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ワンコはいつも寝てばかり  作者: レゲーパンチ
4/21

3. 4~5才のはなし ①

【『ふゆ童話祭どうわまつり2024』ようつくった連載文章れんさいぶんしょうです】

【この物語ものがたりはフィクションです】

登場とうじょうする人物じんぶつ団体だんたい名称めいしょう架空かくうであり、実在じつざいのものとは関係かんけいありません】

【メスのワンコ視点してんでの物語ものがたりです】

 日本にほんのどこかの、とあるまちにて。

 これはいまから、12~13ねんほどまえはなし。そしてここは、わたしの・・・ぐぬぬ。



 くっ。なんでわたしが、こんなことを。

「よぉし、こんどは・・・まて」

 昼過ひるすぎに、コイツがかえってきてから。ずっとこのザマだ。

「うんうん。そのまま、ステイ」

 いまわたしは、前足まえあしばして、からだこして。うしあし地面じめんにつけて、かおまえけている。これはいわゆる、おすわりだとかわれているポーズだ。

「よしよし、まだまだ」

 ええぇ、まだコレつづけなきゃダメなの?

「・・・。」

 やめろ。なにわず、じーっとるのはやめろ。

「・・・よし。いいよ」

 ふう。やっとわったか。からだをブルブルさせる。

 わたしまえにいるのは、ちっちゃいおんなわたしぬしの、そのいもうと服装ふくそう幼稚園ようちえんのもの。ううぅ、なんでわたしはこんなお子様こさまなんかに、

「よしよし。いいこ、いいこ」

 やめろ、あたまをなでるな。グルルルル。

「ふふっ。おまえも、たのしい?」

 だれが、たのしいって?これはわたしにとっては、ただのヒマつぶしだ。

「えーっと・・・これで、シットと、ダウンと、ハウスと、ステイと」

 いちいち英語えいごわなくてもいい。わたし日本にほんまれのはずだぞ?ご先祖せんぞ外国がいこくまれかもしれないけど、日本語にほんごのほうがかりやすいよ。

「そう?それなら・・・、おて」

 はい。まあ、これくらいならわたしでも――。

 ハッ!?ち、ちがう、だからなんでわたしは、こんなお子様こさまうことを素直すなおいているんだ!?こんなちんちくりんのチビの命令めいれいなんてきたくも、

「ふふっ。いっしょだと、たのしいね?」

 うがあああああっ!だからちがうってってんだろうがあああっ!


「ねぇねぇ。もしかして、ねむいの?」

 う、うるさい。はなしかけるな。

 犬小屋いぬごやきこもって、からだまるめる。

 ううぅ。もうどれだけ、こんな日々(ひび)つづいているのか。コイツが幼稚園ようちえんはいってから、ずっとこのザマだよ。まるでわたしぬしであるかのように、わたし色々(いろいろ)命令めいれいしてきやがる。ふざけんな。

 ――しかし。コイツのうことには、どうもさからえない。まあ毎日まいにちのように、色々(いろいろ)とやってくれているからなぁ。ここまでされたら、さすがにみつくわけにもいかないから、すこしくらいはうことをいてやるよ。といっても、べつにコイツにしたがっているわけではない。これはただのヒマつぶしで、

「なんだ、おまえ相変あいかわらずだな」

 ・・・からだだけはこしておこう。

「あっ!おにいちゃん、おかえり!」

 ふん、さっきまではわたしにつきっきりだったくせに。そんなにいそいでおにいちゃんにちかづくことはないだろ。おまえって相変あいかわらずにいちゃんのことがきなんだな。

「ふっふっふ。アサミもなかなかやるようだが、おれくらべればまだまだだな。いいかてろよ。おい、このボールをってギャアアアア!?」

 ん?なにったか?

 たいしたことはしていない。コイツがちいさなボールをげようとしたから、げられるまえにボールをくちでキャッチしてやっただけだ。

 ――ボールをつかんでいる、コイツのゆびごと。ワンコの素早すばやさをなめんなよ?


 にいちゃんは、まれたさえていている。ざまぁみろ。

「い、いだい・・・おれなにをしたってうんだよ・・・」

 ふん。いまさらかたるまでもい。

「もう・・・そんなに、おにいちゃんが、きらい?」

 うん、大嫌だいきらい。これならまだ母親ははおやのほうがマシ。父親ちちおやは・・・きらいではないが、あまりえないのがなぁ。また散歩さんぽしてくれないかなぁ。

「あー。おとうさんは、しゅっちょうしてる」

「ん?おいアサミ・・・って。ああ、いつものアレか」

 出張しゅっちょう?またとおくにってるのか?

「うん。しゃんはい、だって」

 ほう?それは、どういうところなんだ?

