表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンコはいつも寝てばかり  作者: レゲーパンチ
19/21

18. 16才のはなし ①

【『ふゆ童話祭どうわまつり2024』ようつくった連載文章れんさいぶんしょうです】

【この物語ものがたりはフィクションです】

登場とうじょうする人物じんぶつ団体だんたい名称めいしょう架空かくうであり、実在じつざいのものとは関係かんけいありません】

【メスのワンコ視点してんでの物語ものがたりです】

 日本にほんのどこかの、とあるまちにて。

 これはいまから、1ねんほどまえはなし。そしてここは、いえ玄関げんかん



 平日へいじつ。もうすぐれる。そして、犬小屋いぬごやわたしと、

「・・・やあ」

 ・・・。

「どうすれば、いいんだろうか?」

 ・・・。

ぼくは、アサミちゃんに。なにが、できるかな?」

 ・・・。

「たとえつながってなくても。父親ちちおやとして、なにができるのかな?」

 ・・・。

ぼくからしたら。たまたま出会であった女性じょせいと、仲良なかよくなった。そしてそのひとは、旦那だんなさんとはいずれわかれる予定よていだ、子供こども上手うまかせるから、とっていたから。その言葉ことばしんじて、このいえ家族かぞくになったんだ」

 ・・・。

いまさらになって、こんなことをうのもどうかしているけど。ぼくに、アサミちゃんの父親ちちおやになる資格しかくは、あるかな?家族かぞくになる資格しかくは・・・って」

 ――グル、ルル、ル。

「そう、か。そうだよね、いまさら、そんな資格しかくいよね」

 ・・・。

「だけど、いずれは。はなせば、かって」

「クソ親父おやじが。わたしのワンコを、いじめる?」

 おう、おかえり。犬小屋いぬごやからる。


「あ、アサミちゃん。おか、えり」

「どうしたのクソ親父おやじ。こんな高校生こうこうせいのガキにビビってんの?」

 『あるじ』よ。そんなおそろしいかおをしたら、だれもがおびえてしまうぞ?

「ふん。勝手かってにビビってるやつわるいのよ」

 ハァ・・・あれっきりかれとは一切いっさいわなくなったし、ご近所きんじょからもおそれられて、そしていえではこの有様ありさま、と。むかし可愛かわいいおじょうちゃんだったのになぁ。

「うるせぇ。そういうおまえは、何様なにさまなのよ。ぬしたいして文句もんくってばかりで。ここ最近さいきんはますます年寄としよくさくなってんじゃないの?」

 そりゃあわたしはババアですもの。あぁあ、最近さいきんこしがって、

がってねぇよ。ちゃんと毎日まいにちマッサージしてあげてるでしょ?」

 えっ、あれってマッサージだったの?てっきり、『あるじ』のあたらしいあそびだとばかり・・・だけど納得なっとくはした。どうりでいまだに、普通ふつうあるけるわけだ。

 ・・・だったら。あぁあ、最近さいきん食欲しょくよくちて、

ちてねぇよ。ちゃんとべやすく、こまかくしてるでしょ?」

 うん。まったくもって、『あるじ』は立派りっぱぬしだよなぁ。

「は、はは、アサミちゃんは、やっぱりすごいねぇ・・・だけどやっぱり、ぼくにはしんじられない、かな?いぬはなせる、だなんて。しかもそのいてないのに」

 そりゃあわたしはババアですもの。あぁあ、最近さいきんこえづらくて不便ふべんしているよ。だけど『あるじ』とは、こうやってはなせるので・・・。

「ほお。クソ親父おやじったら、父親ちちおやとして、なにができるのか、だなんてってたんだね。このってることがからないくせに、なにえらそうなことを」

「――え?なんで、そのこと、を?」

 なにいまさら。これくらいのことなら、ずっとむかしからできるぞ?


「・・・だったら。すこしは、おとうさんらしく、してもらおう、かな?」

「えっ!?う、うん、そうだよ。すこしはぼくだって」

「おとうさん。おこづかい、しいなぁ」

 ・・・『あるじ』。このまえもらったばかりだろ?

「だって、アクセサリーってたかいんだよ?髪型かみがたととのえるのにもおかねかるし、それに高級こうきゅうドックフードもいたいからね。アレ、美味おいしいでしょ?」

 う、うん。それは、まあ、みとめる、けど。

「アサミちゃん。いくらなんでも、それは」

「そう。おとうさんは、わたし父親ちちおやになりたくないんだね」

 いつのまにか『あるじ』は、キャリーバッグを用意よういしていた。

「だったらいいよ。本当ほんとうのおとうさんにおねがいする。あっちはいくらでもおかねをくれるから、チョロ・・・じゃなかった。いいおとうさんなんだよねー」

「わ、わかった!おこづかい、あげるから・・・ね?」

「ふん。かねすのがおそいんだよ、クソ親父おやじが。まあいい、今日きょうはウチで寝泊ねとまりしてやるよ。・・・じゃあね、またあとでごはんを用意よういするね」

 ・・・いちおう親子おやこは、いえなかはいってった。

 まったく、あのヘタレが。これで断固だんことして拒否きょひして、ちゃんと『あるじ』をおこってくれたら、いまさらながら家族かぞくとしてみとめてやってもよかったんだが。やっぱり、あのおとこではダメだな。やはり『あるじ』には、かれしか――。


