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ワンコはいつも寝てばかり  作者: レゲーパンチ
21/21

【おわり】 20. 今(いま) ②

【『ふゆ童話祭どうわまつり2024』ようつくった連載文章れんさいぶんしょうです】

【この物語ものがたりはフィクションです】

登場とうじょうする人物じんぶつ団体だんたい名称めいしょう架空かくうであり、実在じつざいのものとは関係かんけいありません】

【メスのワンコ視点してんでの物語ものがたりです】

 日本にほんのどこかの、とあるまちにて。

 ここは、わたしいえ。そしていまは――。



 いえとはったが、わたしいぬなので。

 人間達にんげんたちらすいえの、そのそとに。わたしいえはある。またの犬小屋いぬごや

 いまは、あき。そして今日きょう土曜日どようび。もう昼過ひるすぎか。ふあぁあぁ、今日きょうもよくねむれるなぁ。へんなのが玄関げんかんをウロついているけれど、にもしないよ。

「・・・やっぱり、僕達ぼくたちも。ったほうがよかったかな?」

 わかおとこが、母親ははおやりそっている。夫婦ふうふだからこれぐらいは普通ふつうか。

無理むり、よ。もうわたしには、あのからない。あんなことを、自分じぶんから提案ていあんする、だなんて。あんなにいてかなしむのなら、やらなきゃいいのに。なんで、あんなに可愛かわいがってたのに、あんなことを、自分じぶんから、するなんて」

 おい母親ははおや?どうした?なんでそんなにおびえてやがるんだ?

からない。どうすればいいのか、どうしてあげればいいのか、なにをすればいいのか、なにからない。ごめんなさい、おかあさんをゆるして、ごめんなさい、あんなにおもめさせてしまって、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」

 ううむ。最近さいきん母親ははおやは、どうもあやまってばかりだ。そんなにあやまりたいのなら、本人ほんにん直接ちょくせつえばいいのに。だけど本人ほんにんにはなにわない。なにおうとしない。わたしにも、母親ははおやなにをしたいのかがよくからないよ。

 ――あっ。『あるじ』がかえってきた・・・けど、へんだな。今日きょう土曜日どようびなのに高校こうこう制服せいふくている。かみめたままだけど、化粧けしょうもピアスもしていない。そしてなによりも、元気げんきがない。『あるじ』、どうしたんだ?

「ただいま・・・ああ、そうだった。さっきおわかれしたばかりだった」

 おい『あるじ』。いくらなんでも、無視むしするのはヒドいぞ。


 ・・・あれ?なんでだろ?

 わたしはそこまでがよくないはずなのに。今日きょうは、ちがってえる。

 かる。よくえる。まわりの景色けしきが、よくかる。

「・・・ああ。おかえり、アサミ」

 母親ははおやこえける。だけど『あるじ』は無視むしをしている。

「ちょっとアサミちゃん。今日きょうくらいは、はなしを――やめてよ」

 再婚さいこん相手あいて父親ちちおやたいしては、もっとあつかいがひどい。おそろろしいかおにらんでいる。だけど『あるじ』のこのは・・・ぎて、れているのか?

 おい『あるじ』、どうしたんだ?いったいなにがあったんだ?

「・・・わたしは2かいがるから、勝手かってがってくんなよクソおやどもが。ばんはんはおなかいたときに勝手かってつくってべるから、なにもしなくていいよ?いまさらご機嫌きげんりをしようとしても無駄むだだからね?」

 おやなにえずに棒立ぼうだちしたまま、『あるじ』はいえはいってった。

 ・・・ううむ。今日きょうの『あるじ』は、そういう気分きぶんか。

 それなら、そっとしておこう。『あるじ』の気分きぶんちつくまではのんびりしてるよ。エサの時間じかんまでにはもともどっているといいなぁ。


「う、うーん・・・どうしよう。あっ、そうだ!あたらしいワンちゃんをってあげるのはどうかな?アサミちゃんなら可愛かわいいチワワが似合にあがするけど」

 ほう、2ひきか。わるくはいとおもうぞ?だけど残念ざんねんだったな、『あるじ』はつよくてイカついいぬのほうがこのみだ。一番いちばんのおりは、伝説でんせつ日本犬にほんけんだとかいわれる猟犬りょうけん。とっくのむかし絶滅ぜつめつしているようだけど。

「やめなさいよ。それだけは、冗談じょうだんでもってはいけない。アサミにとっては、あのだけが特別とくべつなのよ。アサミはいぬはなすことができる、って近所きんじょでもよくわれているけど。アサミとおしゃべりができるワンコは、あのだけなのよ」

 母親ははおやわったなぁ。むかしはちっともしんじてなかったくせに。

「せめて。べてくれるかどうか、からないけど。アサミのきなものでも、つくってみるわ。ええと・・・ねぇあなた、アサミのきなものって、わかる?」

「えっ・・・え、ええと、お寿司すし、じゃないの?」

 ちがうな。『あるじ』はどちらかといえば野菜やさいきなんだよ。それとホットケーキと、チーズりの卵焼たまごやきと、あとはイサムの料理りょうりならなんでも、が正解せいかいだ。

 ――ハァ、ダメだこいつら。子供こども好物こうぶつすらもらないのかよ。

 やはり『あるじ』には、かれしかいないな。だけど最近さいきんは・・・ん?足音あしおとこえる。はしってきているおとだ。しかもこの、におい、は――。

「あっ・・・ひさしぶりね。どうしたの?」

「ぜー・・・はー・・・ふ、ふう、つかれた。おばさん、アサミはますか?」

 おう、ボーイ。どうした?そんなにあせだくで。しかもこのジャージ、あちこちがよごれている。まるでついさっきまで、サッカーでもやっていたかのようだ。


「アサミちゃんなら、いる、けど・・・その」

ってます。あのおねえさん・・・病院びょういん研修医けんしゅういさんからきました。アサミと一緒いっしょに、くなるまでって。一緒いっしょに、おはかほねめてきた、って」

 おねえさん・・・?えっ、あのひとここにてるの?マジかよひさしぶりだなぁ、元気げんきかなぁ。だけど、おはかほね、って・・・なにがあったんだろ?