「うーんと・・・ちゅうごく?」

「ハァ。またアサミはいぬとおしゃべりごっこかよ。まあ、アサミはまだ年中ねんちゅうだから仕方しかたないか。いぬなんかとしゃべれるわけないのに」

 ふん、おまえにはかるまい――って。そう、えば。

 なぁなぁ。どうしてわたし散歩さんぽさせないんだ?あれだけわたしあそんでいるけど、いつもいえ玄関げんかんあそんでいるだけだろ?

「・・・おかあさんが。おさんぽだけは、ダメ、って」

たりまえだろ。コイツの散歩さんぽ親父おやじでも大変たいへんなんだぞ?あちこちはしまわるから、いつも親父おやじがヘトヘトになっちまうし。だからアサミには10ねんはやいね」

 ――ほう?なら、ためしてみるか?


 ・・・グルルルル。

「えっ!?え、ええと、それは、ちょっと」

 どうした?そんなにおびえることはないだろ?

「おいアサミ。そんなのほうっておいて、さっさとウチにはいろうぜ」

「・・・えっ、と」

 クゥン、クゥン。

「――わかった。いうとおりに、する」

「ん?おい・・・って、ちょっとてええっ!?」

 ふん。おまえの命令めいれいにはしたがわんよ。

馬鹿ばかッ!アサミ、おまえなにをやってんだよ!」

「ええぇ・・・。だけど、このこが、こうしろって」

 うん、これでいい。

 たいしたことはしていない。お子様こさまでもできる、簡単かんたんなことだ。

 わたしいぬなので、首輪くびわけられている。そして首輪くびわにはくさりいている。いぬそとったり、さないようにするために。

 そのくさりを、はずしてもらった。ただ、それだけのことだ。

「うわわわ、やややややヤバいよこれ、おれはどうすれば・・・」

 じつえば。くさりって、こんないえからきたいと。何度なんども、そうおもっていた。くさりだかられなかったけれど、げられるものならげていた。こんないえなんて、どうでもいい、と。ずっとおもっていた。


「あ、あのなアサミ、そんなことしたら、コイツがげ・・・えっ?」

 だけど。わたしは、げない。

「どうしたの?そんなにおびえることは、ないでしょ?」

 このお子様こさまのすぐそばに、おすわりする。

「お、おびえ、って。おまえ意味いみかってんのか?」

「うーん・・・じつをいえば。このこの、まねをしただけ」

 わたしなにわない。しっぽをフリフリさせるだけ。

「う、うぐっ。コイツのこんな様子ようすはじめてたぞ・・・」

 ふふん。これはおまえでもっているか。

 ・・・すこしだけ、こえそう。必要ひつようなものはそこの物置ものおきはいっている。

「うん、わかった。ええと、あれと、これと――」

 たいして時間じかんもかからずに、わたし首輪くびわべつのものがけられる。これは散歩用さんぽようのヒモ。またのをリード。これがないと散歩さんぽはじまらないからな。準備じゅんびができるまでは、わたし大人おとなしくっている。

「な、なんでだよ。なんで、アサミなんかに」

 アサミなんか、とは失礼しつれいな。わたしは、ちゃんと世話せわをしてくれるものについてくだけだ。べ、べつにコイツにしたがっているわけでもないけど。

「ねぇねぇ。おにいちゃんも、いっしょに」

「うるせー!もういいっ!そいつはおまえにくれてやるからきにしやがれ!クソッ、なんでだよ、なんでアサミなんかに・・・」

 ふふん、コイツもまだまだお子様こさまだな。げるようにいえはいっていったよ。



 さて。それでは散歩さんぽに・・・って。

「――おにい、ちゃん」

 どうした?そんなかおして。これが、やりたかったんだろ?

「うん。だけど・・・きゃっ!?」

 おっと、はしるのはやめておくか。かりにもわたしは、コイツのうことをいている身分みぶんだ。コイツをってはいけない。ちょいとゆっくりめにあるいてやろう。

 時間じかんは――夕方ゆうがたまでは、まだあるか。まずは手始てはじめに、ウチのまわりを散歩さんぽしようか。あまりとおくにったら、にいちゃんやおかあさんが心配しんぱいするだろ?

「・・・うん。そう、だね。じゃあ、おさんぽしよ?」

 おう。・・・ふっふっふ、うまくいった。あぁあ、こんなお子様こさましたがうフリをするのはいやだけど。こうやって散歩さんぽができるうちは、コイツのうことを――。

幼稚園・保育園の年齢の時に、1人で勝手に犬を散歩させようとして、犬が大脱走した経験がある同志っていらっしゃる・・・?(なお数時間後に家には戻ってきました

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