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ワンコはいつも寝てばかり  作者: レゲーパンチ
17/21

16. 15才のはなし ①

【『ふゆ童話祭どうわまつり2024』ようつくった連載文章れんさいぶんしょうです】

【この物語ものがたりはフィクションです】

登場とうじょうする人物じんぶつ団体だんたい名称めいしょう架空かくうであり、実在じつざいのものとは関係かんけいありません】

【メスのワンコ視点してんでの物語ものがたりです】

 日本にほんのどこかの、とあるまちにて。

 これはいまから、2ねんほどまえはなし。そしてここは、父親ちちおやのアパート。



 父親ちちおやといっても、わたしではなくて。わたしの『あるじ』のじつのおとうさんが、んでいるところ。キャリーバッグにれられて、電車でんしゃって・・・ここにるのも何度目なんどめかなぁ。ちなみにいま休日きゅうじつ午前ごぜんだ。ごろごろごろ。

「よしよし。そこで大人おとなしくしててね?」

 うん。それはいいんだ。

 リビングとばれる部屋へやなかの、そのすみっこに。新聞紙しんぶんしかさねて、ひろげた場所ばしょ。ここがわたし居場所いばしょ。『あるじ』がうには、わたしのようにいえそとわれているワンコを室内しつないに入れるときは、こうするのがマナーなのだとか。

 ついでにうと、あまりウロウロしてはいけない。部屋へやなかよごれたり、わたしゆかちてしまうから。これについては理解りかいはできるので、わたし大人おとなしくしている・・・けど。ええと、その、なんうべきか。

「どうしたの?トイレは、そこのシートでやってね?」

 うん。それもいいんだ。

 わたしっころがっている新聞紙しんぶんしのすぐそばには、またべつのものがひろげられている。それと散歩用さんぽようの、はこびができるみずもある。『あるじ』はこういうところがしっかりしているから信頼しんらいできる・・・けど、その、

「・・・ハァ」

 ・・・まあ、なにわないよ。

 『あるじ』はテレビをつけて、ボンヤリしているだけ。

 服装ふくそうは、『あるじ』のあにていたふくだ。このアパートにのこっていたものをているようだが・・・イサムが高校生こうこうせいときてたふくなので、ちゅう3の『あるじ』には若干じゃっかんサイズがおおきい。だぶだぶだ。


 ――ふあぁあぁ。

「はい、ごはん」

 ん?・・・ああ、もうこんな時間じかんか。いただきます。

 『あるじ』も、ちゃぶだい自分じぶんたべもの用意よういしている。これも何度なんどているからかる。あれはコンビニ弁当べんとう、ってやつだ。以前いぜんイサムがいたときには、イサムがいろんな料理りょうりつくってくれていたが・・・もう、何年なんねんまえはなしか。

 食事しょくじわれば、『あるじ』が片付かたづけをして・・・ハイハイ、お風呂ふろだろ?『あるじ』にかつがれて、風呂場ふろばはいって、一緒いっしょからだをキレイにして・・・ふう。ここで寝泊ねとまりをするときには、いつもこうしているんだ。

 本当ほんとうだったらこのアパートは、ペットは禁止きんしなのだが。わたしはここではしずかにしているためか、一度いちどおこられたことはい。くわしくはからないが、『あるじ』もゴミやにおい、アレルギー対策たいさくなどはバッチリしているとはっていた。

 そしてまた『あるじ』にかつがれて・・・このアパートにはリビングとはべつに、2つの部屋へやがある。あっちは父親ちちおや部屋へやで、こっちはイサムの部屋へや

 私達わたしたちはいったのは、イサムの部屋へや。キレイに片付かたづけられている。なかにはベッドもあるが、これもイサムが使つかっていたもの。わたしゆかかれた新聞紙しんぶんしかされて、『あるじ』はベッドのうえっころがる。

「・・・おやすみ」

 そして部屋へやかりがえる。・・・いつもの、休日きゅうじつだ。

 ここにはもう、イサムはかえってこない。イサムの彼女かのじょ・・・いや、もとカノさんとうべきか。あのひとのにおいも、いまとなってはなにのこっていない。

 それでも『あるじ』は、時々(ときどき)ここに寝泊ねとまりする。そういう気分きぶんなんだ。


 あさ。『あるじ』は布団ふとんして、洗濯機せんたくきうごかして、部屋へや掃除そうじして・・・これくらいはできるんだよ。小学生しょうがくせいときから、ずっと。

 そしてリビングであさはんを・・・なぁ『あるじ』、また菓子かしパンなのかよ。

「いいじゃん、やすいんだから」

 ・・・そう、か。

 ここで寝泊ねとまりするときは、『あるじ』はいつもこうだ。ちかくのコンビニでってきたものをべる。ただ、それだけ。だけどわたしにはちゃんとしたごはんを・・・わたしがいまだに元気げんきなのは、わたしのエサがちゃんとしているからだとおもう。