ってるなら、はなしはやいわ。いまアサミにうのは」

「どいてください。・・・おれがアサミを、どうにかします」

 かれは、とても真剣しんけんだ。大丈夫だいじょうぶか?またげられたり、は――。

尊厳死そんげんしについては、おれはどうこううつもりはありません。きっとアサミのことだから、アイツとはなって、なやいて、めたことだとおもうから。アイツらの判断はんだんに、文句もんくうつもりはありません」

 ・・・なんだ?この、ボーイの、面構つらがまえは。

「だけど、アイツがんだいま。アサミのそばにれるのは、おれしかいない。だからおれがやります。おれまかせてください。アサミを、たすけたいんです」

 ――いつまでも、ボーイだと、おもっていたのに。

 おまえも、立派りっぱおとこになってたんだな。とてもカッコいいよ。

「おばさん。そして、おじさん。おれを、いえれてください」

 おい母親ははおや。どうして、そんなにいているんだ?そんなかおして、かれにぎって、またあやまっているよ。何度なんど何度なんども、かれあたまげている。

 ・・・そして3にんは、いえなかはいってった。



 ――だれかが、わたしんでいる。

 これで、満足まんぞくしたか、と。

 これで、心残こころのこりはいか、と。

 ・・・あるに、まっている。

 後悔こうかいい。満足まんぞくもしている。

 だけど、いやだ。きたくない。

 まったく、ふざけやがって。やっとくっつきやがったか。いや、だけどうまくいったかどうかまでは・・・ええい、つづきをせろ、どうなったかおしえてくれ、ちゃんとうまくいったんだろうな?なぁ、どうなんだよ!?

 たのむよ。もうすこしだけ、時間じかんをくれ。

 わたし一番いちばん心残こころのこりが、まだのこっているんだ。それがわらないかぎりは、そっちにくつもりはい。ずっとここにいる。きたくなんかない。

 『あるじ』はとても、むしなんだ。『あるじ』をほうってなんかいられない。病院びょういんでも、ずっと、わたしいきるまで、ずっといていて。火葬かそう納骨のうこつのあいだも、ずっといて、だけどわたしをじっとてくれていたんだ。

 とてもつらかっただろう。そむけたかっただろう。だけど『あるじ』は、最期さいごまで見届みとどけてくれた。だからわたし見届みとどけたいんだ。『あるじ』を、これからも、ずっと。どんな人生じんせいおくるのか、どんな未来みらいっているのか。

 それを、るまで、は。わたしは、くわけ、には・・・。



「ごめんね、最期さいごまで心配しんぱいかけちゃって」

 ――『あるじ』、いたのか。

 こえのしたほうをる。『あるじ』は、とても可愛かわいらしいふくて、犬小屋いぬごやをじっとている。犬小屋いぬごやにはもう、だれもいない。わたしはもう、そこにはいない。

「だけど、わたしはもう大丈夫だいじょうぶだから。ゆっくりやすんでね?」

 『あるじ』は、わらって・・・いる、のか?

 こんなかおひさしぶりにた。こころそこから、『あるじ』はわらっている。

 これだ。これを、もう一度いちどたかったんだ。

 わたしは、それだけが。なによりも、心残こころのこりで。



「それじゃあ、ってくるね」

 ・・・どこに、と。野暮やぼなことをくのはやめよう。

 ん?いつものキャリーバッグだ。いつもわたしはこんでくれる、それを。

「・・・いままで、ありがとう」

 キレイに、りたたんで。犬小屋いぬごやなかに、れた。

 ・・・うん、そうだよなぁ。やっぱりこれが、一番いちばん寝心地ねごこちがいいんだ。

 ――たせたな。いま、そっちにくよ。もうわたしには、なにうことはい。これで心置こころおきなく、いつまでもていられるよ。

 そしてねむれば、いつでもそこに。わたしと、『あるじ』がいる。

 ええと、これは幼稚園ようちえんときで、これは小学生しょうがくせいときで、これは中学ちゅうがく、そして高校こうこうと。いろんなおおきさの『あるじ』がいる。

 だけどわたしは、だいたいおなおおきさだな。ちいさいままだよ。

 ・・・これでいい。これが、いい。このゆめをずっと、わたし見続みつづける。

 ずっと、一緒いっしょだから。安心あんしんして、ていられるよ。



 おやすみなさい。が、『あるじ』。

 そして、いつまでもしあわせに。わらって、きてくれ。



 ―おわり―

テーマの趣旨をガン無視している気がするけれど。

たまには、こういうのを書きたかった。最後まで読んでくださった方には感謝しかないです。



なお、普段の私はノクターンで18禁文章を書いている者なので

18歳未満の方は作者ページを訪れないように、ご注意ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 離婚がなければまた違った家族の形になっていたんだろうなぁって思いました。 わんこもアサミもボーイもお兄さんもお姉さんも、皆いろいろあって難しい! グッとくる作品でした。
2024/01/18 18:45 退会済み
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