「よう。元気げんきか?」

 ・・・いたのか、ボーイ。

相変あいかわらずアサミったら、れてるなぁ。おまえも大変たいへんだろ?」

 フッ。わたし気持きもちをかってくれるのはボーイだけだよ。

おれはアサミとちがって、おまえのっていることなんてかりはしないけど。なんとなくは、気持きもちがかるんだ。・・・おっと、アサミがそろそろそうだから、おれかえるぞ。また今度こんど、ゆっくりはなそうぜ?」

 おう。わたしっていることはつたわらないけれど、かれはなしくのはとてもたのしいんだ。高校こうこうでサッカーを頑張がんばっているとか、近々(ちかぢか)試合しあいるとか。

 ・・・これで、『あるじ』とってくれたら、なにうことはいのだが。かれは、『あるじ』のことをかっているからこそ、おうとはしない。

「おまたせ。はい、ごはん。・・・どうしたの?ご機嫌きげんだね」

 そりゃあ、エサの時間じかんなんだから。気分きぶんくなるよ。

 ・・・ところで『あるじ』。高校こうこうは、たのしいか?

「んー。ボチボチ、かな?」

 そう、か。・・・そろそろいえなかもどったほうがいい。だけどケンカはするなよ?『あるじ』が大声おおごえさわぐから、うるさくてねむれないんだ。

「・・・チッ。これだから、年寄としよりは。かったよ、今日きょうくらいは平和へいわごしてやるから。おふくろとも、ちゃんとはなしをする。それでいいでしょ?」

 うん。かってくれたのなら、それでいいんだ。


 っている。かっている。

 『あるじ』のことは、なんでもかるのだから。

 『あるじ』はうそをついている。高校こうこうたのしくないんだろ?

 幼稚園ようちえんときも、小学校しょうがっこうときも、中学ちゅうがくとき・・・は、ちゅう2のなかばまでか。それまでは、自分じぶんからベラベラと。いてもいないことを、はなしてきてたのに。

 高校生こうこうせいになってからは。ほとんど、学校がっこうのことをはなさない。

 そもそも、さっきも私服姿しふくすがただったからな。平日へいじつなのに。

 ・・・中学ちゅうがく最後さいごあたりから、『あるじ』は学校がっこうをサボりがちになって。そしていまでは、それがたりまえになりつつある。『あるじ』は、そういう高校こうこうだから退学たいがくにされることはい、とはっていたが。わたし心配しんぱいでしかないよ。

 ・・・そしてこれが、かれが『あるじ』にちかづこうとしない理由りゆうでもある。

 かれはとても頑張がんばって、いま高校こうこうはいった。あたまはそこまでくはいらしいが、サッカーがとても上手うまいからという理由りゆうで、いま高校こうこうはいれたのだとか。

 そしてかれが、どうしてサッカーが上手うまくなったかとうと。あの2人(ふたり)の――イサムと、そのもとカノさんのおかげだ。いつもフラフラになるまで、年上としうえ2人(ふたり)相手あいて練習れんしゅうして・・・フラフラになったかずだけ、かれ上手うまくなったんだ。

 だからかれは、『あるじ』とはおうとしない。かれは、『あるじ』にいものをっているから。それで『あるじ』がうらやましがって、みじめになって、きずついてしまうから。かれは『あるじ』をきずつけたくないから、こうして――。



 ダメだ。

 やっぱり、かれしかいない。『あるじ』には、かれしかいない。

 どうにか、この2人(ふたり)をくっつけたい。くっつけないと、いけない。

 ・・・かるんだ。わたしも、そろそろ。としぎたから。

 『あるじ』のおかげで、このとしになるまで元気げんきでいられたけれど。わたしはいつ体調たいちょうくずしても、おかしくはい。ご近所きんじょのワンコたちも、いまはもうみんな病気びょうき老衰ろうすいで・・・というはなしはやめておくか。

 とにかく。これがわたしの、最後さいごつとめだ。

 これが最後さいごたたかいになるだろう。うまくできるかどうかは、からない。

 ・・・それでも、これが。ちいさいころから長年ながねんわたって、わたし世話せわをしてくれた『あるじ』への、おんかえすことなる、と。そうしんじて、わたしは――。

今日から仕事始めだけど、コレ期限までに終わるかな・・・?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