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ワンコはいつも寝てばかり  作者: レゲーパンチ
8/21

7. 7~8才のはなし ②

【『ふゆ童話祭どうわまつり2024』ようつくった連載文章れんさいぶんしょうです】

【この物語ものがたりはフィクションです】

登場とうじょうする人物じんぶつ団体だんたい名称めいしょう架空かくうであり、実在じつざいのものとは関係かんけいありません】

【メスのワンコ視点してんでの物語ものがたりです】

 日本にほんのどこかの、とあるまちにて。

 これはいまから、9~10ねんほどまえはなし。そしてこれは・・・なんだ?



「これは、キャリーバッグ。このなかに、ワンコをれるの」

 ふむ、なるほど。ちなみにいておくが、このなかはいるワンコというのは、

「はい、おはいり」

 やだ。なんでわたしが、こんなへんなものにはいらないといけないのか。それに今日きょう土曜日どようびなんだから、のんびりと散歩さんぽがしたいなぁ。

「うん。だからこれをつかって、おさんぽするの。こうしないと、おまえはでんしゃにのれないから。今日きょうは、しないにいきたいから、こうするの」

 しない?ああ、市内しない中心部ちゅうしんぶか。はなしにはいたことがある。このまちとはちがって、とてもひとおおくて、いろんな建物たてものがある、って。はなしてたのはおまえだけど。

「そうそう。というワケで、いっしょにいこ?」

 まあ、いいだろう。あのおとこないうちに、さっさとかけるか。

「ん?あのおとこ、って。だれ?」

 にするな。・・・ふむ、はい心地ごこちわるくはない。というより、あしみじかわたしにはちょうどいいおおきさというか、あたたかくて寝心地ねごごちがいいというか・・・ふあぁあぁ。

「ふふっ。きにいってくれた?」

 ・・・ぐぅ。


 小学しょうがくねんおんなに、背負せおわれて。バッグとはったけど、どちらかといえばこれはランドセルやリュックみたいなものだな。電車でんしゃなかはいってからは、椅子いすすわったお子様こさまの、そのひざうえせられているけど。

 それとバッグには、わたしかおせるほどのあながあるから。こうしてかおして、そと様子ようすることができる。ほう、これが電車でんしゃというものか。はじめてったぞ。

「よしよし。いいにしててね?」

 おい、子供こどもあつかいするのはやめろ。

 ・・・だけど、うことはく。電車でんしゃというのは、おもってたよりもひとがいっぱいいるんだな。こんなところで大声おおごええたらどうなるか、ぐらいはわたしにだってかるよ。だからちいさくくくらいで・・・ん?だれだテメェら。

「ねぇねぇ、このワンちゃんを写真しゃしんってももいい?」

 なんだコイツら。わかおんなどもが、わたしをジロジロてやがる。そのっている四角しかくいものはなんだ?やめろこっちけんな、ひかりがうっとおしい。

「やめて。このが、いやがってる」

 いまわたしは、むやみにえることができない。ここはコイツにまかせ・・・。

「えー、べつにいいじゃん。可愛かわいいワンちゃんなんだから」

「やめて、ってってるでしょ?こえないの?」

 そ、そうだ。おい、やめろ。これ以上いじょうは、なにうな。

「そうだ!せっかくだから動画どうがにしない?このなら再生数さいせいすうかせげるとおもうし。ねぇ、イイでしょ?あとでお菓子かしでもってあげるからさ」

「――その、せいふく。学校がっこうのなまえは、おぼえた」

「・・・え?」

 おい、やめろアサミ!・・・って。チッ、えてしまったじゃないか。


「でんしゃのなかで、しゃしんをとるのは、マナーいはん」

 ・・・また、コイツの。アサミの、アレがてしまったか。

「ついでにうと。いぬのかいぬしが、ダメ、ってっているのに。かってにしゃしんをとろうとするのも、マナーいはん。そんなことも、らないの?」

「な、なによ。そんなに、おこることはないでしょ?」

「チクってやる。おねえさんたちのかおもおぼえた。おねえさんたちの学校がっこうに、電話でんわしてやる。いやだって、ってるのに、しゃしんをとられた、って。せっかくこのがしずかにしていたのに、おねえさんたちのせいで、ほら」

 まわりを見回みまわす。ちかくにいた人達ひとたちが、みんな私達わたしたちている。これはわたしえてしまったせいなのだろうけど・・・この人達ひとたちているのは、私達わたしたちじゃなくて、

