど一応勇者だよ。君は?」

「俺は勇吾。なぁソラ、お前、俺が何に見える?」

「何に見えるって……伝説の剣でしょ」

「やっぱ剣だよなぁ。でも、()()の剣って、なんだ?」

「え……君が伝説の剣でしょ」

「いや……実は俺、この世界のヤツじゃねぇんだ。転生したっぽくてさ」

「は?」


 目を白黒させるソラ。ま、そりゃそうだよなぁ。


「なんか気づいたら剣になってたんだよ。んで、お前が来たってわけ。状況分かんねぇから説明してくんね?」

「僕のが状況分かんないんだけど……? 説明って、全部?」

「もち」

「……めんどくさいからヤダ」

「だよなーそうなると思った」

「ねぇ、もうどーでもいーし寝ない?」

「あー……そうすっか」

「ここ僕らの家でいーよね?」

「いいんじゃね?」

「やったね。布団と枕持って来てよかった~」

「寝る気満々じゃねぇか。てかどこから出したんだよ?!」

「僕、一日十時間は寝ないとダメなの。だからいつも収納魔道具に携帯してる」

「収納魔道具ぅ! お決まり設定再びかよ!」

「あーもう、おっきい声出さないでよ。おやすみ」


 光の速さで布団を準備したソラは、寝転がろうとする。

 あー、柔らかい布団羨ましい。入れてとは言わんが、せめてこの寝ずれぇ体制だけでも変えてもらいたい。

 この勇者一回寝たら絶対もう起き上がってこねぇやつだ。てことは今がラストチャンス! そう思った俺は、慌てて声をかける。

 

「待て待て。横にしてくれ」

「えー。めんどくさぁい」

「頼むって」

「しょーがないなぁ。よいしょ」

 

 しぶしぶ起き上がった勇者は、オレの柄を掴む。

 そして、グイっと引き抜いた。

 すると……。


「わッ?!」

「なんだなんだ?!」

 

 視界が真っ白になるほどのまばゆい光がオレから発せられる。パァァァという効果音付きだ。

 光が収まり、うっすらと目を開け――俺とソラはピキンと固まる。

 

 大きなリボンがついたフリフリなワンピース(いわゆるゴスロリという奴だろう)。

 髪はピンク色でふわふわなツインテール。

 手にはハートのついたスティックを持っており、頭の上にはウサギ耳のカチューシャ。

 そんなとてつもないファッションをした、小学生くらいの少女が突如目に入ってきたら、大体の人は俺たちのような反応をするだろう。


「てってれーんっ☆ 勇者ソラは、“伝説の剣ユーゴ”を手に入れましたぁっ!」

 

 わーい、おめでとうございまーすっ☆ パチパチ~☆

 ゴスロリうさ耳少女が、ものっすごいアニメ声でものっすごい大げさに褒めたたえる。

 ぱぁんと何かがはじける音が響いて、銀テープが辺りをひらひらと舞い、ソラの頭にはらりと乗った。


「……」

「……」


 俺とソラは無言で視線を交わす。

 俺たちは今、全く同じことを思っているのだろう。


  ――めんどくさいことに巻き込まれた気がする――。

 

 

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