 あれはまだ、イサムと父親ちちおやいえに・・・家族かぞくにん一緒いっしょだったころだったな。まだ幼稚園児ようちえんじだった『あるじ』が、いぬのごはんはこうするべきだ、ああするべきだ、とさわいでさわいで。それで仕方しかたがないから、おやがいろんなエサをってきて。

 ・・・いぬのエサって、あんなに種類しゅるいがあったんだな。くらべをするのはたのしかったよ。そして『あるじ』はいぬのエサの成分表せいぶんひょう・・・エサのなかにどういう栄養えいようがあるのかをむために、ちいさいころから勉強べんきょう頑張がんばっていた。

 『あるじ』のあたまがいいのは、そういう理由りゆうもあるんだ。ときには犬好いぬずきをこじらせて、よそのワンコをジロジロとたり、とく大型おおがたのワンコに出会であおうものなら興奮こうふんしまくって・・・なぁ『あるじ』、最近さいきんのおりはなんだ?

「うーん・・・やっぱり重視じゅうしするべきは戦闘力せんとうりょく両立りょうりつだから、シベリアンハスキーとダルメシアンとビーグルとあとえっと」

 かったもういい。・・・『あるじ』のはなしについてけるのは、イサムのもとカノさんぐらいだよ。あのひとくちひらけばいぬ話題わだいしかかったなぁ。


「――アサ、ミ?」

 ・・・おう、ひさしぶりだな。

「おはよう、おとうさん。おジャマしてるね」

 スーツ姿すがた男性だんせいはいってきた。いや、かえってきた、とうべきか。

「――おまえ、どうして。ウチに、いるんだ?」

「ええぇ。離婚りこんしたといっても、おとうさんはおとうさんでしょ?」

 父親ちちおやは、ったまま。『あるじ』は父親ちちおやかおわせようともしない。

「それに、おかあさんがいやになったらいつでもていい、ってってたじゃん。べつにおかあさんがいやになったワケじゃないけど、そういう気分きぶんなの」

「あ、ああ、それはいいんだ。アサミがそうしたいのなら、きなだけウチにいればいい。それはいいんだ、けど・・・おまえ、学校がっこうは、どうしたんだ?」

 ・・・もう一度いちどうが。『あるじ』が休日きゅうじつに、ここに寝泊ねとまりをするのはよくあること。そして昨日きのう日曜日にちようびだったから、昨日きのうまでは休日きゅうじつ間違まちがいはいな。

今日きょうは、月曜げつようだろ?学校がっこうは・・・まさか、おまえ」

「おとうさんこそ。昨日きのう日曜日にちようびだったのに、どうしてそんな恰好かっこうをしてるの?しかもこれ、おんなひと香水こうすいのにおいだね。さっきまで、一緒いっしょだったの?・・・まあ、それはいいか。おとうさんもいまは、だれとデートしようが自由じゆうだもんね」

「そ、それはいま関係かんけいないだろ。それより、学校がっこうに」

関係かんけいあるよ。おや子供こどもほうったらかしにしているから、子供こども不登校ふとうこうになる。よくあるはなしだね。しかもウチは、おとうさんもおかあさんも、再婚さいこん相手あいてもみんなダメダメ。おにいちゃんはよくガマンできたなぁ、わたしには無理むりだよ。だからわたしは」

「やめろ。やめなさい。・・・おかあさんに、電話でんわしても、いいか?」

 ほう。まさか自分じぶんから、あのおんな連絡れんらくるとはな。



 むかし勉強べんきょうもスポーツも、得意とくいだったのに。

 いまの『あるじ』は、ずっとこういう生活せいかつおくっている。

 もう、なにもかもをあきらめているのだから。たたかいがわってから。

 ・・・いまのあるじには、だれいてけんよ。

「アサミ、くるまりなさい。とうさんがウチまで」

「いらない。電車でんしゃかえる。じゃあね、おとうさん。ついてないで」

 イサムのふくから、学校がっこう制服せいふく着替きがえて、私達わたしたちはここをる。ええと、ここには金曜きんよう夕方ゆうがたからいたから・・・三泊さんぱく四日よっか、ってやつだな。

 ・・・『あるじ』自身じしんも。どうすればいいのか、なにをすればいいのかが、からないんだ。だから、その気分きぶんによって、今日きょうわたし一緒いっしょに――。

最後に犬を飼っていたのはもう何年も前になるのに、いまだにドッグフード売り場をウロウロする趣味があるのは変かな・・・?

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