「おねえさんたちは。このを、いじめるの?」

 視線しせんあつまっているのは。この、おねえさんたちだ。

「ち、ちがうって。ちょ、ないでくれる!?カンちがいしないでよ!?これはこのが・・・うっ、や、やめてよ、ウチらがなにをしたってうの・・・?」

 あらら。おねえさんたちいまにもきそうだ。

 だけどアサミの表情ひょうじょうは――たくもない。ていられない。

「おっと。そろそろ、えきだ。おねえさんたち、ジャマ」

 ・・・こんなじゃ、なかったんだけどなぁ。


 そこからは、バッグのなかきこもっていたから、よくからない。

 だけど、アサミはあるいてく。いったいどこになんだ?わざわざ、こんなとおくまで、電車でんしゃってまで。いったい、なにをするつもりで、

「やあ。いらっしゃい、キャリーバッグはどうだった?」

「ふふん。これ、イイね。ってくれてありがとう、おとうさん」

 ・・・おとう、さん?バッグからかおす。

「やあ。おまえも、いらっしゃい。元気げんきだったか?」

 なんだ、父親ちちおやか。ひさしぶりだな。最後さいごったのは・・・おぼえてない。それにしても、ここはどこだ?これまたはじめて場所ばしょだ。

「おとうさん。アパートぐらしは、たのしい?」

「ハハハ。たのしいかどうかとわれたら、たのしくはい、かな?ウチよりはだいぶせまいから、イサムも文句もんくってばかりなんだ」

 ・・・アパート、って。なに?

「ふぅん。だったら、ウチにかえってくれば、いいのに」

「うーん。それはむずかしいなぁ。おとうさんは、こっちのほう仕事しごとがはかどるんだよ。それよりも、アサミがここにんだらどうだい?イサムとも毎日まいにちえるぞ?」

「うーん・・・。ここって、ペットはダメなんでしょ?」

「おおう。そういう理由りゆうなら仕方しかたない、か。だけど、おかあさんがいやになったら、いつでもウチにていいからな。電車でんしゃのICカードもあげるから、な?」

 2人(ふたり)は、たのしそうにおしゃべりしている。


 人間にんげんというものは、いまだによくからない。

 どうして、家族かぞくなのに。2つにかれて、らしているのか。

 わたしいえには、母親ははおやとアサミが。そこからはなれたこのアパートには、父親ちちおやと・・・ふん、アイツなんてどうでもいい。

 だけど、あのからずっとっていないから。たまにはかおた――いやいやちがうし、あんなダメダメぬしだなんてどうでもいいって。

 ・・・近所きんじょのオバサマがうには。いま私達わたしたちは、別居べっきょ、というものらしい。去年きょねん父親ちちおや母親ははおやがケンカをして。そのケンカが、いまでもつづいている。

 そしてアサミが小学しょうがく年生ねんせいに、そのにいちゃんのイサムが中学生ちゅうがくせいになったときに。父親ちちおやとイサムはいえって、こんなところでらしている。いまよりすこまえはなしだな。母親ははおやのことがいやになった父親ちちおやくのはまだかるが、どうしてイサムまでがったのかまでは、わたしにはからない。

 ・・・だけど。どのみち、わたしにはどうでもいい。

 わたしは、アサミに世話せわをしてもらっている。アサミがいるのなら、わたしはそれでいいんだ。あそんでくれるし、おしゃべりもできるし。今日きょうもこうして、面白おもしろ散歩さんぽをすることができた。アサミとは、これからも仲良なかよくやっていけるがする。

 ・・・だけど、やっぱり。わたしぬしは、アサミではない。たとえ、あんなダメダメなぬしだったとしても。わたしの、『あるじ』は――。



「おとうさん。おにいちゃんは、どうしたの?」

今日きょう学校がっこうやすみだけど、部活ぶかつがあるから、ってさ。ここ最近さいきんはサッカーばかりやってるよ。アイツ、むかしからサッカーがきだったからなぁ」

「・・・そうなんだ。さいごに、いたかったなぁ」

「いやいや、最後さいご、って。ウチにれば、いつでもえるだろ?」

「そう、だね。・・・そろそろ、かえる」

「えっ?まだたばかりなんだから、ウチでゆっくりすれば・・・」

 アサミはなにわない。わたしはまたアサミに背負せおわれて・・・ふあぁあぁ。見知みしらぬところにたもんだから、つかれてしまったよ。キャリーバッグってイイなぁ。たままはこんでもらえるなんて、最高さいこうだよ。

 ・・・これでいいんだ、わたしは。わたしいぬなんだから、むずかしいことなんてかんがえる必要ひつようもない。こうしてのんびりと、毎日まいにちきていられるのなら――。

キャリーバッグに入ったワンコ達の写真集って売ってたりしないかな・・・?

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